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第五章 近づいたり、離れたり
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結局、その後も秀とは会えないまま秋の連休を迎えた。
そんな中、『俺は帰るけど、姉ちゃんは連休帰ってくんの?』という幸助の分かりやすい態度に免じて、チサと一緒に実家に帰省することになった。
ガッチガチになりながらも、『参考書を探すのを手伝って欲しい』という口実で何とかチサをデートに誘うことに成功した幸助。右手右足が揃って前に出てそうな弟とチサを見送って、自分も遊びに出掛けることにした。私の場合、一人で家にこもっていてもロクなことにならないから。
電車に乗って大きな駅まで出てきたところで、以前、美歌と入ったカフェを思い出した。コーヒーとミルクレープの美味しかったお店にもう一度行ってみようと足を運んだのだが、生憎、お店はお休み。『都合により、しばらくお休みします』の貼り紙がしてあった。
「…無念」
せっかくここまで歩いたのに。けどまあ、開いていないものは仕方ない。諦めて他を探すかと顔を上げたところで、視界に飛び込んで来た人物に驚いた。いや、驚愕した。正確にはその人物にではなく、彼女が押している、
「あれ?明莉じゃん。へー、こんなとこで会うなんてびっくり。元気してた?」
「…」
「何?シカト?」
相手の眉寝にしわが寄る。
「う、久しぶり、結莉愛。えーっと、そのー、おめでとう?」
「あー、さんきゅー」
そう言って、彼女の視線が下を向く。彼女の押しているモノ、ベビーカーの中、スヤスヤと眠る赤ちゃんに向かって、結莉愛が笑った。
「可愛いっしょ?」
「うん」
両手をグーにして眠る赤ちゃんは、確かに可愛い。ムチムチしている。丸い。可愛い。
「琥珀って言うの。今、三ヶ月なんだ」
「…さん」
思わず計算してしまった。厳密な計算方法はわからないけれど、えっと、それは、つまり―
「高校卒業する前に妊娠しちゃってさあ。まあ、何とか卒業は出来たから良かったけど。あん時はさすがに焦った」
「…」
高校在学中。高校卒業間近に、結莉愛達が路上で修羅場を迎えていたことは覚えている。
「…てことは、琥珀ちゃんは来叶、の?」
「まさか!違う違う。今の旦那の子だよ」
「…」
―どういうことだってばよ
「来叶と付き合っててもさあ、アイツ我が儘だっから、いっぱい泣かされてさ。あの美歌って女のこともそうだけど、それ以前にも似たようなことが何度かあったんだよね」
聞きながら、本当に結莉愛と来叶は付き合っていたんだなと、今さらながらに実感する。
「それで、バイト先の先輩、今の旦那に相談とかしてるうちに、旦那の優しさにひかれちゃったっていうか」
照れ臭そうにおっしゃってますが、その間、来叶とも付き合っていたってことだよね?
「それで、子どもも出来ちゃったし、高校卒業と同時に結婚したってわけ」
「…おめでとう」
じゃあ、なんだ。高校卒業間近に美歌と来叶を取り合ってたのは。あれは一体何だったんだ。理解が追い付かないけど、関わりがなければ、これ以上突っ込む必要は無いわけだ。うんうん。
「そう言えば、明莉、あの女のこと聞いた?知ってる?」
「美歌のこと?ううん、特に何も」
来叶と別れたという話は来叶自身の口から聞いたけれど、それを今、ここで言うつもりはない。
「あいつ、不倫して、相手の奥さんに訴えられたんだよ」
「!?」
ほんと、何なんだよ、もぉ―
結局、その後も秀とは会えないまま秋の連休を迎えた。
そんな中、『俺は帰るけど、姉ちゃんは連休帰ってくんの?』という幸助の分かりやすい態度に免じて、チサと一緒に実家に帰省することになった。
ガッチガチになりながらも、『参考書を探すのを手伝って欲しい』という口実で何とかチサをデートに誘うことに成功した幸助。右手右足が揃って前に出てそうな弟とチサを見送って、自分も遊びに出掛けることにした。私の場合、一人で家にこもっていてもロクなことにならないから。
電車に乗って大きな駅まで出てきたところで、以前、美歌と入ったカフェを思い出した。コーヒーとミルクレープの美味しかったお店にもう一度行ってみようと足を運んだのだが、生憎、お店はお休み。『都合により、しばらくお休みします』の貼り紙がしてあった。
「…無念」
せっかくここまで歩いたのに。けどまあ、開いていないものは仕方ない。諦めて他を探すかと顔を上げたところで、視界に飛び込んで来た人物に驚いた。いや、驚愕した。正確にはその人物にではなく、彼女が押している、
「あれ?明莉じゃん。へー、こんなとこで会うなんてびっくり。元気してた?」
「…」
「何?シカト?」
相手の眉寝にしわが寄る。
「う、久しぶり、結莉愛。えーっと、そのー、おめでとう?」
「あー、さんきゅー」
そう言って、彼女の視線が下を向く。彼女の押しているモノ、ベビーカーの中、スヤスヤと眠る赤ちゃんに向かって、結莉愛が笑った。
「可愛いっしょ?」
「うん」
両手をグーにして眠る赤ちゃんは、確かに可愛い。ムチムチしている。丸い。可愛い。
「琥珀って言うの。今、三ヶ月なんだ」
「…さん」
思わず計算してしまった。厳密な計算方法はわからないけれど、えっと、それは、つまり―
「高校卒業する前に妊娠しちゃってさあ。まあ、何とか卒業は出来たから良かったけど。あん時はさすがに焦った」
「…」
高校在学中。高校卒業間近に、結莉愛達が路上で修羅場を迎えていたことは覚えている。
「…てことは、琥珀ちゃんは来叶、の?」
「まさか!違う違う。今の旦那の子だよ」
「…」
―どういうことだってばよ
「来叶と付き合っててもさあ、アイツ我が儘だっから、いっぱい泣かされてさ。あの美歌って女のこともそうだけど、それ以前にも似たようなことが何度かあったんだよね」
聞きながら、本当に結莉愛と来叶は付き合っていたんだなと、今さらながらに実感する。
「それで、バイト先の先輩、今の旦那に相談とかしてるうちに、旦那の優しさにひかれちゃったっていうか」
照れ臭そうにおっしゃってますが、その間、来叶とも付き合っていたってことだよね?
「それで、子どもも出来ちゃったし、高校卒業と同時に結婚したってわけ」
「…おめでとう」
じゃあ、なんだ。高校卒業間近に美歌と来叶を取り合ってたのは。あれは一体何だったんだ。理解が追い付かないけど、関わりがなければ、これ以上突っ込む必要は無いわけだ。うんうん。
「そう言えば、明莉、あの女のこと聞いた?知ってる?」
「美歌のこと?ううん、特に何も」
来叶と別れたという話は来叶自身の口から聞いたけれど、それを今、ここで言うつもりはない。
「あいつ、不倫して、相手の奥さんに訴えられたんだよ」
「!?」
ほんと、何なんだよ、もぉ―
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