悲劇なのか喜劇なのか どう思う? 探偵(?)

ゆらぎなぎ

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「おっのざっとちゃーん! 帰れるよーっ。チャリ取ってくるから門のとこで待っといてー」

 教室内の空気がざわわと揺れたのが確かに見えた気がしてしまった。ホームルーム終了五分経過後。まだ大半のメンバーが帰らずに残っている二年生のA組だ。
 くっそう、佐々木、何をしやがる。どうしてやること派手なんだ。

「小野里、おまえまさかっ」

 脅えた素振りで代表発言は、委員長の中尾だった。トモダチでしょーが、中尾あんたは。あんたがそんなんで私はどーするっ。

「違うわっ。まず紛れもなくそんなんじゃないから! 絶対に誤解は禁止なんだからねっ」

 びしぃッと吼えて、廊下へ駆け出す。もっと喋っておきたいけれど、言えば言うだけ煽るものだし。

 しばらくひやかされることは必至だな。どうせクラスで主役に立つなら、ホントの彼氏が欲しいっつーの。
 絶対にこんなんではなくだ。↓

「そんな嘘、よくつくよなー。頭の両サイドぶつけちゃってて、精密検査が必要だとか? その堂々っぷり、小野里ちゃんはさっすが修平先生の直伝だよね」

「あーそーかもね」

 私の返事は当然投げやり。昨日のその後の話を伝えたとこである。修平直伝だとかそんなこと、佐々木に言われちゃおしまいだけど、私だってそう思ってるから今回は反論の余地がアリマセン。

 ころころ転がす佐々木のチャリかごに、かばんを放り込めてそれは楽だ。が、しかし、下校を共にする必要はなく、学校でちょろりと話せればそれで良かったんだって。

 なのにこいつ、いつ行ってもいないばかりか、昼休みにやっと見つけたと思ったら、進路指導室に担当の先生に引きずり込まれているところだったという。常にお騒がせなくてはならない性質、少しは改善しないだろうか。

「けどそれ、今日にでもバレちゃうじゃん。退院、午後だよね」

「お昼ごはんまでいただいて。反則。そろそろ家に戻ってる頃だよ。石塚さんには異常がなかったとかなんとか言いつくろえると思うんだ。それも必要ないかも知れないけど」

 別に嘘だとバレてもどってことはない。その場はそりゃ気まずいだろけど、石塚さんと長く付き合うわけじゃーないんだし。

 だって頭にきてたんだってば、私はね。なんか自分のことばっかし言っているみたいに聞こえてしまった。修平の怪我に迷惑しているそんな感じ、私の捜査はどうなるの? そんな雰囲気に思えちゃって。

 あんな大げさな嘘をついてみたら祈られちゃったりしたもんだから(あ、そういや私は祈るの忘れてた)、悪かったとは思ってますとも、えぇちゃんと。

「それじゃ石塚さん怪しい説は消えたわけ。小野里ちゃんの中では」

「あれだけ心配しちゃうんだから、修平を殴ってはいないだろうなって。関係あるんだとしても、犯人ではないってことで落ち着かせとく。イマドキの若者に見えたってところを犯人は華奢なんだなと繋げて、もしかしたら本人なんじゃ、とまで疑っていたんだけど」

「そこまで」

「でも、変は変なんだよね。だって佐々木だったらどうする? 知ってる人が病院に運ばれたって小耳に挟んで、で、すぐ花買って行ってみる? 知ってるって言っても親戚でもなんでもなくて、本当に知人程度で、花なんてどころじゃない手術中とかだったらどうするのよ、だって。あの包装紙、駅前の花苑のだったよ? 院内の花屋じゃなくて」

「啓明堂では軽傷だとかまでは語ってなかったん? なんでも知ってるオヤジさんが詳細ばっちり知っててさ」
「あ。そうか。それなら真っ直ぐか。病院に駆けつけるってのとね、花を買う余裕とが変だよなと思って」

 啓明堂で修平の怪我の程度までを聞いていたのなら、ゆっくりな出現は不自然じゃない。

 疑いたいから、変なとこまで変にしちゃってたのかもしれない。犯人が他に見当たらないから登場人物の中でもっとも怪しい人に罪を押し付けようとしちゃっているだけなのかも。

 ドラマだったら事件の前にはすでにキャラは揃っているべきだけれど、これは現実だから伏兵の登場なんていくらだって可なわけだから、回りを歪ませてまで石塚さんを推薦しなくたっていいんだけど、いんだけど。

「それでも、ダイレクトにつながっているかはともかく、怪しいことは確かって思うよ。絢子ちゃんの言ってたことに影響受けてるってだけじゃなくて、やっぱりどこか怪しいんだよ、あの人は」

「それって小野里ちゃんの直感一本に頼ってるわけ?」
「なんか不満? 直感だけじゃ」

「いいえー。その石塚さんのことでんがな。調べときましたぜ、姉御」
「誰が姉御だ。て言うかビックリ。調べに行ったわけ? プロットはどしたの。書かなくていいんだ?」

「新しいものに手を出したらすべての力がそっちに移動してしまい、いよいよ今のが書けなくなる嫌ぁな確信があってさ。故あって手を出してない」

 故を先に解説しちゃってるけど。そして、意味がわからない。修平といいこれといい、物書きの言うことって抽象的でわかんないことが多いんだけど、一般人にわからないばかりを与えている状態、立場として良いわけがないんじゃないだろうか。

 佐々木の立ってる場所なんかどーでもいーとしたところで、修平の方はプロなんだからちゃんとしていて欲しいものだ。うむ。
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