妖祓師

☆白兎☆

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強引に

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「今日から、お前はここに住むことになる。今から私と特訓だ。ついてまいれ」

「ちょっと待てよ。俺だって仕事もあるし、今住んでいるところもある。それに俺は、お前らと妖退治なんてやらないぞ」

「お前の退職届は済ませた。住んでいる住居も退去の手続きは済んでいる。荷物もここへ運び込んだ。お前の帰るところはここしかない」



「おい、おい。強引だな。それじゃ、俺はこれからどうすればいいんだよ」

 有無を言わさず、煋蘭は大輔だいすけの腕を掴み、道場へ連れて行った。



「これから、お前の潜在能力を引き出す。覚悟しろ。これに耐えられなければ、お前は使い物にはならない」

「使い物にならなかったら、俺、どうなるの?」

「要らぬ者をここに置いておくわけにいかぬ」

「え? 追い出されるの?」

「そうだ」

(強引に連れてきて、勝手に退職届出して、住居も退去させて、使えなかったら捨てられるのか? ひどすぎる)



「そこへ座れ」

 大輔は言われたとおり座ると、煋蘭が正面に座り、にじり寄って来た。

(わぁ~。近づいてくる。なんかいい匂い)

 煋蘭は大輔の思考を読んでいるが、顔色を変えず、大輔の頭を抱え込んだ。

(おぉ~。これはいきなりおっぱいパフパフか?)

 大輔の思考に我慢が出来なかったのか、煋蘭は大輔を持ち上げてそのまま後ろへ投げ飛ばした。

「お前は邪念が過ぎる。他の方法に変える。表へ出ろ」



 道場から出るところに、大輔の靴が置かれていた。

「俺の靴、なんでここにあるんだ? 玄関で脱いだのに。何か変わった気配がするぞ」

「感がいいな。式神だ」

「煋蘭ちゃん、式神操れるの? 妖退治ってのも、本物っぽいな」



 式神がなぎなたと刀を煋蘭に渡した。

「武器を持て」

 煋蘭をそう言って、刀を大輔に投げて渡した。

「おっと」

 その刀のずっしりとした重みで、大輔は真剣であることを悟った。

「鞘から刀を抜け」

「煋蘭ちゃん。これ、真剣じゃないか。煋蘭ちゃん死んじゃうよ。俺、剣道やってたから、心得はあるんだ」

「自分の心配をしろ。さあ、かかって来い」

 煋蘭はなぎなたを大輔に向けて構えた。

 大輔も仕方ないという感じで、刀を鞘から抜くと構えた。

「かかって来ぬのなら、こちらから行く」

 煋蘭はなぎなたで大輔の刀をなぎ払った。

「心得があるならば、刀を離すな。おまえは武器も使えぬのか。情けない」



 式神たちはなぎなたと刀を回収した。

「ならば、素手で行くぞ。さあ、かかって来い」

 煋蘭は拳を握り、戦う姿勢を取った。

「ほんとにやるの? 俺、女の子の顔を殴るなんて出来ないよ」

 大輔がそう言った瞬間、左わき腹に煋蘭の蹴りが炸裂し、数メートル飛ばされた。

「ぐはっ」

 大輔は苦痛に顔を歪ませ、

「あばら骨が折れたかも」

 と言った。

「話せるなら折れてはいない」

「もしかして、手加減してくれたとか?」

「殺しはせぬ。早く立て」

「無理だよ。俺、怪我しているんだ」

「甘えるな。来ぬのなら、こちら行くぞ」



 その後も、煋蘭の拳と蹴りを受け続けた大輔は、見るも無残な状態で、息をするにも苦しい様子。もうすでに、軽口をたたく元気すらなかった。

「それでおしまいか? お前はまだ、一度も私に攻撃をしていない」

(俺、女の子に手を挙げられないよ。痛い、苦しい、もう死にそうだ)

「これぐらいでは人は死なぬ。皇の血を引く者がこのような無様な姿は赦されぬ。さあ、立て。私に攻撃して来い」

(見ての通り、俺、もうズタボロだ。動けないよ。ご褒美くれるとかだったら、頑張れるかも。煋蘭ちゃんに勝ったら結婚してくれるとか)

「私は自分より強い者を伴侶とすることに決めている。お前が私より強くなったら、伴侶にすることを考えてもいい」

(ほんと? それじゃ、俺、死ぬ気で頑張っちゃうよ)



 大輔が精神を集中させると、身体に何やら力が沸いてきた。

「おぉ。俺、なんか熱い血潮が漲って来た。煋蘭ちゃんのご褒美が効いたみたいだ」

「お前、傷が治癒している。能力が開花したのか」

「そうらしいな。なんか強くなった気がするぜ」

 大輔はそう言って、煋蘭を捕まえようとしたが、躱されたうえ、背中に重い蹴りを食らった。今度は煋蘭も手は抜かなかったため、大輔は庭の端まで飛ばされた。

「調子に乗るな。今日はここまでだ。お前の潜在能力を引き出すのが今日の課題だ。後は自由に過ごすといい。それと、お前に一言言っておく。私や母で卑猥な想像をするな」



 煋蘭の嫌悪に満ちた眼に、大輔は反省したように、

「悪かった。あんたがあまりに美人で、俺もちょっと舞い上がっていたんだ」

 としおらしく言った。
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