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第一章 純真妖狐(?)といっしょ
3-3.
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3-3.
「…シロちゃん」
「…はい、なの…」
放課後、誰も残っていない教室、小声での呼び掛けに返ってきたのは萎れて元気の無い声。
―悪いことをしたとは思っているのかな?
「…さっきのドングリは、シロちゃんがやったの?」
「…そうなのよ…」
「駄目、だよ。モノを投げつけちゃ、危ないでしょう?」
「でも、だって、ダメなのよ!イチカにイジワルしてたの!イチカ、泣きそうだったのよ!だから、メッしたの!」
フルフルと涙を堪えながら下を向く姿はいじらしい。それに、私のために怒ってくれたのはわかるから、
「シロちゃん、私のために怒ってくれたのはありがとう。それは、嬉しいよ。でも、だけど、危ないことはしちゃ駄目」
「…」
「私はちゃんと自分で言えるから、こんなこと、もう絶対しちゃ駄目だよ?さっきの子達、とっても痛がってたでしょ?」
「っ、ごめんなさいなのー!」
胸元に飛び込んできて必死にしがみつく姿に、正直もう、かなりほだされてる。可愛い、なんて思いながら、真剣な顔をキープして、
「お約束、ね?もうしないでね?」
「お約束するのー、もうしないのー、お兄ちゃん達にごめんなさいしてくるのー」
「えっと、それはちょっと」
エグエグしながら、フラフラ飛び立とうとするシロを引き留める。
「えっと、直接謝るのは、それはシロちゃんが危険だから、やめよう。心の中で謝っておこう、ね?」
「…わかったのー…」
頷いて、ようやく泣き止んだシロが眠そうにし始めた。
「シロちゃん、眠いの?寝る?」
「…寝ないのー」
そう言いながらも船をこぎ始めたシロを、バッグの中、プラスチックケースとタオルで作った空間に寝かせた。そのまま、目を開けないことを確認してバッグを閉じる。
後は、うっかりぶつけたり振り回したりしないように―
肩からかけたバッグを気にしながら、昇降口へと向かう。靴を履き替え終わったところで、名前を呼ばれた。
「一花!」
「あれ?瑞穂、もう帰ったんじゃなかったの?」
「職員室寄ってたんだ。コッシーに聞きたいことあって。一花、もう帰るんだよね?駅まで一緒に帰ろう?」
「うん」
二人、並んで校門を後にする。駅までの道を歩きながら頭を過るのは、先ほどのシロがやってしまったこと。降ってきたのがドングリだったからまだ良かった。彼らの誰も怪我することなく、空から降ってきたのも、誰かが窓から落としたとでも思ってくれたようで大騒ぎにはならなかった。
だけど、あれがもしドングリではなかったら―?
考えてみれば、公園に置いてきたはずのミルクティの缶、あれを部屋まで運んで来たのはシロなのだ。少なくとも、シロにはあの重さのものを動かす力があるわけで―
「…」
「…一花?聞いてた?」
「!あ、ごめん!ちょっと、ボーッとしてた」
「だろうね、そんな顔してた」
ちゃんと聞いてよと怒ったふりをする瑞穂に、もう一度ごめんと謝れば、しょうがないなあという返事が返ってくる。
「コッシーに聞いてきたんだけどさ、受験会場の下見、不安があるなら行っておいた方が良いって」
「行くの?」
「『青沢は特に行っておいた方が良い』って言われた。どういう意味よ!?って言いたいけど、自分でも行っておいた方が良いって思ってる」
「うん、その方が無難だよね?」
担任の判断基準に不満を示しながらも、アドバイスは受け入れるらしい友人の素直さに笑う。
「一花!一花も一緒に行こうよ!第一志望だけでいいからさ、一人で行きたくない!」
「えー…」
受験会場である大学までは電車一本でいけるし、なるべくなら人混みは避けておきたい。それに何より、寒いのが嫌だ、とは思うけれど、
「…いいよ、行こう。今度の土日とかにする?」
「一花ぁー!ありがとー!」
「瑞穂のため、というよりは私の心の平穏のためだから」
受験日当日に瑞穂が会場に現れないなんてことになれば、自分だって試験に集中出来るかどうか。
「…一花も、コッシーと同じようなこと考えてない?」
「考えすぎ、考えすぎ」
たどり着いた駅前、ホームで別れる前にと、改札前のベンチに並んで座ってスマホを取り出した。
「あれ?新しいチャーム?リングつけたんだ?」
「うん、気分転換に」
曖昧に笑って確認する手元の画面。立ち上げたスケジュールアプリでお互いの予定を確認し、集合場所と時間を決めていく。
「…シロちゃん」
「…はい、なの…」
放課後、誰も残っていない教室、小声での呼び掛けに返ってきたのは萎れて元気の無い声。
―悪いことをしたとは思っているのかな?
「…さっきのドングリは、シロちゃんがやったの?」
「…そうなのよ…」
「駄目、だよ。モノを投げつけちゃ、危ないでしょう?」
「でも、だって、ダメなのよ!イチカにイジワルしてたの!イチカ、泣きそうだったのよ!だから、メッしたの!」
フルフルと涙を堪えながら下を向く姿はいじらしい。それに、私のために怒ってくれたのはわかるから、
「シロちゃん、私のために怒ってくれたのはありがとう。それは、嬉しいよ。でも、だけど、危ないことはしちゃ駄目」
「…」
「私はちゃんと自分で言えるから、こんなこと、もう絶対しちゃ駄目だよ?さっきの子達、とっても痛がってたでしょ?」
「っ、ごめんなさいなのー!」
胸元に飛び込んできて必死にしがみつく姿に、正直もう、かなりほだされてる。可愛い、なんて思いながら、真剣な顔をキープして、
「お約束、ね?もうしないでね?」
「お約束するのー、もうしないのー、お兄ちゃん達にごめんなさいしてくるのー」
「えっと、それはちょっと」
エグエグしながら、フラフラ飛び立とうとするシロを引き留める。
「えっと、直接謝るのは、それはシロちゃんが危険だから、やめよう。心の中で謝っておこう、ね?」
「…わかったのー…」
頷いて、ようやく泣き止んだシロが眠そうにし始めた。
「シロちゃん、眠いの?寝る?」
「…寝ないのー」
そう言いながらも船をこぎ始めたシロを、バッグの中、プラスチックケースとタオルで作った空間に寝かせた。そのまま、目を開けないことを確認してバッグを閉じる。
後は、うっかりぶつけたり振り回したりしないように―
肩からかけたバッグを気にしながら、昇降口へと向かう。靴を履き替え終わったところで、名前を呼ばれた。
「一花!」
「あれ?瑞穂、もう帰ったんじゃなかったの?」
「職員室寄ってたんだ。コッシーに聞きたいことあって。一花、もう帰るんだよね?駅まで一緒に帰ろう?」
「うん」
二人、並んで校門を後にする。駅までの道を歩きながら頭を過るのは、先ほどのシロがやってしまったこと。降ってきたのがドングリだったからまだ良かった。彼らの誰も怪我することなく、空から降ってきたのも、誰かが窓から落としたとでも思ってくれたようで大騒ぎにはならなかった。
だけど、あれがもしドングリではなかったら―?
考えてみれば、公園に置いてきたはずのミルクティの缶、あれを部屋まで運んで来たのはシロなのだ。少なくとも、シロにはあの重さのものを動かす力があるわけで―
「…」
「…一花?聞いてた?」
「!あ、ごめん!ちょっと、ボーッとしてた」
「だろうね、そんな顔してた」
ちゃんと聞いてよと怒ったふりをする瑞穂に、もう一度ごめんと謝れば、しょうがないなあという返事が返ってくる。
「コッシーに聞いてきたんだけどさ、受験会場の下見、不安があるなら行っておいた方が良いって」
「行くの?」
「『青沢は特に行っておいた方が良い』って言われた。どういう意味よ!?って言いたいけど、自分でも行っておいた方が良いって思ってる」
「うん、その方が無難だよね?」
担任の判断基準に不満を示しながらも、アドバイスは受け入れるらしい友人の素直さに笑う。
「一花!一花も一緒に行こうよ!第一志望だけでいいからさ、一人で行きたくない!」
「えー…」
受験会場である大学までは電車一本でいけるし、なるべくなら人混みは避けておきたい。それに何より、寒いのが嫌だ、とは思うけれど、
「…いいよ、行こう。今度の土日とかにする?」
「一花ぁー!ありがとー!」
「瑞穂のため、というよりは私の心の平穏のためだから」
受験日当日に瑞穂が会場に現れないなんてことになれば、自分だって試験に集中出来るかどうか。
「…一花も、コッシーと同じようなこと考えてない?」
「考えすぎ、考えすぎ」
たどり着いた駅前、ホームで別れる前にと、改札前のベンチに並んで座ってスマホを取り出した。
「あれ?新しいチャーム?リングつけたんだ?」
「うん、気分転換に」
曖昧に笑って確認する手元の画面。立ち上げたスケジュールアプリでお互いの予定を確認し、集合場所と時間を決めていく。
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