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ダンジョン調査 ▶29話
#4 ジタバタ足掻いてるのは、置いていかれたくないから
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ザーラさんに相談にのってもらった直後から、急ピッチでダンジョン調査の準備を進めた。
先ずは、ロカールに一軒しかない魔法薬のお店に駆け込み、店頭に並ぶ清浄薬を全て─といっても、一ダースしか無かったけど─買い占めた。それを、ザーラさんの発案で、強力保存魔法付きの瓶へと移し替えていった。これで、多分、理論上は、少しは、日持ちがするようになった、はず─
翌日も、午前中をパーティでの話し合いと準備に費やして、午後からはザーラさんの家での作業に没頭した。一ダースの詰め替えが終わった時点で、追加の魔法薬を五本入手することにも成功していたので、確保できた清浄薬は全部で十七本。
(…後は、水魔法で身体を拭くくらいは出来るから、清浄薬と合わせれば何とか…)
何とか、二週間は、多分、どうにかなるはず、そう信じたい─
そして、いよいよ明日、ダンジョン調査を開始するというタイミングでの、最後の話し合い。兄から、「大事な話がある」と言われて─
「…考えたんだけどさ。やっぱり、明日の調査は日帰りにしようと思うんだよね。」
「…どうして?」
直前での計画変更、その真意を尋ねれば、
「んー、まぁ、先ずは、ギルドに渡された簡易ポータルの性能チェックしたいってのが一点。地下一階に設置した後で、実際に一度、地上に帰還出来るか確かめようと思ってる。」
「なるほど…」
「もう一点は、俺ら自身の様子見、かな?」
「?」
「エルやルキはともかく、俺とセリはダンジョン潜るの初めてだからさ。どんなもんなのか、ちょっと未知な部分が大き過ぎるかなーって。」
「…」
「んで、一回潜ってみてから、実際、ひと月半?潜れそうかどうかを判断する。俺らじゃ手に負えないレベルだったら、白旗上げるか協力依頼出すか、その時、対応考える予定。…イグナーツさんにも、そういう風に話とおしてあるからさ。」
「それは…」
嫌な予感。だって、それは、多分─
「…私のせい?」
兄達、それから、一応、私も。戦闘力という意味での実力は、全く問題ないはず。それは、冒険者ランク的にも、イグナーツさんが「可能」と判断したことからも、間違いないと思う。
(…だけど、兄さんは、ここ数日の私のドタバタっぷり、見てるから…)
見てるだけでなく、昨夜は直接「大丈夫か?」と確認までされた。だから、きっと─
「いや、別に、セリのせいじゃないから。ただ、ふっつーに考えてさ、洞窟に一ヶ月以上も潜るのとか、ヤバくない?しんどくない?」
「…」
「冷静に考えて、そうなったの。だから、セリのせいとかじゃなく、俺が無理って判断したら、その時点で何らかの対応を考える。…あと、みんなも。無理って思ったら、即行、手ぇ上げてね?」
兄の緩い発言に、エルとルキが苦笑して、でもしょうがないって頷いてる。
(…頑張ろう。)
兄は、あー言ってくれたけど、それでも、気遣ってもらったのは私だ。だから、もう弱音は吐かない。最後までやり通す。
そう決意したところで、
「…あのさ、いっこ、いいか?」
ルキの声。その目は、こちらを向いていて─?
「…協力依頼が有りなら、アイツ、…ザーラをさ、臨時メンバーで入れるってのはどうだ?」
「…ザーラさんを?」
ルキの発言に首を傾げる。ルキの視線はこちらを窺ったまま─
「セリが…、ザーラが居た方がやりやすい、安心だってんなら、アイツを入れたがいいんじゃねぇかと思ってさ。」
「…」
「…セリは、ザーラが居た方がいいんだろ?」
「それは…」
自分のことだけを考えれば、確かにそう。でも、だからと言って、ザーラさんを自分と同じ苦境に立たせるわけにはいかない。
(ダンジョン入るのは、転移陣が完成してからって言ってたし…)
「…気にしてんのか?」
「?」
「アレだろ?俺が前に言った、男だけのパーティの方が気楽っつったやつ。セリは、アレ気にしてんじゃねーの?」
「え?いえ、それは…」
「あん時も、すっげぇ微妙な顔してたもんな。おまけに、すげぇ凹んでたし。…悪かったな。」
「え?あの…」
「俺、何も考えずに言ってたからさ。ひょっとして、あん時から、ザーラ入れるつもりだった?」
「いえ、それは無い、ですけど…」
どうしよう─
ザーラさんのことはルキの勘違い。完全なる思い込み、なのに、
(…凄く、嬉しい。)
あの時のことを、ルキが覚えていてくれた。私が落ち込んでいたことに気づいて、それを、ずっと、覚えて─
「…まぁ、違うなら、いんだけど。でも、俺の方はそういうことだからな?俺のことは気にしねぇで、セリのやりやすいようにやろうぜっていう話で…」
先ずは、ロカールに一軒しかない魔法薬のお店に駆け込み、店頭に並ぶ清浄薬を全て─といっても、一ダースしか無かったけど─買い占めた。それを、ザーラさんの発案で、強力保存魔法付きの瓶へと移し替えていった。これで、多分、理論上は、少しは、日持ちがするようになった、はず─
翌日も、午前中をパーティでの話し合いと準備に費やして、午後からはザーラさんの家での作業に没頭した。一ダースの詰め替えが終わった時点で、追加の魔法薬を五本入手することにも成功していたので、確保できた清浄薬は全部で十七本。
(…後は、水魔法で身体を拭くくらいは出来るから、清浄薬と合わせれば何とか…)
何とか、二週間は、多分、どうにかなるはず、そう信じたい─
そして、いよいよ明日、ダンジョン調査を開始するというタイミングでの、最後の話し合い。兄から、「大事な話がある」と言われて─
「…考えたんだけどさ。やっぱり、明日の調査は日帰りにしようと思うんだよね。」
「…どうして?」
直前での計画変更、その真意を尋ねれば、
「んー、まぁ、先ずは、ギルドに渡された簡易ポータルの性能チェックしたいってのが一点。地下一階に設置した後で、実際に一度、地上に帰還出来るか確かめようと思ってる。」
「なるほど…」
「もう一点は、俺ら自身の様子見、かな?」
「?」
「エルやルキはともかく、俺とセリはダンジョン潜るの初めてだからさ。どんなもんなのか、ちょっと未知な部分が大き過ぎるかなーって。」
「…」
「んで、一回潜ってみてから、実際、ひと月半?潜れそうかどうかを判断する。俺らじゃ手に負えないレベルだったら、白旗上げるか協力依頼出すか、その時、対応考える予定。…イグナーツさんにも、そういう風に話とおしてあるからさ。」
「それは…」
嫌な予感。だって、それは、多分─
「…私のせい?」
兄達、それから、一応、私も。戦闘力という意味での実力は、全く問題ないはず。それは、冒険者ランク的にも、イグナーツさんが「可能」と判断したことからも、間違いないと思う。
(…だけど、兄さんは、ここ数日の私のドタバタっぷり、見てるから…)
見てるだけでなく、昨夜は直接「大丈夫か?」と確認までされた。だから、きっと─
「いや、別に、セリのせいじゃないから。ただ、ふっつーに考えてさ、洞窟に一ヶ月以上も潜るのとか、ヤバくない?しんどくない?」
「…」
「冷静に考えて、そうなったの。だから、セリのせいとかじゃなく、俺が無理って判断したら、その時点で何らかの対応を考える。…あと、みんなも。無理って思ったら、即行、手ぇ上げてね?」
兄の緩い発言に、エルとルキが苦笑して、でもしょうがないって頷いてる。
(…頑張ろう。)
兄は、あー言ってくれたけど、それでも、気遣ってもらったのは私だ。だから、もう弱音は吐かない。最後までやり通す。
そう決意したところで、
「…あのさ、いっこ、いいか?」
ルキの声。その目は、こちらを向いていて─?
「…協力依頼が有りなら、アイツ、…ザーラをさ、臨時メンバーで入れるってのはどうだ?」
「…ザーラさんを?」
ルキの発言に首を傾げる。ルキの視線はこちらを窺ったまま─
「セリが…、ザーラが居た方がやりやすい、安心だってんなら、アイツを入れたがいいんじゃねぇかと思ってさ。」
「…」
「…セリは、ザーラが居た方がいいんだろ?」
「それは…」
自分のことだけを考えれば、確かにそう。でも、だからと言って、ザーラさんを自分と同じ苦境に立たせるわけにはいかない。
(ダンジョン入るのは、転移陣が完成してからって言ってたし…)
「…気にしてんのか?」
「?」
「アレだろ?俺が前に言った、男だけのパーティの方が気楽っつったやつ。セリは、アレ気にしてんじゃねーの?」
「え?いえ、それは…」
「あん時も、すっげぇ微妙な顔してたもんな。おまけに、すげぇ凹んでたし。…悪かったな。」
「え?あの…」
「俺、何も考えずに言ってたからさ。ひょっとして、あん時から、ザーラ入れるつもりだった?」
「いえ、それは無い、ですけど…」
どうしよう─
ザーラさんのことはルキの勘違い。完全なる思い込み、なのに、
(…凄く、嬉しい。)
あの時のことを、ルキが覚えていてくれた。私が落ち込んでいたことに気づいて、それを、ずっと、覚えて─
「…まぁ、違うなら、いんだけど。でも、俺の方はそういうことだからな?俺のことは気にしねぇで、セリのやりやすいようにやろうぜっていう話で…」
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