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9.許せない
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よしっ、行くぞ。
自分で自分に気合を入れると、三年生の教室のある四階の廊下を進んでいく。
逢坂先輩は、たしか二組だったはず。
三年生の階って、なんだか怖いんだよねぇ。
一年生よりもみんなずっと大きいし、ものすごく大人っぽく見えるんだもん。
だけど、怖がってる場合じゃない。
今日練習ができなくなったことを、逢坂先輩に伝えに行かなくちゃいけないんだから。
二組の前にたどり着くと、入り口のところからそっと中をのぞき込む。
昼休み中の教室内は、いくつかの仲よしグループに分かれてそれぞれ話に花を咲かせていて、教室の中をこっそりのぞく不審人物に注意を向ける人なんか誰もいなかった。
あっ、先輩だ。
一番窓側の列のうしろから二番目の席に座った逢坂先輩は、本を読みながらひとりでお弁当を食べていた。
「おうさ……」
逢坂先輩を呼ぼうとしたちょうどそのとき、先輩のすぐ横で大声でしゃべっていたチャラい感じの男子三人組のうちのひとりが、先輩の方に視線を向けたのに気づいて、途中で言葉を飲みこんだ。
「なあ、生徒会って劇でもやんの?」
「そうそう。金曜日だっけ? 部活んとき、生徒会室の方からヘンな声聞こえてたよな」
「あー、してた、してた」
読みかけの本から、逢坂先輩が顔をあげる。
「劇じゃなくて、紙芝居だよ」
「は? 紙芝居? んなことするために生徒会入ったのかよ」
「ハズくて俺はムリだわー」
バカにしたように笑う三人を無視して、逢坂先輩は本へと視線を戻す。
……悔しい。保育園の子どもたちを楽しませるために、がんばって練習してたのに。
「そんなふうに言うの、やめてください!」
気づいたら、三人組のすぐそばまで駆け寄って、そんなことを言っていた。
「佐倉?」
あたしに気づいた逢坂先輩が、眉間にシワを寄せてあたしを見あげる。
「あ? なんだおまえ、一年かよ。勝手に三年の教室に入ってくんな」
制服をだらしなく着崩した男子が、あたしの名札の色をちらっと確認すると、ギロリとにらんでくる。
その威圧感に、思わずたじろいで一歩後ずさりする。
でも……。
ぎゅっとこぶしを握りしめると、あたしは負けじとにらみ返した。
「人が一生懸命やっていることを笑うなんて、最低です」
「佐倉、やめろ」
「ああ、そっか。もうひとりの女子の声って、ひょっとしておまえ? あーなるほどなー。生徒会室でふたり仲よく紙芝居の練習なんかしちゃってるってわけか。そりゃあ、楽しいよなー」
そう言ってまた三人がゲラゲラ笑う。
「せ、先輩のことをバカにしないでください。あたしなんかまだ自分の仕事も全然できなくて怒られてばっかだけど、先輩はちゃんと自分の仕事をしながらみんなのフォローもしてくれて……苦手なことだってちゃんと自分で克服しようとしてて、それからそれから……とにかく、なんにも知らないで先輩のことをそんなふうに言うのはやめてください!」
かぁっと頭に血がのぼって、途中から自分でもなにを言ってるのかだんだんわからなくなってきた。
だけど、ひとつだけはっきりしていたのは、逢坂先輩のことをバカにされて、すごくすごく悔しかったってこと。
あたしのすぐ横にいた男子が、唇をかみしめてにらみつけるあたしの顔を、バカにしたような表情でのぞき込んでくる。
「あれぇ? ひょっとしておまえ――」
「佐倉、ちょっと来い」
その人が最後まで言い終わらないうちに、逢坂先輩はあたしの腕をぐいっとつかむと、三人から引き離すようにして教室を出た。
自分で自分に気合を入れると、三年生の教室のある四階の廊下を進んでいく。
逢坂先輩は、たしか二組だったはず。
三年生の階って、なんだか怖いんだよねぇ。
一年生よりもみんなずっと大きいし、ものすごく大人っぽく見えるんだもん。
だけど、怖がってる場合じゃない。
今日練習ができなくなったことを、逢坂先輩に伝えに行かなくちゃいけないんだから。
二組の前にたどり着くと、入り口のところからそっと中をのぞき込む。
昼休み中の教室内は、いくつかの仲よしグループに分かれてそれぞれ話に花を咲かせていて、教室の中をこっそりのぞく不審人物に注意を向ける人なんか誰もいなかった。
あっ、先輩だ。
一番窓側の列のうしろから二番目の席に座った逢坂先輩は、本を読みながらひとりでお弁当を食べていた。
「おうさ……」
逢坂先輩を呼ぼうとしたちょうどそのとき、先輩のすぐ横で大声でしゃべっていたチャラい感じの男子三人組のうちのひとりが、先輩の方に視線を向けたのに気づいて、途中で言葉を飲みこんだ。
「なあ、生徒会って劇でもやんの?」
「そうそう。金曜日だっけ? 部活んとき、生徒会室の方からヘンな声聞こえてたよな」
「あー、してた、してた」
読みかけの本から、逢坂先輩が顔をあげる。
「劇じゃなくて、紙芝居だよ」
「は? 紙芝居? んなことするために生徒会入ったのかよ」
「ハズくて俺はムリだわー」
バカにしたように笑う三人を無視して、逢坂先輩は本へと視線を戻す。
……悔しい。保育園の子どもたちを楽しませるために、がんばって練習してたのに。
「そんなふうに言うの、やめてください!」
気づいたら、三人組のすぐそばまで駆け寄って、そんなことを言っていた。
「佐倉?」
あたしに気づいた逢坂先輩が、眉間にシワを寄せてあたしを見あげる。
「あ? なんだおまえ、一年かよ。勝手に三年の教室に入ってくんな」
制服をだらしなく着崩した男子が、あたしの名札の色をちらっと確認すると、ギロリとにらんでくる。
その威圧感に、思わずたじろいで一歩後ずさりする。
でも……。
ぎゅっとこぶしを握りしめると、あたしは負けじとにらみ返した。
「人が一生懸命やっていることを笑うなんて、最低です」
「佐倉、やめろ」
「ああ、そっか。もうひとりの女子の声って、ひょっとしておまえ? あーなるほどなー。生徒会室でふたり仲よく紙芝居の練習なんかしちゃってるってわけか。そりゃあ、楽しいよなー」
そう言ってまた三人がゲラゲラ笑う。
「せ、先輩のことをバカにしないでください。あたしなんかまだ自分の仕事も全然できなくて怒られてばっかだけど、先輩はちゃんと自分の仕事をしながらみんなのフォローもしてくれて……苦手なことだってちゃんと自分で克服しようとしてて、それからそれから……とにかく、なんにも知らないで先輩のことをそんなふうに言うのはやめてください!」
かぁっと頭に血がのぼって、途中から自分でもなにを言ってるのかだんだんわからなくなってきた。
だけど、ひとつだけはっきりしていたのは、逢坂先輩のことをバカにされて、すごくすごく悔しかったってこと。
あたしのすぐ横にいた男子が、唇をかみしめてにらみつけるあたしの顔を、バカにしたような表情でのぞき込んでくる。
「あれぇ? ひょっとしておまえ――」
「佐倉、ちょっと来い」
その人が最後まで言い終わらないうちに、逢坂先輩はあたしの腕をぐいっとつかむと、三人から引き離すようにして教室を出た。
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