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妹との食事
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以前から両親は何やら泊まりでどこかに出かけているようで、昼の食事も妹が簡単に作ってくれたらしいと判断した幸次。
当然夜も二人での食事になるので、自分が調理するべきかと思い悩んでいる。
一応の知識は備えているつもりではあるが、召喚直後のトイレの件と言い、その後のラーメンの事と言い、知識と現実は乖離がある事を嫌でも理解しており、この知識のまま調理して良いものか悩んでいた。
「お兄ちゃん!今日の夕飯は一緒に外で食べよう。お父さんとお母さんにはその分のお金を渡されているから」
台所で少し悩んでいた幸次の背後から妹の声がするのだが、何故兄である自分にお金が渡されていないのか不思議に思う所はあったのだが、この家庭ではそう言う物なのだろうと割り切る。
幸次としては、それよりも聞き及んでいる外食とやらを召喚初日に経験できる事に意識が向いていた。
実際両親は、敢えて幸次にお金を渡していなかったのだが……その理由は少ししてから理解できることになる幸次だ。
「わかった。確か、色々な種類があるのだな。余は寿司にチャレンジしたいぞ」
「……お兄ちゃん、どうしちゃったの?その話し方もそうだけど……」
妹の指摘にドキリとする幸次。
本人としては今迄通りに話しているだけなのだが、本物の幸次はもっと優しく下から話すような男だったことを思い出すも時すでに遅く、今後本物の幸次のように話し続ける事は不可能だと思ったので、言い訳をしておく。
どの道本物の幸次に聞いていた状況を改善するには、明らかに豹変したと思われる程の姿勢で臨まなくてはならないのだから……
「う、生まれ変わろうと思ってな」
「そう?あまり無理しないでね。私は、私達は絶対にお兄ちゃんの味方だからね?」
どうやら話しぶりから、幸次の置かれている状況を家族は把握していると確信した幸次。
向こうの世界でも本物の幸次は恐らく家族に気が付かれている可能性が高いとは言っていたが、流石は元王族であり普通の日本人が経験できないような過酷な状況にいた幸次であれば、その程度は疑いようもなく判断できる。
「わかった。では、今日は寿司で良いか?」
「フフ、良いよ、お兄ちゃん。でも、あまり高い所には行けないよ?」
二人は家を出て徒歩で近くの寿司屋に向かうのだが、そこは最近の感染症の影響か利便性を追求したのか、注文を都度タッチパネルで行うシステムになっていた。
……ポチッ……
「むぉ!な、なんと恐ろしい魔道……道具だ。この中身はどうなっておるのだ?」
思わず魔道具と口走りそうになったのを強引に訂正したが、やはり中身について非常に気になってしまう幸次。
「それは……私も良くわからないけど、色々な部品が組み合わさって電波で通信しているみたいだよ」
「電波……とはなんだ?」
知識欲が旺盛な幸次なので、少々突っ込んだ質問になってしまうのだが……恐らく以前の幸次はここまで積極的ではなかった事から、良い変化が起きたと喜んでいる妹は何とかわかる範囲で説明しようと試みる。
「えっと、この見えない空間を伝わる波?電気によって波が作られて、その波の事を電波と言うんだと思うよ。それで電波が磁力になって、磁力が電波になってとかもあるみたいだけど、ちょっとそこまではわからないんだ。ごめんね」
幸次も電気については雷魔法を行使できた経験からその特性は凡そ掴む事が出来ているが、必死で説明している妹もこれ以上は知らないのだろうと思い更なる追及はしない。
「そうか、わかった。助かったぞ、朱莉」
「上手く説明できなくてごめんね、お兄ちゃん。で、何を頼む?」
「いやいや、分かり易かった。そうだな……是非ともクラーケ、ゴホン!い、イカとやらを食べてみたいぞ!」
ここでも異世界の魔物であるクラーケンと言う名前が出てきてしまいそうになったのだが、寿司について幸次から説明を受けていた時に是非とも食べてみたいと思っていたイカ……異世界においてはイカの魔物であるクラーケンはそうそうお目にかかる事が出来ずに、討伐する事も非常に危険だと言われているので、それに似た食材があると言われれば是非とも口にしてみたいと思うのも仕方がない。
妹である朱莉が端末をよどみなく操作すると、少しして二人の席の前に食材が乗ったおもちゃの電車のようなものが停止する。
「こ、これが……余は最早驚きを超えて感動の域に達しておるぞ!」
幸次の感動をよそに、さっさとイカの握りを二皿取る朱莉。
「さっ、お兄ちゃん。食べよう?」
「むっ、そうだな。いや、しかし今日は驚きっぱなしの一日だ。だが、念願のクラ……イカ。どのような味なのか、楽しみではないか」
「「頂きます!!」」
一応不手際が無いように妹の食べ方を見てイカの握りを口にする幸次なのだが、イカは思った以上にワサビの影響を大きく受けるために事前にその知識が無く覚悟もしていなかった幸次は、ハナの奥の痛みと、止められない涙に慌てる。
当然夜も二人での食事になるので、自分が調理するべきかと思い悩んでいる。
一応の知識は備えているつもりではあるが、召喚直後のトイレの件と言い、その後のラーメンの事と言い、知識と現実は乖離がある事を嫌でも理解しており、この知識のまま調理して良いものか悩んでいた。
「お兄ちゃん!今日の夕飯は一緒に外で食べよう。お父さんとお母さんにはその分のお金を渡されているから」
台所で少し悩んでいた幸次の背後から妹の声がするのだが、何故兄である自分にお金が渡されていないのか不思議に思う所はあったのだが、この家庭ではそう言う物なのだろうと割り切る。
幸次としては、それよりも聞き及んでいる外食とやらを召喚初日に経験できる事に意識が向いていた。
実際両親は、敢えて幸次にお金を渡していなかったのだが……その理由は少ししてから理解できることになる幸次だ。
「わかった。確か、色々な種類があるのだな。余は寿司にチャレンジしたいぞ」
「……お兄ちゃん、どうしちゃったの?その話し方もそうだけど……」
妹の指摘にドキリとする幸次。
本人としては今迄通りに話しているだけなのだが、本物の幸次はもっと優しく下から話すような男だったことを思い出すも時すでに遅く、今後本物の幸次のように話し続ける事は不可能だと思ったので、言い訳をしておく。
どの道本物の幸次に聞いていた状況を改善するには、明らかに豹変したと思われる程の姿勢で臨まなくてはならないのだから……
「う、生まれ変わろうと思ってな」
「そう?あまり無理しないでね。私は、私達は絶対にお兄ちゃんの味方だからね?」
どうやら話しぶりから、幸次の置かれている状況を家族は把握していると確信した幸次。
向こうの世界でも本物の幸次は恐らく家族に気が付かれている可能性が高いとは言っていたが、流石は元王族であり普通の日本人が経験できないような過酷な状況にいた幸次であれば、その程度は疑いようもなく判断できる。
「わかった。では、今日は寿司で良いか?」
「フフ、良いよ、お兄ちゃん。でも、あまり高い所には行けないよ?」
二人は家を出て徒歩で近くの寿司屋に向かうのだが、そこは最近の感染症の影響か利便性を追求したのか、注文を都度タッチパネルで行うシステムになっていた。
……ポチッ……
「むぉ!な、なんと恐ろしい魔道……道具だ。この中身はどうなっておるのだ?」
思わず魔道具と口走りそうになったのを強引に訂正したが、やはり中身について非常に気になってしまう幸次。
「それは……私も良くわからないけど、色々な部品が組み合わさって電波で通信しているみたいだよ」
「電波……とはなんだ?」
知識欲が旺盛な幸次なので、少々突っ込んだ質問になってしまうのだが……恐らく以前の幸次はここまで積極的ではなかった事から、良い変化が起きたと喜んでいる妹は何とかわかる範囲で説明しようと試みる。
「えっと、この見えない空間を伝わる波?電気によって波が作られて、その波の事を電波と言うんだと思うよ。それで電波が磁力になって、磁力が電波になってとかもあるみたいだけど、ちょっとそこまではわからないんだ。ごめんね」
幸次も電気については雷魔法を行使できた経験からその特性は凡そ掴む事が出来ているが、必死で説明している妹もこれ以上は知らないのだろうと思い更なる追及はしない。
「そうか、わかった。助かったぞ、朱莉」
「上手く説明できなくてごめんね、お兄ちゃん。で、何を頼む?」
「いやいや、分かり易かった。そうだな……是非ともクラーケ、ゴホン!い、イカとやらを食べてみたいぞ!」
ここでも異世界の魔物であるクラーケンと言う名前が出てきてしまいそうになったのだが、寿司について幸次から説明を受けていた時に是非とも食べてみたいと思っていたイカ……異世界においてはイカの魔物であるクラーケンはそうそうお目にかかる事が出来ずに、討伐する事も非常に危険だと言われているので、それに似た食材があると言われれば是非とも口にしてみたいと思うのも仕方がない。
妹である朱莉が端末をよどみなく操作すると、少しして二人の席の前に食材が乗ったおもちゃの電車のようなものが停止する。
「こ、これが……余は最早驚きを超えて感動の域に達しておるぞ!」
幸次の感動をよそに、さっさとイカの握りを二皿取る朱莉。
「さっ、お兄ちゃん。食べよう?」
「むっ、そうだな。いや、しかし今日は驚きっぱなしの一日だ。だが、念願のクラ……イカ。どのような味なのか、楽しみではないか」
「「頂きます!!」」
一応不手際が無いように妹の食べ方を見てイカの握りを口にする幸次なのだが、イカは思った以上にワサビの影響を大きく受けるために事前にその知識が無く覚悟もしていなかった幸次は、ハナの奥の痛みと、止められない涙に慌てる。
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