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感謝状を贈られても良い程の行動をしていた人物が、まさか自分が通う高校の道のりがわからないと平然と言っているので少し困惑する女性だが、きっと転校生か何かだろうと思い気を持ち直す。
「わかりました。少々お待ちくださいね」
犯人から取り戻したバックを幸次から受け取ると、その中にある手帳に簡単に地図を書き込んで一枚切り取り幸次に渡す。
「おぉ、分かり易いぞ!これが……この部分か。となると、あっちに向かえば良いのだな?」
「そうですね。ですが、恐らく少し事情聴取があるでしょうから今日は遅刻になってしまいます。申し訳ありません」
「ん?謝罪される謂れはないぞ。謝罪すべきはこのゴミだ!」
未だ片手で首根っこを掴んだままの犯人をズイッと女性の前に押し出す幸次。
通常の大人、相当鍛えている人物でも片手で成人男性を掴み持ち上げる事などできはしないのだが、異世界で有り得ない魔獣との戦闘や王族ならではの暗殺に備えるべく訓練し、身体強化まで使える幸次であれば造作もない。
「そ、そうです……ね」
突然目の前に苦痛で顔をゆがめている犯人を差し出されたので少々引き気味の女性を気にする事なく、再び地図に目を落として道のりを確認している幸次……犯人を片手で摘まみ上げたまま……
やがてサイレンの音が聞こえると、誰かが通報したのだろうか警官が到着した。
警官についても知識がある幸次は、自分が特段悪さをしていれば問題ないと知っているので冷静に対応するのだが、頑なに名前を名乗る事だけはしなかった。
「あの、恩人の方もこう仰っていますし、問題になる様な行動はなかったと多数の目撃者もいるのですから」
女性が名乗りたがらない幸次を庇うのだが、警官としてはやはり何かあった時の為に名前を知りたがるのは業務に忠実である以上仕方がない。
「しかしですね……」
「わかりました。では、私から身分を明かしますね」
女性が何やら身分証を警官だけに見えるように提示すると、警官は目を大きく見開いて女性を見ると敬礼する。
「わかりました。事情は全て把握しましたので、善良な市民の方は学校に向かってください。ご協力、ありがとうございました!」
突然の豹変に少しだけ眉を顰めた幸次だが、解放されるのであれば否やはなく再び止まっている自転車に慎重にまたがると、身体強化を解除した上で本当に軽く自転車をこいでこの場を去って行った。
「しかしあの女性、何やら身分証のような物を見せていたが、余の世界で言う所の指輪のようなものなのだろうか?警察と言う者達が一瞬で豹変するとなると……相当力が有る人物なのだろうが……もう二度と会う事もないだろうから余計な詮索だな」
徐々に足に力を入れてスピードを上げつつ、この短時間で地図の中身を完璧に頭に入れているので迷う事無く学園に到着するが……当然既に授業は始まっている時間になっている。
「余にとってみれば、これも良い事だな。自分のクラスを探す様子を余計な人物達に見られなくて済むからな。フハハハハ、余の豪運が恐ろしくなる!」
学園を自転車で一周して、自転車置き場を確認して校舎に入って行く幸次。
「フム、ここで靴を履き替える……?なんだこれは?余のファンからか?」
下駄箱を探し当てて中を見ると、手紙が一通入れてあるので無造作に掴んで中身を読む幸次。
「なるほど。余程義理堅いのだな」
幸次の虐めが始まってしまった発端はクラスメイトの吉田 麗奈と呼ばれる女性が、野田 由香里と言う一見して不良とわかる金髪のクラスメイトにぶつかってしまい、そこから由香里の恋人である石崎 雄二が共に厳しく攻め立てていた所を仲裁に入った事だ。
今回の手紙はその吉田 麗奈からであり、未だに虐められて時折学校を休んでいる幸次に対する謝罪が綴られていた。
手紙を無造作にカバンに押し込み、自分のクラスを探し始める幸次。
漸く廊下から見えるクラスの表示、1-1と言う表示を見つけて扉から軽く中を覗き、教壇側ではない後方から入る事にしたのだが、その時点で金髪二名……野田 由香里と石崎 雄二の位置だけは確認しておいた。
二人は何か強制的な力を働かせたのか最後方に並んで座っており、空いている椅子は最前列中央の一つだけだったので、そこが間違いなく自分の席だと安堵した幸次は普通に扉を開けて入って行く。
突然の音に教師すら言葉を止めて後方の扉を見るので、幸次は爽やかにこう告げた。
「少し遅れてしまい申し訳ないな。ちょっとした事情があったのでな。さっ、余の事は気にせずに遠慮なく続けてくれ」
あまりの変貌ぶりにポカンとする全員だが、教師がいち早く我に返って授業を続けているなかで悠々と前方に歩いて行き、席に座る幸次。
「フム、この世界の知識を得る機会……中々に興味深いではないか」
教師が教えているのは科学の授業であり、異世界の王族であった幸次にしてみれば聞いた事もない様な単語ばかりなのだが、逆に再び知識欲に火がついて身体強化を頭脳に回して全てを理解せんと目をランランと輝かせて授業を聞いていた。
後方にいる金髪の二人を始めとしたクラスメイトの一部は正直その優等生ぶった態度も癪に触っていたのだが、最前列にいて授業に集中している幸次は気が付かない。
「わかりました。少々お待ちくださいね」
犯人から取り戻したバックを幸次から受け取ると、その中にある手帳に簡単に地図を書き込んで一枚切り取り幸次に渡す。
「おぉ、分かり易いぞ!これが……この部分か。となると、あっちに向かえば良いのだな?」
「そうですね。ですが、恐らく少し事情聴取があるでしょうから今日は遅刻になってしまいます。申し訳ありません」
「ん?謝罪される謂れはないぞ。謝罪すべきはこのゴミだ!」
未だ片手で首根っこを掴んだままの犯人をズイッと女性の前に押し出す幸次。
通常の大人、相当鍛えている人物でも片手で成人男性を掴み持ち上げる事などできはしないのだが、異世界で有り得ない魔獣との戦闘や王族ならではの暗殺に備えるべく訓練し、身体強化まで使える幸次であれば造作もない。
「そ、そうです……ね」
突然目の前に苦痛で顔をゆがめている犯人を差し出されたので少々引き気味の女性を気にする事なく、再び地図に目を落として道のりを確認している幸次……犯人を片手で摘まみ上げたまま……
やがてサイレンの音が聞こえると、誰かが通報したのだろうか警官が到着した。
警官についても知識がある幸次は、自分が特段悪さをしていれば問題ないと知っているので冷静に対応するのだが、頑なに名前を名乗る事だけはしなかった。
「あの、恩人の方もこう仰っていますし、問題になる様な行動はなかったと多数の目撃者もいるのですから」
女性が名乗りたがらない幸次を庇うのだが、警官としてはやはり何かあった時の為に名前を知りたがるのは業務に忠実である以上仕方がない。
「しかしですね……」
「わかりました。では、私から身分を明かしますね」
女性が何やら身分証を警官だけに見えるように提示すると、警官は目を大きく見開いて女性を見ると敬礼する。
「わかりました。事情は全て把握しましたので、善良な市民の方は学校に向かってください。ご協力、ありがとうございました!」
突然の豹変に少しだけ眉を顰めた幸次だが、解放されるのであれば否やはなく再び止まっている自転車に慎重にまたがると、身体強化を解除した上で本当に軽く自転車をこいでこの場を去って行った。
「しかしあの女性、何やら身分証のような物を見せていたが、余の世界で言う所の指輪のようなものなのだろうか?警察と言う者達が一瞬で豹変するとなると……相当力が有る人物なのだろうが……もう二度と会う事もないだろうから余計な詮索だな」
徐々に足に力を入れてスピードを上げつつ、この短時間で地図の中身を完璧に頭に入れているので迷う事無く学園に到着するが……当然既に授業は始まっている時間になっている。
「余にとってみれば、これも良い事だな。自分のクラスを探す様子を余計な人物達に見られなくて済むからな。フハハハハ、余の豪運が恐ろしくなる!」
学園を自転車で一周して、自転車置き場を確認して校舎に入って行く幸次。
「フム、ここで靴を履き替える……?なんだこれは?余のファンからか?」
下駄箱を探し当てて中を見ると、手紙が一通入れてあるので無造作に掴んで中身を読む幸次。
「なるほど。余程義理堅いのだな」
幸次の虐めが始まってしまった発端はクラスメイトの吉田 麗奈と呼ばれる女性が、野田 由香里と言う一見して不良とわかる金髪のクラスメイトにぶつかってしまい、そこから由香里の恋人である石崎 雄二が共に厳しく攻め立てていた所を仲裁に入った事だ。
今回の手紙はその吉田 麗奈からであり、未だに虐められて時折学校を休んでいる幸次に対する謝罪が綴られていた。
手紙を無造作にカバンに押し込み、自分のクラスを探し始める幸次。
漸く廊下から見えるクラスの表示、1-1と言う表示を見つけて扉から軽く中を覗き、教壇側ではない後方から入る事にしたのだが、その時点で金髪二名……野田 由香里と石崎 雄二の位置だけは確認しておいた。
二人は何か強制的な力を働かせたのか最後方に並んで座っており、空いている椅子は最前列中央の一つだけだったので、そこが間違いなく自分の席だと安堵した幸次は普通に扉を開けて入って行く。
突然の音に教師すら言葉を止めて後方の扉を見るので、幸次は爽やかにこう告げた。
「少し遅れてしまい申し訳ないな。ちょっとした事情があったのでな。さっ、余の事は気にせずに遠慮なく続けてくれ」
あまりの変貌ぶりにポカンとする全員だが、教師がいち早く我に返って授業を続けているなかで悠々と前方に歩いて行き、席に座る幸次。
「フム、この世界の知識を得る機会……中々に興味深いではないか」
教師が教えているのは科学の授業であり、異世界の王族であった幸次にしてみれば聞いた事もない様な単語ばかりなのだが、逆に再び知識欲に火がついて身体強化を頭脳に回して全てを理解せんと目をランランと輝かせて授業を聞いていた。
後方にいる金髪の二人を始めとしたクラスメイトの一部は正直その優等生ぶった態度も癪に触っていたのだが、最前列にいて授業に集中している幸次は気が付かない。
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