唇を隠して,それでも君に恋したい。

初恋

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ボクの"エラブヒト"

長い間"キミ"のユメを見ていた。

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ーガタンゴトン,ガタガタッ



何の音だろう。

僕は何故か重たいように感じる頭で考える。

考えたけど……

気付いたときには,目の前が明るくなっていて。

目の前には教科書を持った敦がいた。

? 敦って,誰だっけ。



「よろしく羽村」



カタンと椅子が傾く。

さっきの音は,これが原因だったらしい。

目の前の同級生からの声かけに,数秒フリーズした僕はあぁと思い出した。

席替え,だったんだ。

よろしく,と返すべきか迷う。



「誰?」



僕はそれよりも先に,根本的なことを尋ねることにした。

手を差し出したままの彼は,苦笑をこぼす。



「中村 敦。まあ,クラスメートとはいえまだ1ヶ月だもんな。よろしく」



今度は強引に僕の手を引いて,握手を交わす敦。

僕が俯いたままされるがままになっていると,厚くもっさりとした前髪の向こうに視線が交差した。

思わず驚いて身を引く僕。



「う,わ……やめ」



敦はそのまま,僕のおでこに手を当てるようにして,僕の前髪を持ち上げる。

抵抗しようにも,体格さがありすぎた。



「こんなんじゃ見えないだろ。俺の顔覚えらんないとまた分かんなくなるぞ」



余計なお世話だ。

だけど,なんの仕切りもないままみた敦の瞳がまんまると純粋な形をしていて,僕は唸る。

僕はじたばたするのをやめながらも,敦の手からは手を外さなかった。



「お前,キレーな顔してんのな」



ふはっと笑われて,屈辱的なはずなのに。

友好的な空気を感じると,僕はなにも言えない。



「もういいだろ」



ふいと顔を背ける。

敦は自分の席に座り直すと



「うん」



と頷いた。

そこは素直なのかよ,と,こっちのペースばかりが乱される。



「なあ,伊織って呼んでもいいか?」



僕は君の名字すら知らなかったのに。

敦はなんの迷いもなく言いはなった。



「好きにすれば」



僕はやっぱり,真っ直ぐには返せなくて。

だけど気を悪くすることもなく,僕を友人にしてくれて。

皆の仲間に入れて,友達にしてくれて。

僕は……

最初にきっかけをくれた君を,君だけを特別に想って,恋に変わるのに。

たいした時間はかからなかった。

そうだ。

生まれたばかりのひよこが,母親を錯覚するように。

初めて隔たりなく映った君に,僕は……

ずっとずっと恋を



「おり……伊織,伊織」

「ん……」

「もうすぐつくぞ」

「ふ」



んーーと伸びをする。

気付けば僕は,飛行機の中だった。

回りを見渡すと,同じ様に起こされている同級生がちらほらと見える。



「ありがとう」



僕を起こしたのは,隣に座る敦だ。

寝起き一発目に見える景色が敦の顔なんて,控えめにいって最高。

口元を拭うと少しかぴついていて,見られてないかなと今度は最高な気分と反対に慌てた。

初めての飛行機。

景色や会話を楽しもうと思っていたのに,雲が見えた辺りでもうだめだった。

薬でも盛られたかのように急激な眠気に襲われて,僕は僕自身が気付かないままいつの間にか眠っていたらしい。



「よっっしゃー!!! ついた! 何して遊ぼうかな~ー」

「遊べないよ,三太。最初はバスガイドさんの話を聞きながら資料館,その後……」

「分かってるよ! 分かってるけど!」



空港に響き渡る三太を見て,クラスメートがくすくすと笑う。

僕も,仕方ないなと苦笑した。

バスはもう到着していて,とくに周辺を見ることも出来ないまま乗り込む。

座席の指定はなく,僕はきょろきょろと周りを見た。

スズは引き続き三太の隣に行くだろうし……

まず右に敦を見つけ,左には和寧を見つける。

右に行きたい,右にいきたい,けど。

ぱちりと,一瞬,敦と目があったような気がした。



「和寧!」



けれど多分気のせいだと,僕はぱたぱた走る。

リューはまだ和寧とそんなに仲がいいわけじゃないと思うから。

敦はリューに譲ろうと思った。

偉い,僕,えらい。

自分でいうのもなんだけど,少し前までは,そんな協調性は持ち得なかった。

僕に気づいた和寧がおーと片手をあげる。

その気安い笑顔に,僕はほっとした。

バスに乗り込むと,思った通りペアになったらしい敦とリューが僕たちの前の席に座る。

敦は振り返ったかと思うと,じっと僕の目を見た。



「な,なに? 敦」

「いや,さっき。いや,この間……」



さっき? この間?

どっち……



「お前らに聞きたいことが……」



お前……"ら"?

敦が視線を向けた先にいるのは,和寧。

僕がきょとんとしたまま和寧に目を向けると,そいつはにこりと笑った。



「なに? お菓子でも食べる?」



差し出されるポッキー。

そうじゃないと口を開けば,そのままずぶりと差し入れられる。



「ほら,敦とリューも」

「……おー」

「……どーも」



もっと明るくいこうよ……皆。

普段大して話さない僕でも,どうかと思うなこの空気は。

でも,お菓子を配り始めたお陰で敦が何をいいたかったのか聞ける雰囲気では無くなってしまった。

右は,左は,通りすぎだのは……とバスガイドさんの話を聞く。

皆それぞれ話してばかりでほとんどが聞いていないから,僕だけでもと僕は真剣に聞いていた。

長距離の間その女性は紙1つ見ることなく,ずっと歴史を語り続ける。

仕事にしたってすごいと思いながらも,バスの揺れや空調,飛行機の疲れもあって,僕はまた眠ってしまった。

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