S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ

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第1部 第7章 ライバル -最高の盾-

第69話 工房が焼けたくらいで諦めるとでも?

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 おれは朝方にランサスの街に到着した。

 さっそく職人ギルド本部へ赴き、会合の部屋を突き止め、勢いよく扉を開け放ち突入する。

「おや、貴方は確かガルベージ家の客分の……」

「ショウか! てめえ、こんなとこまでなにしに来やがった!」

 そこには円卓があり、職人ギルドの幹部たちがずらりと並んでいた。ヒルストンの隣には、ギルド長と思わしき白髪長ひげの男が座っている。ケンドレッドの姿もあった。

「うちの工房が燃えてしまった。まずはその報告をしようと思いましてね」

 ヒルストンが一瞬口の端を歪ませた。

 それを見て、やはりヒルストンの差金だとおれは確信する。だが放火犯という証人を捕らえたことは言わない。

 今は、放火されたのだと知らないふりをしていたほうが、あとで足を掬いやすい。

 ヒルストンは、すぐ同情的な表情を作ってみせる。

「ほう、それはお気の毒に。工房のみなさまはご無事ですかな」

「人的被害は出ていない」

「それは良かった。しかし各卸業者に通達しなければなりませんな。レンズの生産は無期限延期だと。残念ながら工房が無いのでは、貴方がたの新技術推進事業もこれまでですな」

「ご心配には及ばない。生産は問題ないし、新技術の推進も続ける。今日は、早とちりされる前にその事を伝えに来たんですよ」

 ヒルストンは小さく鼻で笑う。

「これはずいぶんなやせ我慢をしていらっしゃいますな。無理をなさらず、事業を畳んだほうがよろしいのでは?」

 幾人かの職人が同調して頷く。ギルト長と思わしき白髪長ひげの男も、目で同意を示していた。

 今度はおれが笑う番だ。

「無理だって? ふふふっ、工房が焼けたくらいで諦めるとでも? それとも、みなさんなら、その程度で諦めて仕事を放り出すのですか? 見たところ凄腕揃いだというのに、お貴族様と仲良くしすぎて、職人魂が錆びついてしまっているのかな?」

 ひとり、ケンドレッドだけはにやりと笑ったが、他の職人たちからは睨まれ、いくつかの罵声も飛んでくる。

 おれは涼しく受け流し、ヒルストンとギルド長を睨みつける。

 おれがなにか言う前に、ギルド長が口を開いた。

「できると言うのは簡単だが、それをどうやって証明する?」

「今まで通り、黙って見ていればいい。おれたちは勝手に新しい物を作る」

「ふん、それで半端な物を作られては困る」

「ならどうして欲しい?」

「そうだな……。おい、ケンドレッド。お前もこいつらも盾を作るって言ってたな!? お前のところの新作で勝負してやれ!」

「ああ? もとからそのつもりだぜ!」

 ギルド長に名指しされたケンドレッドは、大声で即答する。

 ギルド長は再びおれに目を向ける。

「ということだ。お前たちの新作が、ペトロア工房の新作より出来が悪ければ登録は抹消……いや、それだけでは足りんな。すでにこのギルドから追放された者もいるのだ。登録抹消後は、速やかにこの国から出ていってもらう」

 おれは小さくため息をつく。

「それで、こちらが勝ったら事業存続を認める、と? ずいぶんとリスクとリターンが見合わない勝負だ」

 ギルド長は不敵に笑む。

「そうでもないぞ。お前たちが勝てたのなら、ペトロア工房を潰してやろう。ケンドレッドは職人ギルドを追放。目の上のたんこぶが消える。空いたギルド幹部の席に座らせてもいい」

 ケンドレッドは思わず目を剥く。

「なんだと、おいギルド長。聞いてねえぞ!」

「うるせえな、勝てばいいだろうが、勝てば! まさかお前自信がねえわけじゃねえよなぁ? なあケンドレッド、弟子になんぞ任せてないで、お前が本気でやれ! てめえのせいで若造に舐められてんだぞ!」

「…………」

 黙りこくり、ケンドレッドはただおれを睨む。

「ケンドレッドさんが消えて、ギルド幹部になれたとして、それがなんの得になる?」

「富と名声が手に入る。少なくとも名門ペトロア工房を叩き潰した新工房として、評判になるだろうな」

「そんなことしなくても、もう評判ですよ。驚くほどのお金ももらえている。貴族との癒着なんて必要ない」

「ならやめておくか? 不戦敗なら登録は抹消するが」

「いやせっかくだ。勝負は受ける。ただし、他のリターンが欲しい」

「ふん、わかっていないようだな。お前は要求できる立場にはない。今すぐ登録を抹消してやってもいいんだがな」

「そう言うならわかった。そちらの条件で勝負を受ける」

 それを聞いて、ヒルストンが手を叩いた。

「では期日はこれより三ヶ月後。互いに新作を持ち寄り、性能試験にて雌雄を決する。詳細は後ほど書面にて通達しましょう。それで構わんね?」

「ええ、構いません」

「……ああ、俺もそれでいい」

「よろしい。では決まりだ。ショウ殿は、退室願おう。これから職人ギルドの幹部会がある。部外者には聞かせられん話だ」

「ええ、失礼します」

 おれは退室した。

 これでひとまず、火事を理由に有無を言わさず登録を抹消されるのは防いだ。

 次は……。

「ケンドレッドさん」

 おれは会合が終わるまで待ち、ケンドレッドが帰り道にひとりになったところで声をかけた。

「ああ? なんだショウ、まだなんか用かよ?」

「ええ、是非あなたに協力をお願いしたい」
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