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後編 タワー編
4-4.
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4-4.
うつ向いたアイリー。静まり返った空間に、レオンの重々しい声が響いた。
「アイリー、今回のお前の行動は、ギルドリーダーとして看過出来る範囲を越えている」
「…」
「街に戻ったら、改めて話をする。だが、今は、」
レオンが、彼を取り囲むギルドメンバーを見回す。
「…何とか、50階層まではたどり着かないとな」
「無茶ですよ!リーダー!」
「カイとカイを抱えるのに一人、二人分の戦力が減る」
「後は、体力はともかく、魔力が。私もモリーも、ほとんど残っていません」
「まあな。けど、まあ、何とかするしかないだろ?」
そのどこか飄々としたレオンの雰囲気に、さっきまで緊迫していたメンバー達からも、諦めのため息がこぼれる。
「全く、あんたも大概無茶言ってますからね?リーダー」
「そうか?俺らなら、まあ、出来るだろ」
「…やるしか、無いですもんね」
座り込んでいたメンバー達が立ち上がり出す。その顔に先ほどの悲愴は見当たらない。
「…」
そんな彼らを見上げて、込み上げた思いがあったから、
―万物創造
思いっきりもっていかれた魔力の代わりに、掌に現れた硬質な感触が二つ。それを、魔法使いらしきメンバーの一人に差し出した。
「…あの、これ使って」
「え?」
渡したのは、小さな小瓶。中で、蒼く発光する液体が揺れている。
「!?な!これ!?」
「モリー?」
受け取った女性の叫びに、隣の男が反応する。彼女の手の内にあるものを認めて、
「『魔力ポーション』!?」
「何だと!?」
「うそっ!?」
男の声に、今度は他のメンバーまでもが反応した。
「あんた、これをどこで!?ってか、こんなもん貰っていいのか!?」
「…まあ」
「いや!助かる、けど!しかし、」
葛藤する男の代わりに、近づいてきたレオン。その眉根には、思いっきり深いシワが刻まれている。
「ミア、本当に貰っても構わんのか?」
「…うん」
「すまん、正直、とても助かる」
頭を下げるレオンに首を振った。
「ありがとな。今度、礼をさせてくれ、街に戻ったら、」
「…気にしないで、早くカイを連れて行って」
「…そうだな。じゃあな、下でお前らの帰りを待ってるからな」
「…」
その言葉に、ただ頷いた。
―後は
カイを担ぎ上げようとする男に近づく。
「…途中で、切れちゃうとは思うけど」
「!?」
男にかけたのは、なけなしの魔力を使った筋力増強。戦闘ではなく人の運搬なら、ブーストに振り回されることもないだろうから。
「ありがとな。嬢ちゃん」
「…」
男のお礼にも頷いて返す。正直、魔力切れを起こしそうなギリギリなところ。早く行ってもらいたい。そう思って顔を上げたところで、目が合った。
「!?」
「…」
仲間に背負われた力ない体。うっすらと開かれた琥珀色の輝き。いつもより、ずっと弱々しくて、だけど、それでも、綺麗―
「…」
「…カイ?」
彼の口元が動いた。
―ありがとう
「!?」
小さく、だけど確かにそう聞こえた彼の声。
いつから―
いつから、目が覚めていたのだろう。何に対するありがとう?ああ、だけど、
「…うん」
頷けば、それを見届けた琥珀の瞳が閉じられた。それ以上は言葉が見つけられず、歩き出す男の背に揺られるカイを見送る―
レオンを先頭に出発した彼らが、階段の向こうに消えていったのを最後まで確認して、
―さて
あえて、振り向かないようにしていた背後。去り際、『ガイラスの夜明け』のメンバーの何人かも、心配そうにチラチラと窺っていたそちらを振り向いた。
―メチャクチャ、恐い
そこに、仁王立ちする鬼が立っていた。
「…」
「…ごめんね、ブレン」
何も言わない彼に頭を下げながら、うつ向いた顔で、我慢出来ずにこっそり笑う。
これだけ、怒って、気に入らなくて、だけど、私がすることを、黙って見ていたブレン。
―私、メチャクチャ甘やかされてる
抑えきれなかった口元がだらしなく弛むのを自覚して、そのまま意識を手放した。
うつ向いたアイリー。静まり返った空間に、レオンの重々しい声が響いた。
「アイリー、今回のお前の行動は、ギルドリーダーとして看過出来る範囲を越えている」
「…」
「街に戻ったら、改めて話をする。だが、今は、」
レオンが、彼を取り囲むギルドメンバーを見回す。
「…何とか、50階層まではたどり着かないとな」
「無茶ですよ!リーダー!」
「カイとカイを抱えるのに一人、二人分の戦力が減る」
「後は、体力はともかく、魔力が。私もモリーも、ほとんど残っていません」
「まあな。けど、まあ、何とかするしかないだろ?」
そのどこか飄々としたレオンの雰囲気に、さっきまで緊迫していたメンバー達からも、諦めのため息がこぼれる。
「全く、あんたも大概無茶言ってますからね?リーダー」
「そうか?俺らなら、まあ、出来るだろ」
「…やるしか、無いですもんね」
座り込んでいたメンバー達が立ち上がり出す。その顔に先ほどの悲愴は見当たらない。
「…」
そんな彼らを見上げて、込み上げた思いがあったから、
―万物創造
思いっきりもっていかれた魔力の代わりに、掌に現れた硬質な感触が二つ。それを、魔法使いらしきメンバーの一人に差し出した。
「…あの、これ使って」
「え?」
渡したのは、小さな小瓶。中で、蒼く発光する液体が揺れている。
「!?な!これ!?」
「モリー?」
受け取った女性の叫びに、隣の男が反応する。彼女の手の内にあるものを認めて、
「『魔力ポーション』!?」
「何だと!?」
「うそっ!?」
男の声に、今度は他のメンバーまでもが反応した。
「あんた、これをどこで!?ってか、こんなもん貰っていいのか!?」
「…まあ」
「いや!助かる、けど!しかし、」
葛藤する男の代わりに、近づいてきたレオン。その眉根には、思いっきり深いシワが刻まれている。
「ミア、本当に貰っても構わんのか?」
「…うん」
「すまん、正直、とても助かる」
頭を下げるレオンに首を振った。
「ありがとな。今度、礼をさせてくれ、街に戻ったら、」
「…気にしないで、早くカイを連れて行って」
「…そうだな。じゃあな、下でお前らの帰りを待ってるからな」
「…」
その言葉に、ただ頷いた。
―後は
カイを担ぎ上げようとする男に近づく。
「…途中で、切れちゃうとは思うけど」
「!?」
男にかけたのは、なけなしの魔力を使った筋力増強。戦闘ではなく人の運搬なら、ブーストに振り回されることもないだろうから。
「ありがとな。嬢ちゃん」
「…」
男のお礼にも頷いて返す。正直、魔力切れを起こしそうなギリギリなところ。早く行ってもらいたい。そう思って顔を上げたところで、目が合った。
「!?」
「…」
仲間に背負われた力ない体。うっすらと開かれた琥珀色の輝き。いつもより、ずっと弱々しくて、だけど、それでも、綺麗―
「…」
「…カイ?」
彼の口元が動いた。
―ありがとう
「!?」
小さく、だけど確かにそう聞こえた彼の声。
いつから―
いつから、目が覚めていたのだろう。何に対するありがとう?ああ、だけど、
「…うん」
頷けば、それを見届けた琥珀の瞳が閉じられた。それ以上は言葉が見つけられず、歩き出す男の背に揺られるカイを見送る―
レオンを先頭に出発した彼らが、階段の向こうに消えていったのを最後まで確認して、
―さて
あえて、振り向かないようにしていた背後。去り際、『ガイラスの夜明け』のメンバーの何人かも、心配そうにチラチラと窺っていたそちらを振り向いた。
―メチャクチャ、恐い
そこに、仁王立ちする鬼が立っていた。
「…」
「…ごめんね、ブレン」
何も言わない彼に頭を下げながら、うつ向いた顔で、我慢出来ずにこっそり笑う。
これだけ、怒って、気に入らなくて、だけど、私がすることを、黙って見ていたブレン。
―私、メチャクチャ甘やかされてる
抑えきれなかった口元がだらしなく弛むのを自覚して、そのまま意識を手放した。
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