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目を付けられる
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漸く石崎の指示通りに三島を体育倉庫前まで連れてくる事に成功したのだが、ここではまだ目撃者が多数おり、偽証した際に反論される可能性がある為に何としても閉鎖空間である体育倉庫内部に入れる必要がある篠原。
倉庫の中では鉄パイプを持った石崎や野田を始めとした面々が、空いた扉を見つめて待ち構えている。
体育倉庫は外壁の近くにあるので、外にいれば周囲の人から目撃される可能性が高いのだが、一端倉庫内に入ってしまえば中を確認するには外壁の外からでは確認する事は出来ない。
そこまで把握している篠原、石崎達は扉の中に入った瞬間に幸次を集団でボコボコにしてやろうと考えているのだが、目の前まで来ている事はわかるのだが中々中に入ってこない事にイライラしている。
「早く入れと言っているだろうが!」
外からは篠原の大声が聞こえてくるので、中で待ち構えている石崎としては目立つ行動をとっている篠原に対しても怒りが湧いているのだが、その怒りを増幅するような声が聞こえてきた。
「どうするかな~。中に入って石崎達をボコボコに返り討ちにしてやっても良いんだが、そうなると負けた分際で立場を弁えずに一方的にやられたとかふざけた事を言って来るだろうからな。教師とも言えない篠原も偽証するだろうし、そこの所、どう思います?」
幸次の呑気な声が聞こえてきたのだが、その内容はとても聞き逃せる事ではなかった。
なぜなら、これだけ用意周到にしているのに自分達が負けると言い切っているからだが、それでも、集団で鉄パイプを持った状態で外に出る訳にも行かずに黙って耐えている石崎達。
……キーンコーンカーンコーン……
「おっ!やはり余は持っているな。授業があるので話、いや文句かな?あれば別途聞いてやるから安心しろ!」
これだけ言うとあっという間にこの場から消えてしまったので、取り残された篠原と体育倉庫内で準備万端の石崎達は茫然としている。
「だ、大丈夫でしたか?幸次君!」
「何も問題なかったぞ。余としては授業に間に合うかどうかの方がよほど心配だった。これだけ知識を与えてくれる環境を逃すのは許される事ではないからな」
今この教室には、体育倉庫に取り残された石崎や野田、その取り巻きが不在である為に空席が目立つ。
「今日は随分と欠席が多いですね」
出席簿を取りながら呟きつつも、幸次が出席している事に少し微笑む社会科教師の川瀬 栞は間もなく定年の教師なのだが、曲がった事が嫌いで幸次の事を常日頃気にかけて、担任である篠原や理事長に苦言を呈し、更には石崎にも直接指導をしてくれるような素晴らしい教師だ。
石崎としては一年待たずに定年になって学園を去る教師に目くじらを立てる必要は感じなかったので全てを聞き流しており、態度を変えるような事は一切なかったのだが……
社会の授業は今の幸次が最も知識を欲する分野である事は自分自身も把握しているので、身を乗り出さんばかりに集中して授業を聞いている。
「これで今日の授業は終わります。幸次君。今日は随分と……雰囲気が変わりましたね。良い方向に進んでいるのかしら?先生はとても嬉しいです」
虐め主犯格とその取り巻きが全員欠席している状況の為に事態が大きく好転したと思っている川瀬は、幸次のやる気に満ち溢れた態度も相まって目の前の席に座っている幸次に優しく一言かけてから教室を後にする。
「あの先生……川瀬先生は素晴らしいお方だ。余は感動した。あのお方こそ教師の鏡!授業の内容も非常に分かり易いからな。ところで、篠原の教科は何だ?」
「えっと……体育ですね」
「体育!だから倉庫を自由に使えたのだな。全く、川瀬先生の爪の垢を直接大量に飲ませる必要があるのかもしれないな」
そうこうしている内に昼休みになり、その後何事もなかったかのように石崎達も教室に戻って午後の授業が行われ、帰宅前のホームルームで担任の篠原が生徒達に連絡事項を伝える。
「明日から教育実習の先生が来るので、そのつもりで。教科は国語と英語だがこのクラスの副担任の位置づけで活動する事になる。以上、解散!」
幸次を呼び出したのは石崎に頼まれただけなので、停学や退学の話等あろうはずもなく、その後は何も言えずにいた篠原はこれだけ告げると教室を後にする。
「あの……幸次君。明日も学校に来てくれますか?」
「当然だ!ありとあらゆる知識が不足している余にとって、この学びの機会を簡単に放棄するような選択肢など有り得ないからな!」
吉田としては一部問題のあった一日だったが、最終的には幸次と楽しく学校で過ごす事が出来たので明日も同じように過ごせるか確認しただけなのだが、幸次としては自分の知識欲を満たす事も当然の事として、自分の不在時に石崎達が何かを吉田に対して余計な事をしてこないか心配だと言う面もあるのだが、そこは口にはしない。
担任でさえあの様子なので自らが直接吉田を守る他ないと強い覚悟を持ってこの日は帰宅するべく自転車置き場に向かうと、予想通りそこにはお供を連れた石崎が待ち構えているが、流石に目立つ位置にいる事から武器を手にしている事は無かった。
「おい、三島」
「またお前か、石崎だったか?実はお前は余のファンなのか?何と言ったか……そう、ストーカーだ!どうだ、そうだろう?」
ここまで粘着されると、実は自分の事が好きでこの世界で言う所のストーカーなのではと思い、爆弾を投げつける幸次だ。
倉庫の中では鉄パイプを持った石崎や野田を始めとした面々が、空いた扉を見つめて待ち構えている。
体育倉庫は外壁の近くにあるので、外にいれば周囲の人から目撃される可能性が高いのだが、一端倉庫内に入ってしまえば中を確認するには外壁の外からでは確認する事は出来ない。
そこまで把握している篠原、石崎達は扉の中に入った瞬間に幸次を集団でボコボコにしてやろうと考えているのだが、目の前まで来ている事はわかるのだが中々中に入ってこない事にイライラしている。
「早く入れと言っているだろうが!」
外からは篠原の大声が聞こえてくるので、中で待ち構えている石崎としては目立つ行動をとっている篠原に対しても怒りが湧いているのだが、その怒りを増幅するような声が聞こえてきた。
「どうするかな~。中に入って石崎達をボコボコに返り討ちにしてやっても良いんだが、そうなると負けた分際で立場を弁えずに一方的にやられたとかふざけた事を言って来るだろうからな。教師とも言えない篠原も偽証するだろうし、そこの所、どう思います?」
幸次の呑気な声が聞こえてきたのだが、その内容はとても聞き逃せる事ではなかった。
なぜなら、これだけ用意周到にしているのに自分達が負けると言い切っているからだが、それでも、集団で鉄パイプを持った状態で外に出る訳にも行かずに黙って耐えている石崎達。
……キーンコーンカーンコーン……
「おっ!やはり余は持っているな。授業があるので話、いや文句かな?あれば別途聞いてやるから安心しろ!」
これだけ言うとあっという間にこの場から消えてしまったので、取り残された篠原と体育倉庫内で準備万端の石崎達は茫然としている。
「だ、大丈夫でしたか?幸次君!」
「何も問題なかったぞ。余としては授業に間に合うかどうかの方がよほど心配だった。これだけ知識を与えてくれる環境を逃すのは許される事ではないからな」
今この教室には、体育倉庫に取り残された石崎や野田、その取り巻きが不在である為に空席が目立つ。
「今日は随分と欠席が多いですね」
出席簿を取りながら呟きつつも、幸次が出席している事に少し微笑む社会科教師の川瀬 栞は間もなく定年の教師なのだが、曲がった事が嫌いで幸次の事を常日頃気にかけて、担任である篠原や理事長に苦言を呈し、更には石崎にも直接指導をしてくれるような素晴らしい教師だ。
石崎としては一年待たずに定年になって学園を去る教師に目くじらを立てる必要は感じなかったので全てを聞き流しており、態度を変えるような事は一切なかったのだが……
社会の授業は今の幸次が最も知識を欲する分野である事は自分自身も把握しているので、身を乗り出さんばかりに集中して授業を聞いている。
「これで今日の授業は終わります。幸次君。今日は随分と……雰囲気が変わりましたね。良い方向に進んでいるのかしら?先生はとても嬉しいです」
虐め主犯格とその取り巻きが全員欠席している状況の為に事態が大きく好転したと思っている川瀬は、幸次のやる気に満ち溢れた態度も相まって目の前の席に座っている幸次に優しく一言かけてから教室を後にする。
「あの先生……川瀬先生は素晴らしいお方だ。余は感動した。あのお方こそ教師の鏡!授業の内容も非常に分かり易いからな。ところで、篠原の教科は何だ?」
「えっと……体育ですね」
「体育!だから倉庫を自由に使えたのだな。全く、川瀬先生の爪の垢を直接大量に飲ませる必要があるのかもしれないな」
そうこうしている内に昼休みになり、その後何事もなかったかのように石崎達も教室に戻って午後の授業が行われ、帰宅前のホームルームで担任の篠原が生徒達に連絡事項を伝える。
「明日から教育実習の先生が来るので、そのつもりで。教科は国語と英語だがこのクラスの副担任の位置づけで活動する事になる。以上、解散!」
幸次を呼び出したのは石崎に頼まれただけなので、停学や退学の話等あろうはずもなく、その後は何も言えずにいた篠原はこれだけ告げると教室を後にする。
「あの……幸次君。明日も学校に来てくれますか?」
「当然だ!ありとあらゆる知識が不足している余にとって、この学びの機会を簡単に放棄するような選択肢など有り得ないからな!」
吉田としては一部問題のあった一日だったが、最終的には幸次と楽しく学校で過ごす事が出来たので明日も同じように過ごせるか確認しただけなのだが、幸次としては自分の知識欲を満たす事も当然の事として、自分の不在時に石崎達が何かを吉田に対して余計な事をしてこないか心配だと言う面もあるのだが、そこは口にはしない。
担任でさえあの様子なので自らが直接吉田を守る他ないと強い覚悟を持ってこの日は帰宅するべく自転車置き場に向かうと、予想通りそこにはお供を連れた石崎が待ち構えているが、流石に目立つ位置にいる事から武器を手にしている事は無かった。
「おい、三島」
「またお前か、石崎だったか?実はお前は余のファンなのか?何と言ったか……そう、ストーカーだ!どうだ、そうだろう?」
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