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「手紙を、ですよね? 誰にですか?」
「こんなに見つからないのだから、きっと海に落ちたのだと思うの。藻屑なら、どんなにいいか。拾われて読まれたりしたら、どうしようかと、私。嫌な形で知ることになってしまうのなら、初めから自分で告げるべきだったのよ……」
虫のいい質問だったな、回答らしきものはナシ。あえてかわしたのか、話が滅裂状態なのかの判断は難しいけど。
私はかける言葉を見つけられずに黙ったままでいた。石塚さんは自分でぐんぐん、話をどこに引っ張っていくんだろう?
「二人の間では美しいものも、外から見たらおかしなものね、あなた、高校生よね」
「はい」
あ、これなら即答できますが。
「いい年ね」
「は……」
いい年、……って?
絶対違うと思いながらも、その言葉の別の意味が頭を過ぎる。自分こそホントにいい年の修平にしばしば、ジュリエットだの結婚当時のエリザベートだの
テリィと出会ったキャンディよりも年上なんだと言われ続けているせいかもしれない。そりゃ高校二年生にもなったら、少女系キャラより年上な確率も高いですけどもよ。
石塚さんの言ってる本当の意味は、私が羨ましいという『いい』なんだろう。
高校生。に、戻りたい? のだろうか。魔性が過ぎてピュアな時代にかえりたくなったってことかもしれない。中学生を見ているうちにそんな気持ちになったのだろうか。
単純なもので、絢子ちゃんの話を聞いてしまうと、私の目に石塚さんはすっかり魔性に映ってしまっているのだった。
それもどうかな、と自分に思う。嘘をつくわけのない人から入った情報だとしても、自ら吟味をすることは大切なのではないだろーか。見えているものを自己処理すること。多少は。
つまり、目前の石塚さんが可哀相に見えていることだとか――
「私はどうしたらいいかしら……。先生は動けるようになったらすぐに、また探してくれると言って下さったけれど……時間が空いてしまうわ……」
ぱちん。
人のせっかくの改心を――吹き飛ばしてくれちゃって、石塚さんッ。
「修平はしぱらく入院していますから、誰か他の人に依頼するとかした方かいいかと思います」
「しばらく入院……。先生は明日には家に戻れるっておっしゃっていたわ」
「本人にはそういうことになっているんです。今言ったら騒ぎ立てるから、今晩一晩の安静のために明日には帰れますって。明日検査の結果が出たところで、改めて状態を話すことにしたんです。なにしろ頭の中のことだから、慎重にいかないと」
「頭を、かするところを避けたからとおっしゃって……」
「そうはうまく避けれなかったみたいなんですよ。石塚さんにはかっこ悪くて言えなかったんじゃないのかな」
「当たったの? 当たってしまったの?」
おぉ? マジ?
「ここと」
圧してくる勢いに少々怯みながら、私は頭の右と、そして左を指差した。
「ここです。倒れたときに道路にもぶつけているから。七十二時間は設備のあるところで様子観察をして、って言われています。明日は偉い先生が東京から来るんで診てもらえるそうなんですよ。なんでもなければいいんですけど」
「だいじょうぶなの? 先生は、この後、大丈夫なのかしら」
「今のところは何もわからないんです。とにかく明日にならないと」
ぎゅう、と両手を握られた。(真っ白な手に清楚なマニキュアで完璧)
真剣そのものの眼差しが、近すぎる近くに現れる。(上品にして繊細にして達人なアイライン)
「先生の無事を祈るわ。あなたも本気でお祈りをして。神様に。お願いよ」
言葉よりもビジュアル面が大きい。迫力に圧倒されて、気がつけば私は。
自動ドアがぶいんと閉まるのを見ていた。ぴんと背中真っ直ぐに、細い姿が去っていく。ドラマのワンシーンに使えそうな、まさしく絵になる(画? になる)その姿。
本気でお祈り? それ、どうやって。
書いちゃいけなかった手紙。眠れなかった夜。血迷って、て。
もしもし? 石塚さん?
話すなら話す。話さないなら口にしない。
なんでそう。全部ぼかして思わせぶりなんだ。こら。
美人だから、ミステリアス。
――。
その場で私は頭を抱えて座り込んでみた。ついた嘘にも反省したけど、幅を占めていたのはコレ。
あぁ。なんでこんな修平のような発想を。
「こんなに見つからないのだから、きっと海に落ちたのだと思うの。藻屑なら、どんなにいいか。拾われて読まれたりしたら、どうしようかと、私。嫌な形で知ることになってしまうのなら、初めから自分で告げるべきだったのよ……」
虫のいい質問だったな、回答らしきものはナシ。あえてかわしたのか、話が滅裂状態なのかの判断は難しいけど。
私はかける言葉を見つけられずに黙ったままでいた。石塚さんは自分でぐんぐん、話をどこに引っ張っていくんだろう?
「二人の間では美しいものも、外から見たらおかしなものね、あなた、高校生よね」
「はい」
あ、これなら即答できますが。
「いい年ね」
「は……」
いい年、……って?
絶対違うと思いながらも、その言葉の別の意味が頭を過ぎる。自分こそホントにいい年の修平にしばしば、ジュリエットだの結婚当時のエリザベートだの
テリィと出会ったキャンディよりも年上なんだと言われ続けているせいかもしれない。そりゃ高校二年生にもなったら、少女系キャラより年上な確率も高いですけどもよ。
石塚さんの言ってる本当の意味は、私が羨ましいという『いい』なんだろう。
高校生。に、戻りたい? のだろうか。魔性が過ぎてピュアな時代にかえりたくなったってことかもしれない。中学生を見ているうちにそんな気持ちになったのだろうか。
単純なもので、絢子ちゃんの話を聞いてしまうと、私の目に石塚さんはすっかり魔性に映ってしまっているのだった。
それもどうかな、と自分に思う。嘘をつくわけのない人から入った情報だとしても、自ら吟味をすることは大切なのではないだろーか。見えているものを自己処理すること。多少は。
つまり、目前の石塚さんが可哀相に見えていることだとか――
「私はどうしたらいいかしら……。先生は動けるようになったらすぐに、また探してくれると言って下さったけれど……時間が空いてしまうわ……」
ぱちん。
人のせっかくの改心を――吹き飛ばしてくれちゃって、石塚さんッ。
「修平はしぱらく入院していますから、誰か他の人に依頼するとかした方かいいかと思います」
「しばらく入院……。先生は明日には家に戻れるっておっしゃっていたわ」
「本人にはそういうことになっているんです。今言ったら騒ぎ立てるから、今晩一晩の安静のために明日には帰れますって。明日検査の結果が出たところで、改めて状態を話すことにしたんです。なにしろ頭の中のことだから、慎重にいかないと」
「頭を、かするところを避けたからとおっしゃって……」
「そうはうまく避けれなかったみたいなんですよ。石塚さんにはかっこ悪くて言えなかったんじゃないのかな」
「当たったの? 当たってしまったの?」
おぉ? マジ?
「ここと」
圧してくる勢いに少々怯みながら、私は頭の右と、そして左を指差した。
「ここです。倒れたときに道路にもぶつけているから。七十二時間は設備のあるところで様子観察をして、って言われています。明日は偉い先生が東京から来るんで診てもらえるそうなんですよ。なんでもなければいいんですけど」
「だいじょうぶなの? 先生は、この後、大丈夫なのかしら」
「今のところは何もわからないんです。とにかく明日にならないと」
ぎゅう、と両手を握られた。(真っ白な手に清楚なマニキュアで完璧)
真剣そのものの眼差しが、近すぎる近くに現れる。(上品にして繊細にして達人なアイライン)
「先生の無事を祈るわ。あなたも本気でお祈りをして。神様に。お願いよ」
言葉よりもビジュアル面が大きい。迫力に圧倒されて、気がつけば私は。
自動ドアがぶいんと閉まるのを見ていた。ぴんと背中真っ直ぐに、細い姿が去っていく。ドラマのワンシーンに使えそうな、まさしく絵になる(画? になる)その姿。
本気でお祈り? それ、どうやって。
書いちゃいけなかった手紙。眠れなかった夜。血迷って、て。
もしもし? 石塚さん?
話すなら話す。話さないなら口にしない。
なんでそう。全部ぼかして思わせぶりなんだ。こら。
美人だから、ミステリアス。
――。
その場で私は頭を抱えて座り込んでみた。ついた嘘にも反省したけど、幅を占めていたのはコレ。
あぁ。なんでこんな修平のような発想を。
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