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2章~新都市へ~

第6話 迷宮都市ヴルテン

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翌朝、警備兵詰所に行くと、ちょうど『シラネリア』の三人が来ていた。
報奨金を受け取ると、グリフが昼食の誘いをしてきた。

【ヤドリギ亭】
「君たちは迷宮の何階層まで?」
ヤドリギ亭名物の[ポルーガのシチュー〕を食べながらフィルが『シラネリア』のメンバーに質問をした。

「第5までだ。あそこから下がキツくてね」
グリフが肩をすくめながら答えた。

どうやら迷宮は、五階層毎に魔物の強さが格段と上がるらしい。
また、迷宮は十階層毎に《階層主》と呼ばれる物がいることも判明している。

迷宮最高到達点は52階層だそうだ。
冒険者はSランクとAランクのパーティだったそうだ。
その下層には何があり、そしてどんな魔物がいるかはまだ誰も知らない。

「そういえばなんですけど、」
食事をとり終え一服している全員に向かってユウが言った。
その場の全員に注目の眼差しを向けられ、少し照れくさそうに頭を掻きながら


「皆さんのランクとかレベルっていくつなんですか?」
個人的なことだと思い、若干躊躇いもしたが何時かは聞いておきたかったことだ。

「ああ、そういえばまだ話したこと無かったな。俺とフィルはCランクだ。まあ、今回の迷宮探索中にはBランクに上がれると思うがな!」

フィルの肩を抱き、鼻高々といったように笑いながらレガンが答えた。


「俺たちもCランクだ。こないだの盗賊討伐でDから上がったばかりだ。」

どうやら警備兵詰所でもギルドカードの更新をする事はでき、報奨金を受け取った際にランクが上がったことを確認していたそうだ。


「ならお前は、この中で一番のひよっ子ってことだな!」
いつの間に酒を飲んでいたのだろうか、顔を赤らめたレガンが、ユウの頭をわしゃわしゃと乱暴に撫で回しながら偉そうな口ぶりで言った。

そんな様子を見てハァーとため息を漏らすフィル、死んだような目をしつつ助けを求めるユウの姿を見て『シラネリア』のメンバーたちが、戸惑いの姿を見せつつも笑い合う姿がそこにあった。


「さっきレガンが言ってたけど、ユウは最近冒険者になったのか?」

全員でレガンに大量の酒を飲ませ酔い潰した後、バゲルが思い出したように聞いた。その横ではグリフとアデリンが、腹を抱えながら笑い転げている。

ユウとフィルはそういえばという顔をして、エルミント近郊の森での出会いから今までについてを語った。

その後、『シラネリア』結成の経緯も聞くことになった。
どうやら彼らは【テロネル村】という小さな村で育った幼馴染みらしく、子どもの時に村を襲った魔物を討伐した冒険者に憧れこの職業を選んだそうだ。

共に、積もる話を語り明かしながらこの夜は更けていった・・・・・


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翌朝

「この街でのことなんだけどね」
三人で朝食を食べているとフィルがユウに質問を投げかけてきた。

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Cランク上位の者とEランク成り立てでは、その力量に大きな差がある。

もちろんゴブリン討伐程度ならば何ら問題は無い。しかし、ここは迷宮だ。

何が起こるか、どんなモンスターが出るかは誰にも分からない。
これは、ごく稀な例ではあるが低階層に突如十階層レベルが出る可能性がある。

そういった時に高ランク冒険者が低ランク冒険者の身代わりとなることがある。

そうならないため、低ランク冒険者は普通の討伐依頼にせよ迷宮探索にしろある程度は一人乃至は同ランク帯でのパーティを組むことがある。
そこで仲間との協力方法、脅威からの逃走方法を学ぶのだ。

もちろんこれには大きな危険が伴う、低ランクパーティの場合全滅する可能性があるというものだ。
しかし、それをくぐり抜けられなければその程度の冒険者とも言う。

それに、この方法なら高ランク冒険者に頼ることがないので素早く強くなるには最適だ。

死ぬ可能性と強くなる可能性この二つが寄り添うように相対しているのだ。

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「で、この二つの方法があるんだけどどうする?僕としてはできればいっし・・・・・・」

「俺は一人がいいと思う!」
フィルの言葉を遮りレガンが腕を組みながらこう言った。

「お前は優しすぎることがある。それでは、ユウも強くならんし俺たちも危険だ。」
レガンの中にも葛藤があるのだろう。一人では死ぬかもしれない、しかし一緒ならば自分かもしれない。

「俺は一人で行こうと思ってます。」
元からその考えではあった。いつまでも、頼っていてはいけないということも

「そうか・・・ 君が言うなら僕は反対しないよ・・・」
少し意気消沈気味のフィルが答えた。

それからしばらく経ってフィルとレガンは迷宮へと旅立っていった。


二人に対してユウは今日一日は都市探索、迷宮探索は明日にすることにした。

まずは、冒険者ギルドへと向かった。
さすが迷宮都市という名だけありギルドの大きさは、エルミントよりも遥かに大きなものだった。

受付では多くの冒険者たちが討伐や魔石の報酬を貰うため長蛇の列を作っていた。
その横には、《迷宮地図》と書かれた地図売り場がありそこにも何人かの冒険者がいた。

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《迷宮地図》
迷宮探索をした冒険者たちが作った地図。
物によって一階層すべての道が書いてある物、途中までしか書いてないものなどがある。

もちろん、途中書きの地図の方が安い。

しかし、これらの地図はあくまでギルドの利益目的のために販売されているものであり、地図を使っての探索は推奨されていない。

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今日一日で色々な所を見ることができた。
西は鍛冶屋が多く、東は料理店、南は宿屋で北は武具防具が多い。

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さあ、いよいよ明日は迷宮探索だ

絶対にこんな所で死ぬつもりは無い

せっかく異世界へ来たのだ

最期の最後まで必ず生き抜いてみせる!


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