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呼び出し
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本心から同情しているので、石崎の手を放してやる幸次。
「くっ……」
石崎は右手首を隠すように左手を添えると黙って教室を出て行き、その後を、幸次を一睨みしてから追いかける野田。
「えっと、三島君?」
「吉田殿、申し訳ないが幸次と呼んでもらえないか?どうにも三島は聞きなれないのでな」
幸次は仲を深めると言う意味ではなく、本当に三島と言う呼ばれ方に馴染みが一切ないのでこのようなお願いをしたのだが、言われた吉田は真っ赤になりながらも首肯する。
「その、幸次君。だ、大丈夫でしょうか?石崎君は国会議員の父を持っているのは事実で、恐らくこの学園にも相当顔が効いていると思います。今迄幸次君のご両親も学園に状況改善の申し出をしたのに取り合ってもらえなかったのでしょう?私の両親の時もそうでしたから、容易に想像できます。それも、きっと権力を使っているのです」
漸く国会議員が結構な権力を持っている立場の事を言い表しているのだと理解した幸次だが、それでもだからどうしたと言う考えは変わらない。
「吉田殿。そんな事は一切気にする必要はないな。経験上どれだけ権力があろうが、戦場に出れば己の力だけが頼りになる。まぁ、信頼できる仲間や眷属がいれば共に戦えるが、権力を笠にした態度をとる様な者はそのような真の仲間の存在などあろうはずもない。見かけだけの仲間であれば、戦力足り得ないからな」
高校一年生で何を経験しているのだと言う話だが、雰囲気にのまれている吉田はそう言うものなのかと納得してしまう。
「そ、そうですか。でも、気を付けてくださいね、幸次君」
「気持ちは感謝するが、繰り返しになるが全く問題ないぞ。余の力だけ……眷属など召喚せずともあの程度の雑魚、どれほど束になってかかってこようが問題ない。そんな事より少々教えてほしいのだが……」
国会議員が相当な存在である事を知らなかった幸次は、日本の社会情勢、常識、更にはこの世界の状況を知るべく知識を教えてもらう事にした。
突然色々小学生のような質問を繰り返す幸次を見て、不安を紛らわせるためにこのような事をしているのだと勝手に判断した吉田は、丁寧に全ての質問に答えていたのだが……
……ガラガラ……
「三島、ちょっと来い!」
教室の扉があき、このクラスの担任である篠原 正樹から声を掛けられる幸次だが、やはり三島と言う呼ばれ方に慣れていないのか、新たな知識に夢中なのか反応が大きく遅れる。
「こ、幸次君!先生が呼んでいるよ!」
目の前の吉田の一言で漸く我に返る。
「えっと、どなたでしたっけ?」
もちろん幸次としては初見なので思わずこう言ってしまうのも仕方がないのだが、言われた担任としてはバカにされているとしか思えない。
「お前、聞いた通り偉そうな態度だな。何やら無駄に石崎に手を挙げたそうで、停学にするか退学にするか事情聴取をするんだ。早く来い!」
「え?先生!言いがかりをつけて手を挙げてきたのは石崎君達ですよ!今までの明らかな虐めも見て見ぬふりをしていたくせに、なんでそんなに偉そうなのですか!」
担任である篠原の言い分に我慢の限界が来た吉田が爆発するが、慣れているのか篠原は軽く吉田を見るだけで相手にしない。
言われている事は正論であり身に覚えがあるのだから、無駄に相手をすると生徒達の前でボロが出かねないと思っているのだ。
もうこの時点で相当ボロは出ており教師としての威厳などあったものではないが、再び高圧的に三島を呼びつける。
「三島、早くしろ!」
幸次としては突然自分を擁護してくれた吉田に感謝する気持ちはあるのだが、変に吉田の立場を悪くする事はしたくなかったので、篠原の指示通りに黙って教室を出て付いて行く。
教室で残された吉田に何かあった時に対処できるように、この時点では身体強化を駆使して周囲の気配を慎重に感じ取っているのだが、どうやら篠原は教師達がいるべき職員室と呼ばれている場所ではなく、とある倉庫……体育倉庫の方に向かっている事に気が付いている幸次。
倉庫の隣には室内運動場、所謂体育館がある事も把握しているので聞こえるようにわざとこう呟いている。
「あ~、まさかスポーツでケリをつける訳はなさそうだな。ご丁寧に石崎を始めとした数人が待ち構えて、手に何やら武器も持っている……と。どこが事情聴取なのか教えてもらいたいものだな」
石崎に頼まれて誰もいない体育倉庫に幸次を呼び出した篠原は、まさかここまで正確に事情を把握している事に動揺が隠せないが、逃がすわけにはいかないのでそのまま黙って進むが、少し早足になってしまう。
「入れ」
黙って倉庫の扉を開けて中に入るように指示を出す篠原に対し、そのまま入って対処するとどうなるのかを考えている幸次。
この学校の状況や常識と共に、こういった状況に陥る可能性も踏まえて吉田から直前に知識を貰っていた事が幸いし、迎撃した場合にこの教師が嘘の証言をする可能性が高く、その際には本当に幸次が退学になってしまう可能性すらあると理解していたのだが、前の世界と違って即死ぬような事はないので余裕がある幸次だ。
「どうするかな~!」
「くっ……」
石崎は右手首を隠すように左手を添えると黙って教室を出て行き、その後を、幸次を一睨みしてから追いかける野田。
「えっと、三島君?」
「吉田殿、申し訳ないが幸次と呼んでもらえないか?どうにも三島は聞きなれないのでな」
幸次は仲を深めると言う意味ではなく、本当に三島と言う呼ばれ方に馴染みが一切ないのでこのようなお願いをしたのだが、言われた吉田は真っ赤になりながらも首肯する。
「その、幸次君。だ、大丈夫でしょうか?石崎君は国会議員の父を持っているのは事実で、恐らくこの学園にも相当顔が効いていると思います。今迄幸次君のご両親も学園に状況改善の申し出をしたのに取り合ってもらえなかったのでしょう?私の両親の時もそうでしたから、容易に想像できます。それも、きっと権力を使っているのです」
漸く国会議員が結構な権力を持っている立場の事を言い表しているのだと理解した幸次だが、それでもだからどうしたと言う考えは変わらない。
「吉田殿。そんな事は一切気にする必要はないな。経験上どれだけ権力があろうが、戦場に出れば己の力だけが頼りになる。まぁ、信頼できる仲間や眷属がいれば共に戦えるが、権力を笠にした態度をとる様な者はそのような真の仲間の存在などあろうはずもない。見かけだけの仲間であれば、戦力足り得ないからな」
高校一年生で何を経験しているのだと言う話だが、雰囲気にのまれている吉田はそう言うものなのかと納得してしまう。
「そ、そうですか。でも、気を付けてくださいね、幸次君」
「気持ちは感謝するが、繰り返しになるが全く問題ないぞ。余の力だけ……眷属など召喚せずともあの程度の雑魚、どれほど束になってかかってこようが問題ない。そんな事より少々教えてほしいのだが……」
国会議員が相当な存在である事を知らなかった幸次は、日本の社会情勢、常識、更にはこの世界の状況を知るべく知識を教えてもらう事にした。
突然色々小学生のような質問を繰り返す幸次を見て、不安を紛らわせるためにこのような事をしているのだと勝手に判断した吉田は、丁寧に全ての質問に答えていたのだが……
……ガラガラ……
「三島、ちょっと来い!」
教室の扉があき、このクラスの担任である篠原 正樹から声を掛けられる幸次だが、やはり三島と言う呼ばれ方に慣れていないのか、新たな知識に夢中なのか反応が大きく遅れる。
「こ、幸次君!先生が呼んでいるよ!」
目の前の吉田の一言で漸く我に返る。
「えっと、どなたでしたっけ?」
もちろん幸次としては初見なので思わずこう言ってしまうのも仕方がないのだが、言われた担任としてはバカにされているとしか思えない。
「お前、聞いた通り偉そうな態度だな。何やら無駄に石崎に手を挙げたそうで、停学にするか退学にするか事情聴取をするんだ。早く来い!」
「え?先生!言いがかりをつけて手を挙げてきたのは石崎君達ですよ!今までの明らかな虐めも見て見ぬふりをしていたくせに、なんでそんなに偉そうなのですか!」
担任である篠原の言い分に我慢の限界が来た吉田が爆発するが、慣れているのか篠原は軽く吉田を見るだけで相手にしない。
言われている事は正論であり身に覚えがあるのだから、無駄に相手をすると生徒達の前でボロが出かねないと思っているのだ。
もうこの時点で相当ボロは出ており教師としての威厳などあったものではないが、再び高圧的に三島を呼びつける。
「三島、早くしろ!」
幸次としては突然自分を擁護してくれた吉田に感謝する気持ちはあるのだが、変に吉田の立場を悪くする事はしたくなかったので、篠原の指示通りに黙って教室を出て付いて行く。
教室で残された吉田に何かあった時に対処できるように、この時点では身体強化を駆使して周囲の気配を慎重に感じ取っているのだが、どうやら篠原は教師達がいるべき職員室と呼ばれている場所ではなく、とある倉庫……体育倉庫の方に向かっている事に気が付いている幸次。
倉庫の隣には室内運動場、所謂体育館がある事も把握しているので聞こえるようにわざとこう呟いている。
「あ~、まさかスポーツでケリをつける訳はなさそうだな。ご丁寧に石崎を始めとした数人が待ち構えて、手に何やら武器も持っている……と。どこが事情聴取なのか教えてもらいたいものだな」
石崎に頼まれて誰もいない体育倉庫に幸次を呼び出した篠原は、まさかここまで正確に事情を把握している事に動揺が隠せないが、逃がすわけにはいかないのでそのまま黙って進むが、少し早足になってしまう。
「入れ」
黙って倉庫の扉を開けて中に入るように指示を出す篠原に対し、そのまま入って対処するとどうなるのかを考えている幸次。
この学校の状況や常識と共に、こういった状況に陥る可能性も踏まえて吉田から直前に知識を貰っていた事が幸いし、迎撃した場合にこの教師が嘘の証言をする可能性が高く、その際には本当に幸次が退学になってしまう可能性すらあると理解していたのだが、前の世界と違って即死ぬような事はないので余裕がある幸次だ。
「どうするかな~!」
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