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楽しい授業
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突然体が“だらん”と伸びて顔は下を向き、下半身からは液体が漏れ始めた石崎をつまらなそうに放す幸次。
「情けない。敵を前にしてこの程度で失神すれば死は確実!万に一つの逆転の目すらなくなるのだ。常に他人の力を笠に偉そうにしているから無力の自分に気が付かないし、鍛え上げようと言う気持ちも湧かないのだ。嘆かわしい、実に嘆かわしい!他のエラ呼吸の下民共はどうだ?エラ呼吸のボスが目の前で倒されたのだぞ?その怨敵である余に向かって来る忠臣はいないのか?」
過去に自らを守り抜くために死んでしまった忠臣を数多く見て、感謝と尊敬の念と共にその全ての顔と名前を憶えている幸次は、この平和な日本でも少しは骨のある人物がいるのだろうと期待していたのだが……その期待は大きく裏切られる。
生徒側としては連続して大惨事を見させられて幸次に歯向かえるわけもなく、誰しもが相変わらず下を向いて震えているのだ。
――キーンコーンカーンコーン――
幸次にとっては楽しい練習の時間の終焉、他の生徒にとっては救いの鐘とも言える音が柔道場に鳴り響く。
「幸次君、残念ですが今日は終わりですね。でも、柔道の授業はまだまだありますから、楽しみですね」
「そうなのか?非常に残念だが仕方あるまい。良し!こうなったら余ももっと技に磨きをかけて……独自の技を編み出すのも良いかもしれないな。フフフフ、楽しみだ。おい、篠原!その時には練習台として使ってやるから貴様もしっかりと鍛えておけ。あまりにも弱すぎるぞ!」
最大の脅しともとれる言葉を残して、幸次、続いて女子生徒が消え、残った伍葉は未だに震えている男子生徒達に指示を出す。
ちなみに気絶して情けない姿を曝け出している金髪石崎の彼女である野田も、石崎が出してしまった汚物の匂いが気に入らないのか、流れるようにこの場から消えている。
「貴方と貴方は石崎君を保健室……の前に、綺麗にした上で保健室に連れて行ってくださいね。そちらの貴方もいつも石崎君と一緒にいますよね?仲の良い友人なのでしょう?その友人の粗相の後始末、くれぐれも丁寧にお願いしますね。何と言ってもここは神聖な柔道場ですから」
石崎の腰巾着に汚物や汚物が付着した石崎の処置を指示した後に、篠原を完全に無視する形で柔道場を後にする伍葉。
「それにしても、凄い逸材が隠れていたわね。幸次君……か。この二種目だけでも世界を凌駕しているわよ!フフ、次は何を見せてくれるのかしら!」
幸次が虐められていると言う立場ではなくなっており、圧倒的な力で逆襲していると理解した伍葉は、幸次のその秘めたポテンシャルの一部を把握して次なる力がどのようなものなのかを楽しみにしている。
「おや、今日も随分と……」
三時限目は、幸次が尊敬できる教師と思っている川瀬栞が担当する社会の授業であり、相当数の男子生徒が机に突っ伏しているので不思議そうにしている。
篠原がダウンした為に伍葉もこの場にいるので、少しだけ事情を説明しつつも、自らも尊敬できると思っている教師の授業の進め方を学ぼうと真剣な眼差しだ。
「あの、川瀬先生。二時限目まで連続して篠原先生の指示によって体育だったのですが、随分と体力を削られたようで」
石崎を除けば削られたのは気力だが、そこまで親切に説明するつもりはない。
「そうですか。ですが、幸次君は随分と生き生きしていますね。本当に先生は嬉しいですよ!」
「川瀬先生の授業を受けられる事に対して、余は非常にワクワクしている!」
教壇の目の前にある最前列中央の席に座って気合十分の幸次の姿を見て、本当に良かったと安堵しつつも授業が始まるのだが……
「先生、実は質問があるのだ。どうやらこの国の国会議員と言うのは人様の家庭に口を出せる権力を有している様なのだが、その辺りについて教えてもらえないだろうか?」
心身共に大きなダメージを受けている石崎は幸次の言葉を聞いて僅かに反応するのだが、反撃したり言い訳したりする余力は残されていなかったのでそれ以上の動きを見せる事は無く机に突っ伏した状態のままだが、川瀬先生も幸次のその質問を聞いて視線が石崎に移行して呆れるような表情で答える。
「本来そんな事は有り得ないはずですね。ですが、どの立場の者でも後ろ暗い事をする者、できる者が存在している事も事実です。悲しい事ですね。先生程度でとこまで力になれるかわかりませんが、何かあれば相談してください、幸次君」
まさに幸次の理想、いや、この短い期間で経験していた肥溜めの様な連中の中に存在する穢れのない光を放つ川瀬先生は理想以上の存在であると理解した幸次は、立ち上がると綺麗に一礼する。
流石は王族なので、敬意を持った行動であればただの礼でも見惚れてしまう所作だ。
「川瀬先生。余は猛烈に感動した。先生に相談する様な重大な事にはなっていないが、先生の温かい心は余の中に確実に根付いたのだ。ここに深く感謝申し上げる」
「フフ、幸次君は面白くなりましたね。私はそこまで感謝されるような事はしていませんよ。さっ、他に質問が無ければ授業を開始しますよ?」
更に尊敬できる事を言ってきたので幸次の気合は止まらずに、鼻からムフーッと息が漏れるのではないかと言う程の状況で授業を受けていた。
まさに川瀬の発する一字一句を逃さんとばかりに……
「はい、今日の授業はここで終わりです。間もなくテストですから……今の幸次君であれば問題ないでしょうが、頑張りましょうね。質問はいつでも受け付けますよ」
こうして幸次としては一部消化不老ではあったが、社会の授業は想像以上の充実感を得る事が出来、満足したままにその日の授業は終了した。
「情けない。敵を前にしてこの程度で失神すれば死は確実!万に一つの逆転の目すらなくなるのだ。常に他人の力を笠に偉そうにしているから無力の自分に気が付かないし、鍛え上げようと言う気持ちも湧かないのだ。嘆かわしい、実に嘆かわしい!他のエラ呼吸の下民共はどうだ?エラ呼吸のボスが目の前で倒されたのだぞ?その怨敵である余に向かって来る忠臣はいないのか?」
過去に自らを守り抜くために死んでしまった忠臣を数多く見て、感謝と尊敬の念と共にその全ての顔と名前を憶えている幸次は、この平和な日本でも少しは骨のある人物がいるのだろうと期待していたのだが……その期待は大きく裏切られる。
生徒側としては連続して大惨事を見させられて幸次に歯向かえるわけもなく、誰しもが相変わらず下を向いて震えているのだ。
――キーンコーンカーンコーン――
幸次にとっては楽しい練習の時間の終焉、他の生徒にとっては救いの鐘とも言える音が柔道場に鳴り響く。
「幸次君、残念ですが今日は終わりですね。でも、柔道の授業はまだまだありますから、楽しみですね」
「そうなのか?非常に残念だが仕方あるまい。良し!こうなったら余ももっと技に磨きをかけて……独自の技を編み出すのも良いかもしれないな。フフフフ、楽しみだ。おい、篠原!その時には練習台として使ってやるから貴様もしっかりと鍛えておけ。あまりにも弱すぎるぞ!」
最大の脅しともとれる言葉を残して、幸次、続いて女子生徒が消え、残った伍葉は未だに震えている男子生徒達に指示を出す。
ちなみに気絶して情けない姿を曝け出している金髪石崎の彼女である野田も、石崎が出してしまった汚物の匂いが気に入らないのか、流れるようにこの場から消えている。
「貴方と貴方は石崎君を保健室……の前に、綺麗にした上で保健室に連れて行ってくださいね。そちらの貴方もいつも石崎君と一緒にいますよね?仲の良い友人なのでしょう?その友人の粗相の後始末、くれぐれも丁寧にお願いしますね。何と言ってもここは神聖な柔道場ですから」
石崎の腰巾着に汚物や汚物が付着した石崎の処置を指示した後に、篠原を完全に無視する形で柔道場を後にする伍葉。
「それにしても、凄い逸材が隠れていたわね。幸次君……か。この二種目だけでも世界を凌駕しているわよ!フフ、次は何を見せてくれるのかしら!」
幸次が虐められていると言う立場ではなくなっており、圧倒的な力で逆襲していると理解した伍葉は、幸次のその秘めたポテンシャルの一部を把握して次なる力がどのようなものなのかを楽しみにしている。
「おや、今日も随分と……」
三時限目は、幸次が尊敬できる教師と思っている川瀬栞が担当する社会の授業であり、相当数の男子生徒が机に突っ伏しているので不思議そうにしている。
篠原がダウンした為に伍葉もこの場にいるので、少しだけ事情を説明しつつも、自らも尊敬できると思っている教師の授業の進め方を学ぼうと真剣な眼差しだ。
「あの、川瀬先生。二時限目まで連続して篠原先生の指示によって体育だったのですが、随分と体力を削られたようで」
石崎を除けば削られたのは気力だが、そこまで親切に説明するつもりはない。
「そうですか。ですが、幸次君は随分と生き生きしていますね。本当に先生は嬉しいですよ!」
「川瀬先生の授業を受けられる事に対して、余は非常にワクワクしている!」
教壇の目の前にある最前列中央の席に座って気合十分の幸次の姿を見て、本当に良かったと安堵しつつも授業が始まるのだが……
「先生、実は質問があるのだ。どうやらこの国の国会議員と言うのは人様の家庭に口を出せる権力を有している様なのだが、その辺りについて教えてもらえないだろうか?」
心身共に大きなダメージを受けている石崎は幸次の言葉を聞いて僅かに反応するのだが、反撃したり言い訳したりする余力は残されていなかったのでそれ以上の動きを見せる事は無く机に突っ伏した状態のままだが、川瀬先生も幸次のその質問を聞いて視線が石崎に移行して呆れるような表情で答える。
「本来そんな事は有り得ないはずですね。ですが、どの立場の者でも後ろ暗い事をする者、できる者が存在している事も事実です。悲しい事ですね。先生程度でとこまで力になれるかわかりませんが、何かあれば相談してください、幸次君」
まさに幸次の理想、いや、この短い期間で経験していた肥溜めの様な連中の中に存在する穢れのない光を放つ川瀬先生は理想以上の存在であると理解した幸次は、立ち上がると綺麗に一礼する。
流石は王族なので、敬意を持った行動であればただの礼でも見惚れてしまう所作だ。
「川瀬先生。余は猛烈に感動した。先生に相談する様な重大な事にはなっていないが、先生の温かい心は余の中に確実に根付いたのだ。ここに深く感謝申し上げる」
「フフ、幸次君は面白くなりましたね。私はそこまで感謝されるような事はしていませんよ。さっ、他に質問が無ければ授業を開始しますよ?」
更に尊敬できる事を言ってきたので幸次の気合は止まらずに、鼻からムフーッと息が漏れるのではないかと言う程の状況で授業を受けていた。
まさに川瀬の発する一字一句を逃さんとばかりに……
「はい、今日の授業はここで終わりです。間もなくテストですから……今の幸次君であれば問題ないでしょうが、頑張りましょうね。質問はいつでも受け付けますよ」
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