前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

文字の大きさ
59 / 170
<アルダ王国>として

<フラウス王国>第一王子・・(3)

しおりを挟む
 私は改めて話をすることにした。

「国王様、少し話がそれてしまいますが<アルダ王国>からの留学生である<猫獣人>のグリフをご存じでしょうか?」

「もちろん知っておるぞ。他国の留学生は万が一のために情報を全て把握しておかねばならんのでな。貴公とも仲が良いと聞いている。この3日は学園には来ておらず、一時休学しているそうだな。話によると母国<アルダ王国>の為に帰還したのだろう」

 流石は王だ。ここまでくればスムーズに話が進むか?

「では国王様、グリフのLvをご存じでしょうか?」

「ああ、スキルLvの詳細はよく覚えていないが、<身体強化>を得意としていたな。そしてLv自体は<C:中級>だったはずだ」
 
 よし、これならば大丈夫だ。きっとうまく行く。

「では話を戻させて頂きます。<アルダ王国>の戦力につきましては、実際に近衛騎士一名と幻獣一名、グリフの迎えに来た者をこの目で見ております。この2名は少なくとも<SS:聖級>はあります。そし「まて・・」」

「少し待て、今貴公は幻獣そして<SS:聖級>と言ったように聞こえたが間違いないか?」

「その通りでございます」
 
 よし、食いついてきた。順調だ。しかしここからが重要だ。焦らず・・緊張のあまり汗が目に入ってくる。親友の為、ここが踏ん張りどころだ。

 国王が私の話をさえぎってまで確認するほど幻獣・・そして<SS:聖級>はインパクトが凄まじいのだ。

 現在確認できている最高峰が<S:帝級>であり、<S:帝級>が束になったもかなわないのが<SS:聖級>なのだから驚くのもしょうがない。

 そして幻獣は基本的には隔絶した力を持っているといわれている。
 「言われている」となるのは、ほぼ目にすることができないからだ。

 私の推測では、おそらくこの<ゴルデア王国>では最高戦力が<A:上級>のはずだ。

 実は各国の王族が集まる会議が一年に一回あるのだが、当然王族が来るので人数指定はある物の、護衛は会議室に入室することができる。そういえばその会議も間もなくだった気がするが・・

 そこには自らの身の安全のため、そして他国へのけん制も含めて最高戦力を連れてくるのが一般的であるが、<シータ王国>以外は全て<A:上級>だったのだ。

 これは我が<フラウス王国>の魔道具による計測結果なので間違いない。
 そのため、<ゴルデア王国>国王は<シータ王国>と事を構えたくないのだろうと判断した。
 
 よし、落ち着いてきた。話を進めよう。

「実は幻獣曰く、<アルダ王国>には6名の幻獣がおり、Lvアップも容易であるようなことを言っていました。とすれば、<シータ王国>の<S:帝級>にも対応できると思慮します」

「・・・なるほどな。戦力については事実を確認したいところだ。特にLvアップも容易であるならば、仮に我が国に矛先が向かっても対応できるはずだ。まあ、<アルダ王国>を良く知る必要はあるがな」

「承知しました。Lvアップについては、どの様な事をするのかまでは幻獣は教えてくれませんでしたが、結果は知ることができます。我が親友グリフのLvは国王様ご指摘の通り<C:中級>でした。彼は<アルダ王国>でこの三日間幻獣が言っていたLvアップを行ったそうです。彼の現在のLvを確認するというのはいかがでしょうか?」

「それは良いが、彼がこの学園を出立したのが三日前だ。なぜこの短い期間に<アルダ王国>にたどり着いてLvアップができるのだ?<ゴルデア王国>付近で実施したのか?そもそもLvはこのような短い期間に上げることは、たとえ低Lvの者でも不可能であるはずだが・・」

「いいえ、そうではありません。彼等は<転移>スキルを持っており、一瞬で<アルダ王国>に帰還しています故。そして既にグリフはこの王宮の外に来ております」

「にわかに信じられんが、ではグリフをここへ連れてくるがいい」

「では少々お待ちください」

 私は王宮の外にいるグリフを迎えに行った。

 私は祖国の父にこの作戦を伝えて、Lvアップ後のグリフをここに連れて来てもらえるように<アルダ王国>に伝えて貰ったのだ。

 たった3日だったが、明らかに強さが違っているのがわかる。どんな方法を使ったのか気になる所だが、今はその時ではない。

 同行してくれている幻獣のセリアさんと近衛騎士であるミーナさんも共に謁見してもらう。

 再度謁見の間に到着し、4人で入室した。

 この時間で、国王はLv測定魔道具・・そう、私が腕につけている物と同等品を準備していた。これは<フラウス王国>が<ゴルデア王国>に譲渡した物なので、性能は折り紙付きだ。

 そして、私、グリフ、セリアさん、ミーナさんが入室すると、魔道具を凝視していた国王、そしていつも間にか増えていた<ゴルデア王国>国王側近が目を見開いた。

 私・・のLvは恥ずかしいのでここでは秘密としておこう。魔道具が壊れていない事を証明できる役割だ。こういった役割も・・・そう、必要なのだ。決して涙など流していないぞ。

 続いて入室したグリフに全員目を見開いた。

 たったの三日で<A:上級>になっていたからだ。溢れ出る力からも明らかに強者であることがわかる。親友として誇らしくも羨ましい。

 そして、セリアさん・・
 彼女のLvはあの魔道具では知ることができない。つまり<SS:聖級>以上が確定するのだ。残念なことに私とグリフのLvがしっかりと表示されているので、魔道具の故障でないことは彼等も理解しているだろう。

 最後に、ミーナさん・・
 セリアさんと同様、魔道具で計測できない状況に国王とその側近はただひたすら魔道具を凝視していた。

 かなり長い時間彼らは魔道具を凝視し続けていたが、最初に我に返ったのはやはり国王だった。

「ハル王子、貴公の言う<アルダ王国>の戦力については、いやという程、理解した、いや、させられた。これであれば<シータ王国>が攻めてきても対処できるだろう・・。まあ、<シータ王国>は今きな臭い動きをしているようだが・・・。しかし、<アルダ王国>を国として認めるには国自体を知る必要がある。そこは分かってもらいたい」

「ありがとうございます。国を知らずに承認などできるはずもありませんので、おっしゃる通りでございます。ただ、今後の動きもありますのであまり時間はかけたくありません。そこで、<転移>を使える方々が来ていますので、一度<アルダ王国>にどなたかが同行されてはいかがでしょうか?」

「ハル王子よ、やけに手際が良いな。よほど<アルダ王国>に肩入れしているか、<シータ王国>が嫌いか・・。我らも<シータ王国>は好きではないが・・まあ良いか。せっかくだからその手際の良さに乗らせてもらうか・・。おい宰相、<ゴルデア王国>の代表として<アルダ王国>を良く見てくれ。肩入れするのではなく、公平に見てくるのだぞ」

 よし、今私のできる事はここまでだ。

 もしこのままうまく事が進んで<アルダ王国>を承認してもらえたら、父上は私の事を少しでも認めてくれるだろうか?

 そう思っていると、国王が、

「そこの帯剣している者は<猫獣人>に見えるので、もう一方が幻獣で間違いないか?」

 やはり幻獣についてかなり気になるようだ。
 幻獣であるセリアさんが、

「はい、私は幻獣のセリアと申します。<アルダ王国>第二王子であるジン・アルダ様の僕です」

 この流れはまずい。幻獣が誰かの僕などあっさり言ってしまうなど・・私もそうだが、容易には受け入れられないだろう。

「そ、そうか。そこのハル王子から貴国には幻獣が6名いると聞いておるが、事実であろうか?」

「はい、私を含めて6名おり全てジン様の僕でございます」

 おい!!余計な一言付け加えないでくれ・・6名いる・・で終わりで良いじゃないか・・

 ・・しまった。少々動揺してしまった。

 しかし、流石は国王様だ。動揺はしているが何とか会話を続けることができていた。
 他の側近は石造のように固まったままだが・・

「なるほど、貴国の状態は少し理解することができた。して少々不遜な質問になってしまうが、<猫獣人>の者よ、貴公のLvは<SS:聖級>以上であると認識しているが、どうだろうか?いや、これはあまり軽々しく言えるものではないだろうから返答しなくても良いのだが・・」

「問題ないですにゃ。確かに我ら近衛騎士のLvは全員<SS:聖級>にゃよ」

 うぉ~い、ミーナさんあなたもですか??? 
 今聞かれたのはあなた!! そう!!あ・な・た・のLvです。近衛騎士全員なんて聞かれてません!!

 残念ながら、私の心の叫びなど聞こえるまでもなく、宰相が<アルダ王国>に視察に行ける状態になるまでかなりの時間を要してしまった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...