そんなコンなで毎日修行中!

西出あや

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5.彼氏じゃありません!

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「く、黒瀬くん、すごいんだってね! 和真に聞いたよ」
 その背中に思いきって声をかけると、黒瀬くんがぴたりと足を止め、わたしもびくっとして立ち止まる。
 そんなわたしたちの間で、和真も足を止めた。
 振り向きざまに、黒瀬くんに鋭い視線を向けられ、思わず一歩あとずさりする。
 この前襲われたときの恐怖を思い出して、体が固くなる。
「人間となれ合うつもりはない」
 そんな言い方……やっぱり、野球部をめちゃくちゃにするために入ったってこと?
 ううん、そんなこと、わたしが絶対にさせない。
「ちょっと、ちょっとお。野球はチームスポーツなんだから、もっとちゃんとみんなと仲よくしないとだよ? だって、野球がやりたくて入ったんでしょ?」
 あえておもいっきり明るい声で、黒瀬くんに言い返す。
「はあ⁉ お、おまえには関係のないことだ」
 えーっと……黒瀬くん、めちゃくちゃ動揺してない?
 薄暗くてよく見えないけど、なんとなく頬も赤いみたいなんだけど。
 ひょっとして図星?
 本当に野球がやりたくて入部しただけってこと?
 だったらなおさら、みんなともっと打ち解けて仲よくなってほしいよ。
 よしっ。こうなったら、やっぱりわたしが一肌脱いで……。
「余計なことはするな。わかったな」
 全身から強い妖気を放つ黒瀬くんに低い声でクギを刺され、こくこくと無言でうなずくので精いっぱい。
 そんなわたしからふんっと顔をそらすと、黒瀬くんは大股で去っていった。
 黒瀬くんの背中を見送りながら、はぁーと大きなため息をついていたら、今度は和真の方から強い視線を感じる。
「な、なに?」
 おそるおそる和真の方を見ると、ものすごく不機嫌そうな顔をしていた。
 どうしたんだろ?
「別に。なんでもない」
 ぶっきらぼうにそう言うと、和真はわたしを置いて歩きはじめた。
「え、ち、ちょっと待ってよ!」
 ぱたぱたと小走りで和真を追いかけ、もう一度隣に並んだけれど、話しかけるのも気がひけるようなピリピリした空気をずっと身にまとったまま。
『なんでもない』って……こんなの、なんでもなくないじゃん。
 本当に、いったいどうしちゃったんだろ?
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