19 / 51
5.彼氏じゃありません!
3
しおりを挟む
「く、黒瀬くん、すごいんだってね! 和真に聞いたよ」
その背中に思いきって声をかけると、黒瀬くんがぴたりと足を止め、わたしもびくっとして立ち止まる。
そんなわたしたちの間で、和真も足を止めた。
振り向きざまに、黒瀬くんに鋭い視線を向けられ、思わず一歩あとずさりする。
この前襲われたときの恐怖を思い出して、体が固くなる。
「人間となれ合うつもりはない」
そんな言い方……やっぱり、野球部をめちゃくちゃにするために入ったってこと?
ううん、そんなこと、わたしが絶対にさせない。
「ちょっと、ちょっとお。野球はチームスポーツなんだから、もっとちゃんとみんなと仲よくしないとだよ? だって、野球がやりたくて入ったんでしょ?」
あえておもいっきり明るい声で、黒瀬くんに言い返す。
「はあ⁉ お、おまえには関係のないことだ」
えーっと……黒瀬くん、めちゃくちゃ動揺してない?
薄暗くてよく見えないけど、なんとなく頬も赤いみたいなんだけど。
ひょっとして図星?
本当に野球がやりたくて入部しただけってこと?
だったらなおさら、みんなともっと打ち解けて仲よくなってほしいよ。
よしっ。こうなったら、やっぱりわたしが一肌脱いで……。
「余計なことはするな。わかったな」
全身から強い妖気を放つ黒瀬くんに低い声でクギを刺され、こくこくと無言でうなずくので精いっぱい。
そんなわたしからふんっと顔をそらすと、黒瀬くんは大股で去っていった。
黒瀬くんの背中を見送りながら、はぁーと大きなため息をついていたら、今度は和真の方から強い視線を感じる。
「な、なに?」
おそるおそる和真の方を見ると、ものすごく不機嫌そうな顔をしていた。
どうしたんだろ?
「別に。なんでもない」
ぶっきらぼうにそう言うと、和真はわたしを置いて歩きはじめた。
「え、ち、ちょっと待ってよ!」
ぱたぱたと小走りで和真を追いかけ、もう一度隣に並んだけれど、話しかけるのも気がひけるようなピリピリした空気をずっと身にまとったまま。
『なんでもない』って……こんなの、なんでもなくないじゃん。
本当に、いったいどうしちゃったんだろ?
その背中に思いきって声をかけると、黒瀬くんがぴたりと足を止め、わたしもびくっとして立ち止まる。
そんなわたしたちの間で、和真も足を止めた。
振り向きざまに、黒瀬くんに鋭い視線を向けられ、思わず一歩あとずさりする。
この前襲われたときの恐怖を思い出して、体が固くなる。
「人間となれ合うつもりはない」
そんな言い方……やっぱり、野球部をめちゃくちゃにするために入ったってこと?
ううん、そんなこと、わたしが絶対にさせない。
「ちょっと、ちょっとお。野球はチームスポーツなんだから、もっとちゃんとみんなと仲よくしないとだよ? だって、野球がやりたくて入ったんでしょ?」
あえておもいっきり明るい声で、黒瀬くんに言い返す。
「はあ⁉ お、おまえには関係のないことだ」
えーっと……黒瀬くん、めちゃくちゃ動揺してない?
薄暗くてよく見えないけど、なんとなく頬も赤いみたいなんだけど。
ひょっとして図星?
本当に野球がやりたくて入部しただけってこと?
だったらなおさら、みんなともっと打ち解けて仲よくなってほしいよ。
よしっ。こうなったら、やっぱりわたしが一肌脱いで……。
「余計なことはするな。わかったな」
全身から強い妖気を放つ黒瀬くんに低い声でクギを刺され、こくこくと無言でうなずくので精いっぱい。
そんなわたしからふんっと顔をそらすと、黒瀬くんは大股で去っていった。
黒瀬くんの背中を見送りながら、はぁーと大きなため息をついていたら、今度は和真の方から強い視線を感じる。
「な、なに?」
おそるおそる和真の方を見ると、ものすごく不機嫌そうな顔をしていた。
どうしたんだろ?
「別に。なんでもない」
ぶっきらぼうにそう言うと、和真はわたしを置いて歩きはじめた。
「え、ち、ちょっと待ってよ!」
ぱたぱたと小走りで和真を追いかけ、もう一度隣に並んだけれど、話しかけるのも気がひけるようなピリピリした空気をずっと身にまとったまま。
『なんでもない』って……こんなの、なんでもなくないじゃん。
本当に、いったいどうしちゃったんだろ?
0
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
放課後ゆめみちきっぷ
梅野小吹
児童書・童話
わたし、小日向(こひなた)ゆには、元気で明るくて髪の毛がふわふわなことが自慢の中学一年生!
ある日の放課後、宿題をし忘れて居残りをしていたわたしは、廊下で変わったコウモリを見つけたんだ。気になってあとを追いかけてみたら、たどり着いた視聴覚室で、なぜか同じクラスの玖波(くば)くんが眠っていたの。
心配になって玖波くんの手を取ってみると……なんと、彼の夢の中に引きずり込まれちゃった!
夢の中で出会ったのは、空に虹をかけながら走るヒツジの列車と、人の幸せを食べてしまう悪いコウモリ・「フコウモリ」。そして、そんなフコウモリと戦う玖波くんだった。
玖波くんは悪夢を食べる妖怪・バクの血を引いているらしくて、ヒツジの車掌が運転する〝夢見列車〟に乗ることで、他人の夢の中を渡り歩きながら、人知れずみんなの幸せを守っているんだって。
そんな玖波くんのヒミツを知ってしまったわたしは、なんと、夢の中でフコウモリ退治のお手伝いをすることになってしまって――?
これは、みんなを悪夢から守るわたしたちの、ヒミツの夢旅の物語!
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
君との恋はシークレット
碧月あめり
児童書・童話
山田美音は、マンガとイラストを描くのが好きな中学二年生。学校では黒縁メガネをかけて地味に過ごしているが、その裏で人気ファッションモデル・星崎ミオンとして芸能活動をしている。
母の勧めでモデルをしている美音だが、本当は目立つことが好きではない。プライベートでは平穏に過ごしたい思っている美音は、学校ではモデルであることを隠していた。
ある日の放課後、美音は生徒会長も務めるクラスのクールイケメン・黒沢天馬とぶつかってメガネをはずした顔を見られてしまう。さらには、教室で好きなマンガの推しキャラに仕事の愚痴を言っているところを動画に撮られてしまう。
そのうえ、「星崎ミオンの本性をバラされたくなかったら、オレの雑用係やれ」と黒沢に脅されてしまい…。
未来スコープ ―この学園、裏ありすぎなんですけど!? ―
米田悠由
児童書・童話
「やばっ!これ、やっぱ未来見れるんだ!」
平凡な女子高生・白石藍が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“触れたものの行く末を映す”装置だった。
好奇心旺盛な藍は、未来スコープを通して、学園に潜む都市伝説や不可解な出来事の真相に迫っていく。
旧校舎の謎、転校生・蓮の正体、そして学園の奥深くに潜む秘密。
見えた未来が、藍たちの運命を大きく揺るがしていく。
未来スコープが映し出すのは、甘く切ないだけではない未来。
誰かを信じる気持ち、誰かを疑う勇気、そして真実を暴く覚悟。
藍は「信じるとはどういうことか」を問われていく。
この物語は、好奇心と正義感、友情と疑念の狭間で揺れながら、自分の軸を見つけていく少女の記録です。
感情の揺らぎと、未来への探究心が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第3作。
読後、きっと「誰かを信じるとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる