20 / 37
本編
19.卑怯だと思う
しおりを挟む
(…でも、実際、お金、逃亡資金は要るよね。)
ということで、防音効果の全くなかった上掛けとエリアスの腕の中から抜け出して、ベッドを下りる。
「…ステラ?」
「うん、あの、逃亡資金、稼ごうかなーと…」
「?」
オフィスワークの強み、外に出ることなく仕事が出来る。荷物の中から、DIY用の巻紙と持ち運び用の羽ペンを取り出した。
「スクロールをいくつか作って売れば、少しは稼ぎになるはず。」
「ここで作るのか?」
「うん。言ったでしょ?紙とペンさえあれば、書けちゃうって。…ごめん、ちょっとの間、集中するね。」
「分かった…」
エリアスの返事を聞きながら、備え付けの小さなテーブルの上に巻紙を広げていく。
(作るなら『灯り』が無難、かな?)
灯り用のスクロールなら、王都から離れた場所でも日常的に使われているため需要がある。
(それに、『灯り』なら、十本くらいはイケるから。)
魔力量の問題で、残念ながら大量生産というわけにはいかないけれど、それでも、四、五万の稼ぎにはなるはず。
(…よし。)
気合を入れて、ペンを取る。集中して、一気に書き上げた『灯り』のスクロールは十枚、それに魔力を流し込んでいきながら気が付いた。
(あれ…?)
スクロール十枚に魔力を流し込んだ後でも余力がある。試しに、もう十枚スクロールを書いて魔力を流し込んでみれば、ちょうど十枚目を流し込み終わったところで、魔力が尽きるのを感じた。
(…魔力が増えてる、ってことはない、よね…?)
成人後も魔力量が増えるという話は聞いたことがない。微増することがあったとしても、単純に考えて二倍になる可能性はほぼゼロ。
(…何で?)
理由が分からずモヤっとはしたけれど、二倍に増えたところでスクロール二十枚分では誇れるほどの魔力量ではないので、その問題は放置することにした。
「エリアス、あの、これ、魔道具屋さんとかに持ち込みしようと思うんだけど…」
「『灯り』か?」
「うん、そう。なるべく人目につかないようにしたいから、私一人で、」
「駄目だ。」
「…」
先ほどとは逆の状況、こちらの作業を邪魔しないためか、離れた距離に立っていたエリアスが急に距離を詰めてきて、
「手配されるなら、ステラ、お前の方だと言っただろう?」
「…けど、でも、エリアスの方が目立つし、私なら没個性だし、」
「駄目だ。」
「…」
自分の容姿に自覚がないのか。こんなイケメンがその辺フラフラしてたら目立ちまくりだと思うのに、エリアスは怖い顔をして譲ろうとしない。
にらみ合うこと暫し、
「…ステラ…」
「っ!?」
エリアスが両肩に手を置いて、耳元、唇が触れそうな距離まで顔を寄せ─
「…頼む。」
「っ!」
「…俺に行かせてくれ、な…?」
「っ!?」
「…お願いだ、イッてもいいだろ…?」
「っ!?分かりました!お願いします!!」
緊急退避、両手に掴んでいたスクロールの束をエリアスに押し付けるようにして、距離を取った。
「…ありがとう。」
「っ!!」
スクロールの束を受け取ったエリアスが、楽しそうに?嬉しそうに?笑って、
「直ぐ戻る。…大人しく待ってろ。」
「…」
言って、颯爽と扉の向こうに消えていったエリアスを唖然と見送った。
(何で、何で、あんな…!)
今、絶対、顔が赤い。心臓、バクバク言ってるし、うぎゃあって身もだえしたいし、とにかく─
(卑猥!卑猥に過ぎる!!吐息多めの『お願い』はズルいと思う!!)
ということで、防音効果の全くなかった上掛けとエリアスの腕の中から抜け出して、ベッドを下りる。
「…ステラ?」
「うん、あの、逃亡資金、稼ごうかなーと…」
「?」
オフィスワークの強み、外に出ることなく仕事が出来る。荷物の中から、DIY用の巻紙と持ち運び用の羽ペンを取り出した。
「スクロールをいくつか作って売れば、少しは稼ぎになるはず。」
「ここで作るのか?」
「うん。言ったでしょ?紙とペンさえあれば、書けちゃうって。…ごめん、ちょっとの間、集中するね。」
「分かった…」
エリアスの返事を聞きながら、備え付けの小さなテーブルの上に巻紙を広げていく。
(作るなら『灯り』が無難、かな?)
灯り用のスクロールなら、王都から離れた場所でも日常的に使われているため需要がある。
(それに、『灯り』なら、十本くらいはイケるから。)
魔力量の問題で、残念ながら大量生産というわけにはいかないけれど、それでも、四、五万の稼ぎにはなるはず。
(…よし。)
気合を入れて、ペンを取る。集中して、一気に書き上げた『灯り』のスクロールは十枚、それに魔力を流し込んでいきながら気が付いた。
(あれ…?)
スクロール十枚に魔力を流し込んだ後でも余力がある。試しに、もう十枚スクロールを書いて魔力を流し込んでみれば、ちょうど十枚目を流し込み終わったところで、魔力が尽きるのを感じた。
(…魔力が増えてる、ってことはない、よね…?)
成人後も魔力量が増えるという話は聞いたことがない。微増することがあったとしても、単純に考えて二倍になる可能性はほぼゼロ。
(…何で?)
理由が分からずモヤっとはしたけれど、二倍に増えたところでスクロール二十枚分では誇れるほどの魔力量ではないので、その問題は放置することにした。
「エリアス、あの、これ、魔道具屋さんとかに持ち込みしようと思うんだけど…」
「『灯り』か?」
「うん、そう。なるべく人目につかないようにしたいから、私一人で、」
「駄目だ。」
「…」
先ほどとは逆の状況、こちらの作業を邪魔しないためか、離れた距離に立っていたエリアスが急に距離を詰めてきて、
「手配されるなら、ステラ、お前の方だと言っただろう?」
「…けど、でも、エリアスの方が目立つし、私なら没個性だし、」
「駄目だ。」
「…」
自分の容姿に自覚がないのか。こんなイケメンがその辺フラフラしてたら目立ちまくりだと思うのに、エリアスは怖い顔をして譲ろうとしない。
にらみ合うこと暫し、
「…ステラ…」
「っ!?」
エリアスが両肩に手を置いて、耳元、唇が触れそうな距離まで顔を寄せ─
「…頼む。」
「っ!」
「…俺に行かせてくれ、な…?」
「っ!?」
「…お願いだ、イッてもいいだろ…?」
「っ!?分かりました!お願いします!!」
緊急退避、両手に掴んでいたスクロールの束をエリアスに押し付けるようにして、距離を取った。
「…ありがとう。」
「っ!!」
スクロールの束を受け取ったエリアスが、楽しそうに?嬉しそうに?笑って、
「直ぐ戻る。…大人しく待ってろ。」
「…」
言って、颯爽と扉の向こうに消えていったエリアスを唖然と見送った。
(何で、何で、あんな…!)
今、絶対、顔が赤い。心臓、バクバク言ってるし、うぎゃあって身もだえしたいし、とにかく─
(卑猥!卑猥に過ぎる!!吐息多めの『お願い』はズルいと思う!!)
596
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる