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球技大会②
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「幸次君、頑張って!」
石崎御一行が近くにいないので余計な騒ぎが起きる事も無く、平和ながらも楽しく球技大会は進んで行く中でいよいよ幸次VS品川が始まる。
事前に数試合観察する事でルールやある程度のテクニックは頭では理解しているのだが、初めてラケットと球を触り、想像以上に球が軽い事、ラケットが小さい事でかなり意識と体の動きにずれが生じるだろうと判断した幸次。
「品川殿、今の時間は練習時間で良いのだったな?良ければ、余と軽い打ち合いをしてもらえると助かるが」
「もちろん。だけど君には勝つつもりだから、練習時間でもある程度力を入れさせてもらうよ?」
相当力を抑えて幸次の練習時間を延ばすまではするつもりはない品川と、逆に手加減しないと言ってもらえて嬉しい気持ちになっている幸次は、互いの利害が一致したので早速ラリーを始める事にした。
『確か、速度を増しつつも下方向に球を動かすには、下から上に球を擦り上げるのだな』
今までの観察で得た知識と、日々図書館や図書室、更には会話などから得た知識では野球の変化球と同じ理論……所謂マグヌス効果だと理解しつつ試す事にした。
―――パキ―――
早速強めの一撃をお見舞いして相手の力量も測ってやろうと思った幸次なのだが、初手から球が割れてしまった。
「あれ?いきなり割れちゃった?はい、これ」
「む?すまない。では改めて!」
幸次の中では少し強めで様子を見ようとしたのだが、その力に耐えられず球が割れてしまい、品川からしてみれば時折みられる現象なので、幸次の有り得ない力によるものだとは思っていなかった。
『ならば、この程度であれば大丈夫か?』
今の一撃で割れてしまった球の破壊状況をしっかりと観察できていた幸次は、更に力を調整してボールを擦り上げた。
―――カコン――カコ―――
その球は、品川の予想をはるかに超える速度であった為に反応が遅れ、ラケットには当たったものの相当振り遅れたのであらぬ方向に球が飛んでいく。
「こ、幸次君……君、卓球は初めてって言っていたよね?」
思わず相当な実力がある経験者なのではないかと改めて確認してしまった品川に対して、当然とばかりに回答する幸次に更なる追求は出来ないながらも、次は自らが相当変則的な回転を加えたサーブを行って反応を見る事にした品川。
「打つ方は良くても、受ける方はどうかな?」
何故だか試合前の軽い打ち合いで始めたのだが、共に真剣に対応して勝負のような形になってしまっている。
品川は右手でラケットを持っている幸次の懐深くに食い込むような方向の回転をかけてサーブを放ち、今までにない程の手ごたえを感じつつ幸次の反応を見る余裕すらあったのだが、幸次は焦る様子も無く流れる様に体が動き、品川がかけた回転に対応するかのようにきっちりと返してきたのだ。
しかし初めての対戦形式で鋭い回転がかかったサーブを返しているので、初回のボールの破壊の影響も考慮して速度は非常に緩やかに返っており、その隙を逃さんとばかりに激しく品川が幸次に向かって打ち込むのだが……その勢いをそのまま返してしまう幸次。
やはり力をある程度調整している事から、トッププロ顔負けのラリーを行う台が出来上がり、ズレる事のない定期的な見事な音に釣られる様に周囲の視線が集中する。
決まったように体が自然と動く事に気を良くした幸次はそのままラリーを続けて行く中で、品川は狙ったわけではないが若干ボールを打つポイントが外れてしまい今迄とは異なる回転がかかっている球が幸次に返され、気持ちの良い流れに身を任せていた幸次は対応する事が出来なかった。
「む!フム、品川殿は相当なやり手と見た。余を撃破するとはな!フフフ、滾るではないか。勝負とは強敵を倒してこそ勝負。篠原相手のような不甲斐ない試合にならない事だけは確実だ!ハハハハ、非常に楽しみだ」
練習とは言え負けるつもりはなかったのだが、余計な方向に意識が集中してしまった事は言い訳にならない事位は理解している幸次は、今回の練習は自らの負けと素直に認めつつも、本試合が楽しみだと言い切る。
因みにこの言葉の中でこき下ろされている本来の担任である体育教師の篠原は、未だ心身ともに癒えず休職中だ。
「ほ、本当に初めて卓球をしたのだよね?凄い才能だ。だけど、僕としても長く卓球をしてきた自負があるからね。こっちも簡単に負けるわけにはいかないよ?」
幸次の情熱に引きずられたのか、熱血スポーツドラマのようになり始めている球技大会の一画であり、その後試合が開始される。
幸次が全国大会トップレベルの実力者であるとの思いでいる品川は、練習中のサーブを含めて持てる技術を全て駆使して全力で対戦し、幸次は品川が持っている技の引き出しの多さに感心しながらも対応していく。
やはり一日の長があるのか当初は品川有利で試合が進むのだが、いくら技の引き出しが多いとは言っても順次対応されてしまっては幸次に対して有効な攻撃が出来なくなってくるので、徐々に追い詰められ……
「勝者、幸次君!」
「おいおい、アイツスゲーぞ。品川って全国大会の上位入賞者だよな?」
周囲のざわめきの示す通りに、何と幸次が勝利したのだ。
石崎御一行が近くにいないので余計な騒ぎが起きる事も無く、平和ながらも楽しく球技大会は進んで行く中でいよいよ幸次VS品川が始まる。
事前に数試合観察する事でルールやある程度のテクニックは頭では理解しているのだが、初めてラケットと球を触り、想像以上に球が軽い事、ラケットが小さい事でかなり意識と体の動きにずれが生じるだろうと判断した幸次。
「品川殿、今の時間は練習時間で良いのだったな?良ければ、余と軽い打ち合いをしてもらえると助かるが」
「もちろん。だけど君には勝つつもりだから、練習時間でもある程度力を入れさせてもらうよ?」
相当力を抑えて幸次の練習時間を延ばすまではするつもりはない品川と、逆に手加減しないと言ってもらえて嬉しい気持ちになっている幸次は、互いの利害が一致したので早速ラリーを始める事にした。
『確か、速度を増しつつも下方向に球を動かすには、下から上に球を擦り上げるのだな』
今までの観察で得た知識と、日々図書館や図書室、更には会話などから得た知識では野球の変化球と同じ理論……所謂マグヌス効果だと理解しつつ試す事にした。
―――パキ―――
早速強めの一撃をお見舞いして相手の力量も測ってやろうと思った幸次なのだが、初手から球が割れてしまった。
「あれ?いきなり割れちゃった?はい、これ」
「む?すまない。では改めて!」
幸次の中では少し強めで様子を見ようとしたのだが、その力に耐えられず球が割れてしまい、品川からしてみれば時折みられる現象なので、幸次の有り得ない力によるものだとは思っていなかった。
『ならば、この程度であれば大丈夫か?』
今の一撃で割れてしまった球の破壊状況をしっかりと観察できていた幸次は、更に力を調整してボールを擦り上げた。
―――カコン――カコ―――
その球は、品川の予想をはるかに超える速度であった為に反応が遅れ、ラケットには当たったものの相当振り遅れたのであらぬ方向に球が飛んでいく。
「こ、幸次君……君、卓球は初めてって言っていたよね?」
思わず相当な実力がある経験者なのではないかと改めて確認してしまった品川に対して、当然とばかりに回答する幸次に更なる追求は出来ないながらも、次は自らが相当変則的な回転を加えたサーブを行って反応を見る事にした品川。
「打つ方は良くても、受ける方はどうかな?」
何故だか試合前の軽い打ち合いで始めたのだが、共に真剣に対応して勝負のような形になってしまっている。
品川は右手でラケットを持っている幸次の懐深くに食い込むような方向の回転をかけてサーブを放ち、今までにない程の手ごたえを感じつつ幸次の反応を見る余裕すらあったのだが、幸次は焦る様子も無く流れる様に体が動き、品川がかけた回転に対応するかのようにきっちりと返してきたのだ。
しかし初めての対戦形式で鋭い回転がかかったサーブを返しているので、初回のボールの破壊の影響も考慮して速度は非常に緩やかに返っており、その隙を逃さんとばかりに激しく品川が幸次に向かって打ち込むのだが……その勢いをそのまま返してしまう幸次。
やはり力をある程度調整している事から、トッププロ顔負けのラリーを行う台が出来上がり、ズレる事のない定期的な見事な音に釣られる様に周囲の視線が集中する。
決まったように体が自然と動く事に気を良くした幸次はそのままラリーを続けて行く中で、品川は狙ったわけではないが若干ボールを打つポイントが外れてしまい今迄とは異なる回転がかかっている球が幸次に返され、気持ちの良い流れに身を任せていた幸次は対応する事が出来なかった。
「む!フム、品川殿は相当なやり手と見た。余を撃破するとはな!フフフ、滾るではないか。勝負とは強敵を倒してこそ勝負。篠原相手のような不甲斐ない試合にならない事だけは確実だ!ハハハハ、非常に楽しみだ」
練習とは言え負けるつもりはなかったのだが、余計な方向に意識が集中してしまった事は言い訳にならない事位は理解している幸次は、今回の練習は自らの負けと素直に認めつつも、本試合が楽しみだと言い切る。
因みにこの言葉の中でこき下ろされている本来の担任である体育教師の篠原は、未だ心身ともに癒えず休職中だ。
「ほ、本当に初めて卓球をしたのだよね?凄い才能だ。だけど、僕としても長く卓球をしてきた自負があるからね。こっちも簡単に負けるわけにはいかないよ?」
幸次の情熱に引きずられたのか、熱血スポーツドラマのようになり始めている球技大会の一画であり、その後試合が開始される。
幸次が全国大会トップレベルの実力者であるとの思いでいる品川は、練習中のサーブを含めて持てる技術を全て駆使して全力で対戦し、幸次は品川が持っている技の引き出しの多さに感心しながらも対応していく。
やはり一日の長があるのか当初は品川有利で試合が進むのだが、いくら技の引き出しが多いとは言っても順次対応されてしまっては幸次に対して有効な攻撃が出来なくなってくるので、徐々に追い詰められ……
「勝者、幸次君!」
「おいおい、アイツスゲーぞ。品川って全国大会の上位入賞者だよな?」
周囲のざわめきの示す通りに、何と幸次が勝利したのだ。
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