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8.わかってたのに
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その日の夜。
机の前に座って、いくら月曜日の英語の予習をしようとしても、全然進まない……。
だって、あたしのことを静かに見つめる逢坂先輩のメガネのない素顔が、頭の中に浮かんだまま全然消えてくれないんだもん。
ああっ、もうやめてよぉ!
目の前で両手をバタバタ振って、必死にかき消そうと試みる。
でも、しょうがないじゃん。
メガネのない先輩の素顔なんて、はじめて見たんだもん。
いつもはメガネに隠されている先輩の瞳が、あんなにキレイだったなんて知らなかった。
なのに、すぐにメガネ姿に戻ってしまって、ちょっと残念だったな……って、元はといえば、あたしが先輩に迷惑をかけたせいなんだけど。
ああ、またやっちゃった……。
痛みに顔をゆがめる先輩を思い出して、またじわっと涙がにじんでくる。
もうっ、あたしが泣いてどうするの。
こぼれ落ちる前に、あたしは手の甲でぐいっと涙をぬぐった。
先輩に申し訳ないことをしたと思うのなら、その分ちゃんと行動で返さなくちゃだよ。
ようし、月曜からも練習がんばるぞ!
ぎゅっとこぶしを握りしめて気合を入れたそのとき、メッセージの着信音がして、机の脇に置いたスマホを手に取った。
「え、爽太くん?」
だいぶ前に連絡先の交換はしたんだけど、実際にメッセージが届くのははじめてだ。
爽太《月曜日の放課後、デートしよ。》
えぇっ、なんで急にデートなんて!?
それに、月曜日はまた先輩と紙芝居の練習をする予定なんだけど……。
遥香《ごめんね。月曜日は予定があるからムリ。》
迷いながらもメッセージを打ち込み、送信しようとして、指が止まる。
他に好きな人がいるわけじゃない。
だったら……行ってみた方がいいのかなぁ。
いやいや、待って。
『逢坂くんはみんなの逢坂くんなんだから。抜け駆けだけはしないでね?』
そう言ったときの須藤さんの目を思い出して、ぶるっと身震いする。
あんなふうに爽太くんとのことを否定しておきながら、誰かにデート現場なんか見られたら大変なことになる。
それに、そもそもお付き合いをするつもりもない人からのデートの誘いに乗るっていうのは、相手にも失礼なんじゃない?
スマホ片手に、うーん、うーん……とうなること数分。
再び爽太くんからメッセージが届いた。
爽太《僕らって、まだ生徒会の仕事しか一緒にしてないでしょ? だから、デートって言ったけど、友だち同士で遊びに行くぐらいの気持ちでいいから、来てもらえるとうれしいな。》
えぇっ。たしかに爽太くんのことは、友だちだと思ってるよ?
だけど、一緒に遊びに行くっていうのは……。
でも、小学生のときに高梨たちと運動場で遊んでたのはよくて、爽太くんと遊びに行くのは断らなきゃいけないこと……?
さらに、うーん、うーん……とうなること数分。
遥香《ごめんね。月曜日は予定があるから、週末じゃダメ?》
そうメッセージを打ち直した。
月曜日に予定があるのは本当だもんね。
だけど、そのまま送信ボタンが押せずに、さらに数分が経過する。
……ああっ、もう。なるようになれ!
思いきって送信すると、あっという間に返信が来た。
爽太《ごめん。週末は予定があるからムリなんだ。》
そっか。うーん、どうしよう……。
頭の中で、爽太くんと逢坂先輩の顔がグルグル回る。
さっき、練習がんばるぞって気合を入れたばかりなのに。
でも、火曜日も練習の予定だし……。
遥香《わかった。じゃあ、月曜日の予定はなんとかするよ。》
悩みながらも、メッセージを打ち込んで送信する。
爽太《え、本当にいいの? やった! じゃあ、駅前の時計塔のとこに三時集合でいい?》
早っ。
浮かれた爽太くんの様子を勝手に想像して、思わずふふっと笑みがこぼれる。
遥香《うん。わかった。》
返事を返すと、スマホを裏返して机の上に置いた。
どうしよう。爽太くんと遊びに行く約束なんかしちゃったよ!
なんだかいてもたってもいられなくなって、部屋の中をグルグルと歩きまわる。
まあ、友だち同士で遊びに行くだけなんだし、どーってことなくない?
なーんて自分に言い聞かせようとしたんだけど……いや、全然ムリだって!
でも、よく考えたらあたし、逢坂先輩のこと以上に、爽太くんのこと、なんにも知らない気がする。
だから、今回だけはちゃんと行って、爽太くんとちゃんと向き合ってみよう。
だけど……なぜか逢坂先輩のことが、頭の中にチラついて離れない。
――先輩にだけは、絶対に知られたくないな。
そんな思いが、どんどん膨らんでくる。
そりゃあ紙芝居の練習のキャンセル理由がデートだなんて知れたら、激怒されるに決まってるしね!
だけど、理由はそれだけじゃない気もする。
一体なんなの、この気持ち?
……ああっ、もう! こんなときばっか深く考えないの。
あたしは机の前に座り直すと、目の前の英語の予習に無理やり全神経を集中させた。
机の前に座って、いくら月曜日の英語の予習をしようとしても、全然進まない……。
だって、あたしのことを静かに見つめる逢坂先輩のメガネのない素顔が、頭の中に浮かんだまま全然消えてくれないんだもん。
ああっ、もうやめてよぉ!
目の前で両手をバタバタ振って、必死にかき消そうと試みる。
でも、しょうがないじゃん。
メガネのない先輩の素顔なんて、はじめて見たんだもん。
いつもはメガネに隠されている先輩の瞳が、あんなにキレイだったなんて知らなかった。
なのに、すぐにメガネ姿に戻ってしまって、ちょっと残念だったな……って、元はといえば、あたしが先輩に迷惑をかけたせいなんだけど。
ああ、またやっちゃった……。
痛みに顔をゆがめる先輩を思い出して、またじわっと涙がにじんでくる。
もうっ、あたしが泣いてどうするの。
こぼれ落ちる前に、あたしは手の甲でぐいっと涙をぬぐった。
先輩に申し訳ないことをしたと思うのなら、その分ちゃんと行動で返さなくちゃだよ。
ようし、月曜からも練習がんばるぞ!
ぎゅっとこぶしを握りしめて気合を入れたそのとき、メッセージの着信音がして、机の脇に置いたスマホを手に取った。
「え、爽太くん?」
だいぶ前に連絡先の交換はしたんだけど、実際にメッセージが届くのははじめてだ。
爽太《月曜日の放課後、デートしよ。》
えぇっ、なんで急にデートなんて!?
それに、月曜日はまた先輩と紙芝居の練習をする予定なんだけど……。
遥香《ごめんね。月曜日は予定があるからムリ。》
迷いながらもメッセージを打ち込み、送信しようとして、指が止まる。
他に好きな人がいるわけじゃない。
だったら……行ってみた方がいいのかなぁ。
いやいや、待って。
『逢坂くんはみんなの逢坂くんなんだから。抜け駆けだけはしないでね?』
そう言ったときの須藤さんの目を思い出して、ぶるっと身震いする。
あんなふうに爽太くんとのことを否定しておきながら、誰かにデート現場なんか見られたら大変なことになる。
それに、そもそもお付き合いをするつもりもない人からのデートの誘いに乗るっていうのは、相手にも失礼なんじゃない?
スマホ片手に、うーん、うーん……とうなること数分。
再び爽太くんからメッセージが届いた。
爽太《僕らって、まだ生徒会の仕事しか一緒にしてないでしょ? だから、デートって言ったけど、友だち同士で遊びに行くぐらいの気持ちでいいから、来てもらえるとうれしいな。》
えぇっ。たしかに爽太くんのことは、友だちだと思ってるよ?
だけど、一緒に遊びに行くっていうのは……。
でも、小学生のときに高梨たちと運動場で遊んでたのはよくて、爽太くんと遊びに行くのは断らなきゃいけないこと……?
さらに、うーん、うーん……とうなること数分。
遥香《ごめんね。月曜日は予定があるから、週末じゃダメ?》
そうメッセージを打ち直した。
月曜日に予定があるのは本当だもんね。
だけど、そのまま送信ボタンが押せずに、さらに数分が経過する。
……ああっ、もう。なるようになれ!
思いきって送信すると、あっという間に返信が来た。
爽太《ごめん。週末は予定があるからムリなんだ。》
そっか。うーん、どうしよう……。
頭の中で、爽太くんと逢坂先輩の顔がグルグル回る。
さっき、練習がんばるぞって気合を入れたばかりなのに。
でも、火曜日も練習の予定だし……。
遥香《わかった。じゃあ、月曜日の予定はなんとかするよ。》
悩みながらも、メッセージを打ち込んで送信する。
爽太《え、本当にいいの? やった! じゃあ、駅前の時計塔のとこに三時集合でいい?》
早っ。
浮かれた爽太くんの様子を勝手に想像して、思わずふふっと笑みがこぼれる。
遥香《うん。わかった。》
返事を返すと、スマホを裏返して机の上に置いた。
どうしよう。爽太くんと遊びに行く約束なんかしちゃったよ!
なんだかいてもたってもいられなくなって、部屋の中をグルグルと歩きまわる。
まあ、友だち同士で遊びに行くだけなんだし、どーってことなくない?
なーんて自分に言い聞かせようとしたんだけど……いや、全然ムリだって!
でも、よく考えたらあたし、逢坂先輩のこと以上に、爽太くんのこと、なんにも知らない気がする。
だから、今回だけはちゃんと行って、爽太くんとちゃんと向き合ってみよう。
だけど……なぜか逢坂先輩のことが、頭の中にチラついて離れない。
――先輩にだけは、絶対に知られたくないな。
そんな思いが、どんどん膨らんでくる。
そりゃあ紙芝居の練習のキャンセル理由がデートだなんて知れたら、激怒されるに決まってるしね!
だけど、理由はそれだけじゃない気もする。
一体なんなの、この気持ち?
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