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10.キツネがいっぱい!?
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翌朝、いつもより早く登校すると、その足でわたしは飼育小屋へと向かった。
一、二、三、四、五……うん。昨日と同じ、十五匹ちゃんといる。
まだ完全に存在を消されてしまった子はいないみたい。
今ならまだみんなを元の姿に戻してあげることができる。
犯人の手がかりを、早く見つけなくちゃ。
「どうしたの、これ。いったいどういうこと?」
ふいに声をかけられ、ハッとして声の方を見る。
「康哉。お、おはよう。いつもこんなに早いの?」
ぎこちない笑みを浮かべて見せると、康哉が小さくため息をつく。
「ひょっとして、全部ここの生徒?」
「うん……多分。人間の記憶をなくしたまま迷子にならないようにって、ここで保護してるの」
「ふうん。ま、これで少しは人間も妖狐の気持ちがわかるんじゃないの?」
そう言って、康哉がくすりと笑う。
そんな言い方……ヒドイよ。
康哉が、人間にいいイメージを持っていないのは知ってるけど。
でも、同じ学校の生徒なんだよ?
ちょっとくらい、なんとかしてあげたいって思わないの?
「おねがい。康哉も犯人探しを手伝って」
「キツネの姿なら、勉強なんかしなくていいし、働かなくたっていい。このままの姿を望む子だって、中にはいるかもしれないよ。それでも元に戻さなきゃって思うのは、君の自己満足なんじゃない?」
それだけ言うと、康哉はさっさと昇降口に向かって歩いていってしまった。
中には、そういう子もいるかもしれないよ?
でも、そんなふうに思ったことを、後悔しているかもしれない。
だから、やっぱりこのまま放っておくなんて、わたしにはできないよ。
それにしても、犯人はいったい誰なんだろう?
『そもそも僕たちくらい若い妖狐になると、その術の存在自体知っている者も少ないんじゃない?』
『妖狐の誰かに、生気を少しずつ吸い取られていた影響だろうね』
『人間の生気を必要とするほど、俺は衰えていない』
康哉と黒瀬くんが言っていたことを思い返す。
これが本当だとすると、ひょっとして犯人は、生徒ではない……?
妖狐は、人間よりもずっと長生きだ。
白狐の里で一番の長寿のおばあさまは、実は二百歳を優に超えているらしい。
子ども時代は、人間の年齢とほぼ同じような見た目だけど、大人になると、変化の術が巧みであればあるほど、実年齢とはかけ離れた見た目になれるんだって。
わたしのお母さんも、本当の年齢は教えてくれないけど、見た目よりもずっと年を取っているらしい。
そうか。きっと若い見た目を保つために、子どもの生気が必要なんだ。
しかも、こんなにたくさん。
なんだか胸がざわざわする。
和真をおばあさまに預けてしまって、本当によかったの?
もしもおばあさまが犯人だったら、今頃和真の生気は吸い尽くされて……。
全身の血の気が引いていく。
ううん、大丈夫。おばあさまが、そんなことをするはずがない。
だって康哉が、白狐の掟で禁じられている術だって言ってたんだから。
その掟を、長自身が破るなんてありえないよ。
ぶんぶんと首を横に振ると、思わず浮かんだ悪い想像をかき消す。
そもそもおばあさまは、年相応に見えるといえば、そうかもしれない。
それに、あのおばあさまの隣に控えていた男の人。あの人は、きっとおばあさまの護衛かなにかに違いない。
つまり、おばあさまが誰にも気づかれずに、一人で里をおりて生徒を襲うだなんて、どう考えたって不可能ってこと。
あれっ。ちょっと待って。それじゃあ……。
生徒じゃなくて、和真が日常的に接することのできる人……。
そういえば和真、ちょっと前から様子がおかしいなって思ってはいたけど、あのあとから、さらにおかしくなったんじゃない?
ほら、部活中に鼻血が出て、保健室に一人で行ってから……。
翌朝、いつもより早く登校すると、その足でわたしは飼育小屋へと向かった。
一、二、三、四、五……うん。昨日と同じ、十五匹ちゃんといる。
まだ完全に存在を消されてしまった子はいないみたい。
今ならまだみんなを元の姿に戻してあげることができる。
犯人の手がかりを、早く見つけなくちゃ。
「どうしたの、これ。いったいどういうこと?」
ふいに声をかけられ、ハッとして声の方を見る。
「康哉。お、おはよう。いつもこんなに早いの?」
ぎこちない笑みを浮かべて見せると、康哉が小さくため息をつく。
「ひょっとして、全部ここの生徒?」
「うん……多分。人間の記憶をなくしたまま迷子にならないようにって、ここで保護してるの」
「ふうん。ま、これで少しは人間も妖狐の気持ちがわかるんじゃないの?」
そう言って、康哉がくすりと笑う。
そんな言い方……ヒドイよ。
康哉が、人間にいいイメージを持っていないのは知ってるけど。
でも、同じ学校の生徒なんだよ?
ちょっとくらい、なんとかしてあげたいって思わないの?
「おねがい。康哉も犯人探しを手伝って」
「キツネの姿なら、勉強なんかしなくていいし、働かなくたっていい。このままの姿を望む子だって、中にはいるかもしれないよ。それでも元に戻さなきゃって思うのは、君の自己満足なんじゃない?」
それだけ言うと、康哉はさっさと昇降口に向かって歩いていってしまった。
中には、そういう子もいるかもしれないよ?
でも、そんなふうに思ったことを、後悔しているかもしれない。
だから、やっぱりこのまま放っておくなんて、わたしにはできないよ。
それにしても、犯人はいったい誰なんだろう?
『そもそも僕たちくらい若い妖狐になると、その術の存在自体知っている者も少ないんじゃない?』
『妖狐の誰かに、生気を少しずつ吸い取られていた影響だろうね』
『人間の生気を必要とするほど、俺は衰えていない』
康哉と黒瀬くんが言っていたことを思い返す。
これが本当だとすると、ひょっとして犯人は、生徒ではない……?
妖狐は、人間よりもずっと長生きだ。
白狐の里で一番の長寿のおばあさまは、実は二百歳を優に超えているらしい。
子ども時代は、人間の年齢とほぼ同じような見た目だけど、大人になると、変化の術が巧みであればあるほど、実年齢とはかけ離れた見た目になれるんだって。
わたしのお母さんも、本当の年齢は教えてくれないけど、見た目よりもずっと年を取っているらしい。
そうか。きっと若い見た目を保つために、子どもの生気が必要なんだ。
しかも、こんなにたくさん。
なんだか胸がざわざわする。
和真をおばあさまに預けてしまって、本当によかったの?
もしもおばあさまが犯人だったら、今頃和真の生気は吸い尽くされて……。
全身の血の気が引いていく。
ううん、大丈夫。おばあさまが、そんなことをするはずがない。
だって康哉が、白狐の掟で禁じられている術だって言ってたんだから。
その掟を、長自身が破るなんてありえないよ。
ぶんぶんと首を横に振ると、思わず浮かんだ悪い想像をかき消す。
そもそもおばあさまは、年相応に見えるといえば、そうかもしれない。
それに、あのおばあさまの隣に控えていた男の人。あの人は、きっとおばあさまの護衛かなにかに違いない。
つまり、おばあさまが誰にも気づかれずに、一人で里をおりて生徒を襲うだなんて、どう考えたって不可能ってこと。
あれっ。ちょっと待って。それじゃあ……。
生徒じゃなくて、和真が日常的に接することのできる人……。
そういえば和真、ちょっと前から様子がおかしいなって思ってはいたけど、あのあとから、さらにおかしくなったんじゃない?
ほら、部活中に鼻血が出て、保健室に一人で行ってから……。
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