前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる

焼納豆

文字の大きさ
164 / 170
異大陸

鍛錬の視察

しおりを挟む
 既に夕食会で報告されてはいるが、コビアさんの力を奪っていた魔獣の持っている記憶は一点を除いて大した情報は無かった。
 
 大した事がない情報とは、魔神は二コラ隊長の推測通り戦闘狂であること、依り代になっている鬼族も戦闘が好きであったため、力を馴染ませやすい状態となり、おそらく既に完全に力を取り戻していること、神から奪った力を<SS:聖級>の魔獣に譲渡しているが、魔獣が消滅すると神に力が自動的に戻ってしまう事などだ。
 
 そして重要な情報は、やはり各大陸から行方不明になっていた人々は術開発の生贄になっており、既にこの世にはいない事、そしてその術とは今まで封印するしか方法がなかった神を滅することができる術である事だ。
 ここまで危険な術であれば、生贄の数も相当になったのだろう。更には術の発動に対する条件すらありそうだが、その辺りは情報を持っていなかった。

 こうなると、マーニカ隊長も今のままでやつらと戦闘を行うわけにはいかない。
 もうあんな思いをするのは嫌なんだ。
 特に、この報告を聞いた際にレイラ隊長も俺と同じことを強く思ったらしい。以前彼女は幻獣の中で一人だけ生き残ったので、あの悲しい状態を思い出してしまったのだろうか。

 当然俺だけではなく、幹部全員の危機意識が上昇したのは言うまでもない。
 少々浮かれていた【近衛部隊】も意識を完全に切り替えたようだ。

 そしてガジム隊長がこう提案してきた。
 
「短い期間と言えど、敵の情報を得た以上は対応すべく鍛錬を実施するべきだ。それも今まで通りの鍛練ではなく、より厳しい鍛錬を提案したい」
「承知した。いつも通り夜中に<神狼>の町の鍛錬場に集合でよろしいか?」

 二コラ隊長が、自らの任務を考えた発言をしてきた。

「二コラ隊長、今回の戦いはこの大陸のみならず全ての大陸の命運がかかっています。なので、この短い期間の内更に時間まで制約をかけるわけにはいきませんな。護衛は【遊撃部隊】と【防衛部隊】から選出させて頂きたいと思いますが、如何でしょうかダン王?」
「全く問題ない。むしろ前にも言ったが、王都にいる限り過剰すぎる護衛だと思っているのだが・・・」

 俺も父さんと同じ事を常に思っていた。しかし、俺達王族以外はそう思っていないようで、ガジム隊長は反論してきた。

「いえ、万が一を考えると過剰でも問題ありません。ですが、ご英断ありがとうございます」

 【近衛部隊】の面々も、右手を左胸に置き深く礼をしている。

 彼らもガジム隊長の大陸の命運がかかっているという発言から、護衛中のように真剣な表情が戻った。

「では、早速まいりましょうか。既に防壁の強化、そして仮想敵となる疑似的なスキルの模倣による自動反撃の魔道具の設置などは終わっています。この状態で模擬戦を実施していただきますが、当然互いのスキルは魔道具に記録され、任意に魔道具より攻撃されます。魔道具は隠蔽済みで、自動で<転移>するのでより練度の高い鍛錬が実施できますぞ」

 なんともとんでもない環境を既に【技術開発部隊】は作り終わっているようだ。
 自分の攻撃や相手の攻撃が、任意の位置から任意のタイミングでこちらに向かってくる。当然相手の攻撃も来るので、相当な集中力が必要になるだろう。
 ガジム隊長の意気込みが感じられる・・・いや、いつも通りか?

「神獣の皆様、申し訳ありませんが今回の鍛練には是非ともご参加頂きたい」

 相手の力がかなり上であるので、ガジム隊長はモモを始めとした神獣達の参加を要求してきた。
 同じ<SSS:神級>でも、その中で強さが分かれているので、当然の判断と言えるだろう。

 神獣達は俺の方を見てきた。
 判断をしろという事だろう。

「皆、頼むよ」

 そういうと、代表してモモがガジム隊長に了解の意を伝えた。

「承知しました。より良い鍛錬となるように微力ながら我ら神獣一同協力させて頂きます」

 こうして、俺は以前から決めていた彼らの異常な強さの上昇を確認するための鍛練の視察を行うことになった。

 食事会が終了した後、【近衛部隊】、【幻獣部隊】、神獣達、俺、【技術開発部隊】の面々が、<神狼>の町にある鍛錬場に<転移>した。

 鍛錬場は拡張されており、それぞれに強固な結界が張られている。
 ガジム隊長は、鍛錬に参加する面々にネックレスのような者を渡している。

「この魔道具を首につけると自動で大きさは調整されます。戦闘時に邪魔にはなりませんのでご安心を。当然この結界内であればいかなる攻撃を受けても破壊される事も有りません。この魔道具をつけていれば、結界内で万が一命が無くなっても、この魔道具を結界の外に持っていけば完全に復活することができます」

 とんでもない物作ってました!!
 一応俺が知っていた情報では、結界の外に出れば怪我については完全復活だったはずだ。なので、万が一とんでもない攻撃を受けてしまって即死の場合は助からなかったような・・・
 だから、北野の周りにはLvの高い者達が、鍛錬している者達の攻撃をある意味選別していたはずなのだが・・・

 でもガジム隊長率いる【技術開発部隊】だからな。これくらいはやってのけるだろう。
 
「ジン様、ゆくゆくは王都をこの結界で囲って、王族の皆様にはこの魔道具を使っていただこうと思っております。しかし、今の我らの技術ではこの範囲が精一杯なので、もう少々お待ちください。ただ残念ながら今結界を戦場に設置するのには時間が無さ過ぎてできません」

 どうやらこの結界は、王都に使用している結界とは種類が違うようだ。
 今まで同じだと思っていたのだが、この鍛錬場の範囲で改良を加えていたのだろう。

「ありがとう。無理しないようにね」

 なんだか驚きすぎて普通の返事をしてしまった。

「では早速鍛錬を開始しましょうか。近衛の方々とマーニカ隊長はそれぞれの結界内に入ってください。どこも同じ状態なのでどこでも問題ありません。対戦相手は、神獣の皆様と、幻獣部隊の持ち回りでお願いします」

 全員が結界内に入って行った。
 最初の対戦相手はマーニカ以外は幻獣となり、マーニカにはモモが対戦することになった。

 と、あまりこの対戦について感想を述べてもしょうがないかもしれないが、これなら<SS:聖級>と言う枠にいながらも<SSS:神級>と平気で対戦できるわけだ・・・という内容だった。
 
 そう、はっきり言って命を捨てて技術を磨いている状態なのだ。
 そして【近衛部隊】の武具第三解放もこの目で見たが、はっきり言って異常だ。
 実は俺も神の力が馴染みつつあり、鍛錬をしていなくても日々強くなっている実感がある。
 そんな俺も、今の彼らと戦ったら本気で戦ってようやく勝てるか?と言う強さだと感じた。

 そして、マーニカを含め対戦相手として鍛錬をした幻獣部隊もこの鍛錬で大幅に強化された。
 モモ達神獣達についても、少々だが強くなったようだ。
 ただ、残念ながら彼女達は強すぎて、今回の鍛練での強化は微々たる物だったのだが・・・それでも有益な鍛錬が実施できたのではないだろうか。

 いつの間にかガジム隊長も鍛錬していたのには驚いたが、いつもの事らしい。それでガジム隊長も相当な強さになったのだろう。

 そんな鍛練を続けて、<アルダ王国>の面々は監視部隊が常駐してい<リハク大陸>に<転移>した。
 
 戦闘対象者のほかに、俺、神獣達全員がこの大陸にやってきた。

 他の隊長達や隊員は、万が一に備えて<アルダ王国>を含めた他の大陸に配置している。いよいよだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...