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12.逃げて!
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ダルマ運びリレーが終わると、次は最終種目、男女混合リレーだ。
現在のところ、一位から三位は混戦状態。このリレーの結果で、総合優勝が決まる。
ちなみに、わたしたち一年一組は現在二位で、翔くんのクラスの二組が一位。
自分の出番のときよりも、なんだか緊張してきちゃったよ。
うちのクラスのアンカーは、もちろん佐治くんで、二組は翔くんだ。
あっという間に三人目の走者にバトンが渡り、テイクオーバーゾーンの一番手前で、佐治くんと翔くんがスタンバイする。
最終コーナーのところで、トップを走っていた夏樹ちゃんが、二組の男子に追い抜かれた!
翔くんに一歩遅れて佐治くんがバトンを受け取ると、ぐんっと力強く地面をける。
佐治くん、がんばれ!
応援席に座ったまま、ぎゅっと胸の前で両手を組み合わせ、祈るようにレースの行方を見守っていると――うん? 今、なにか動いたような……?
視界の隅っこに、不自然に動く人影が映ったような気がして、校舎の屋上を見あげる。
ちょうど、重そうな得点板が取り付けられた柵のあたり。
ちょっと待って。ひょっとして、得点板を落とそうとしてる⁉
得点板の真下には、リレーのゴールを間近で見ようと、見物人がたくさん集まっている。
もしもあんなところに得点板を落とされたりしたら、大惨事だよ!
どうしよう……みんなリレーに夢中で、誰も気づいていないみたい。
わたしがぱっと立ちあがると、「ちょっとぉ。見えないんだけど」とうしろの席から文句が聞こえてくる。
「ご、ごめんね」
ちらっと振り向いて謝ったあと、もう一度得点板と見物人を見比べる。
……ためらってたら、間に合わなくなる。
意を決してトラックの中に走り出ると、わたしはお腹にぐっと力を込めた。
「みんなーっ! 逃げてーっ!!!!」
わたしが指さしながら目一杯大きな声で叫ぶと、異変に気づいた佐治くんが、そのままリレーのレーンをそれて校舎の下へと向かう。
「おい、あれマジでやべーんじゃね?」
「早く、運動場の真ん中に逃げろ‼」
異変に気づいた人たちが口々に叫び声をあげ、わっと一斉にみんなが避難しはじめた。
でも、足がすくんだのか、校舎の下で動けなくなっている子がいる。
おねがい……間に合って……!
言葉もなく見守る中、しっかりと固定されていたはずの得点板が、校舎の壁にぶつかりながら落下しはじめ、佐治くんが懸命に得点板の落下地点へと走る。
「キャーーーーッ‼」
あちこちで悲鳴があがる中、佐治くんは落下してきた得点板をぐっと受け止めると、人のいない方へと投げ飛ばした。
ガラガラガッシャーン!!!!
激しい音を立てて、得点板が地面を転がる。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……と肩で荒い息をする佐治くんを、みんながぼう然と見つめている。
……そうだ。こんなにたくさんの人に、能力を使うところを見られてしまったら……。
みんなを助けるのに必死で、佐治くんのこと、全然考えてなかった。
どうしよう。佐治くんが、この学校にいられなくなってしまったら、わたし…………え?
現在のところ、一位から三位は混戦状態。このリレーの結果で、総合優勝が決まる。
ちなみに、わたしたち一年一組は現在二位で、翔くんのクラスの二組が一位。
自分の出番のときよりも、なんだか緊張してきちゃったよ。
うちのクラスのアンカーは、もちろん佐治くんで、二組は翔くんだ。
あっという間に三人目の走者にバトンが渡り、テイクオーバーゾーンの一番手前で、佐治くんと翔くんがスタンバイする。
最終コーナーのところで、トップを走っていた夏樹ちゃんが、二組の男子に追い抜かれた!
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佐治くん、がんばれ!
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ちょうど、重そうな得点板が取り付けられた柵のあたり。
ちょっと待って。ひょっとして、得点板を落とそうとしてる⁉
得点板の真下には、リレーのゴールを間近で見ようと、見物人がたくさん集まっている。
もしもあんなところに得点板を落とされたりしたら、大惨事だよ!
どうしよう……みんなリレーに夢中で、誰も気づいていないみたい。
わたしがぱっと立ちあがると、「ちょっとぉ。見えないんだけど」とうしろの席から文句が聞こえてくる。
「ご、ごめんね」
ちらっと振り向いて謝ったあと、もう一度得点板と見物人を見比べる。
……ためらってたら、間に合わなくなる。
意を決してトラックの中に走り出ると、わたしはお腹にぐっと力を込めた。
「みんなーっ! 逃げてーっ!!!!」
わたしが指さしながら目一杯大きな声で叫ぶと、異変に気づいた佐治くんが、そのままリレーのレーンをそれて校舎の下へと向かう。
「おい、あれマジでやべーんじゃね?」
「早く、運動場の真ん中に逃げろ‼」
異変に気づいた人たちが口々に叫び声をあげ、わっと一斉にみんなが避難しはじめた。
でも、足がすくんだのか、校舎の下で動けなくなっている子がいる。
おねがい……間に合って……!
言葉もなく見守る中、しっかりと固定されていたはずの得点板が、校舎の壁にぶつかりながら落下しはじめ、佐治くんが懸命に得点板の落下地点へと走る。
「キャーーーーッ‼」
あちこちで悲鳴があがる中、佐治くんは落下してきた得点板をぐっと受け止めると、人のいない方へと投げ飛ばした。
ガラガラガッシャーン!!!!
激しい音を立てて、得点板が地面を転がる。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……と肩で荒い息をする佐治くんを、みんながぼう然と見つめている。
……そうだ。こんなにたくさんの人に、能力を使うところを見られてしまったら……。
みんなを助けるのに必死で、佐治くんのこと、全然考えてなかった。
どうしよう。佐治くんが、この学校にいられなくなってしまったら、わたし…………え?
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