一度目の人生は散々だったので、二度目の人生をやり直させて頂きます

七宮 ゆえ

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一章

20. 掴んだ情報3

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 宿を出たあとミルフィ達はそのままどこにも寄ることなく、真っ直ぐローネイン邸を目指して歩く。その間ミルフィは先程のフェリクスの言葉を脳裏で繰り返し再生させていた。

(フィルが指していたのはきっとあの男のことよね
 ……つまりわたしの恐れていた予想が現実に一歩近づいたということ。……一体、あの男は何が目的なの?)

 ———王女様、 私は貴方に忠誠を捧げましょう。

 そう言って自分の目の前で跪いた、自分を一番初めに裏切った男を脳裏に描いたミルフィは、耐えるように己の唇を噛み締めた。

(っ嫌だ、あの声はいつもミルフィリアス王女としてのわたしだけを残してミルフィわたし個人を殺そうとする)

 少し思い出しただけでもミルフィの心はざわつき、ドロリとしたものが下へと落ちる。
 慌ててその記憶に蓋をしてから、ミルフィは冷静になろうと大きく息を吐いた。
 それに気が付いたアルベルトはミルフィを振り返って少し休憩するか?と提案する。
 どうやら疲れて溜め息を零したと思われたらしい。
 ミルフィはそれを否定することなく、大丈夫と言葉を返した。

(なにはともあれ、わたしが今一番優先すべきことはローネイン公爵の件の証拠を掴むこと。あの男を調べることではない)

 この件に〝例の人〟が関わっているのなら、そのうち嫌でもその情報を手に入れることになるかもしれないと思いながら、ミルフィはそれ以上個人的な面でそのことを考えるのを止めた。





 *    *    *

 邸に戻るとミルフィはアルベルトと別れ、すぐに自室へと戻った。
 ミルフィの部屋は本来の自室の四分の一程しか無いが、それでも従者用の部屋にしては随分と広いところだった。
 部屋に入り鍵を閉め、外に誰もいないことを確認するとミルフィは盛大に溜め息を吐きながら机の置かれているスペースに向かった。
 椅子に座ると先程フェリクスから渡された紙をポケットから取り出し、中身を広げてみた。

「……なにも、書いてない?」

 どういうことだとミルフィは首を捻る。
 そもそもフェリクスは意味のない行動をあまりしない。今の状況なら尚更だ。
 その紙の表面を指でなぞり、そしてふとその表面に微かな凹凸があることに気が付いた。

「もしかして……」

 ミルフィは椅子から立ち上がると“加護”を使って水を桶に入れていった。桶が満帆になると、そこに紙を浸した。
 すると、微かに盛り上がっていた部分以外のところだけが水で濡れ、何かが浮かび上がってきた。

「やっぱり。これ蝋ね」

 懐かしいわねと呟きながらミルフィは浸した紙を持ち上げる。
 蝋は水を弾く。
 これはそのことを活かして、紙の上に薄っすらと蝋を塗りそれを水に浸すことで文字が浮かび上がるようになる仕組みだった。
 幼少期にミルフィとフェリクスは二人でよくこの仕組みを使って遊んだりしていたからこその発想であった。ミルフィは浮かび上がってきた文字を丁寧に読み取っていく。



  08325 姉上はこの数字の持つ意味が分かりますか?宛先は姉上宛だったんですが、昨日僕が席を離していた隙に部屋に置かれていたんです。ほんの数秒のことだったので普通の人でそんな芸当をやってのけられる人など僕は姉上以外に知らないのでもしかしたら〝例の人〟が今回の件に関係してるかもしれないと思って手紙に書かさせていただきました。



「08325?」

 書かれていた数字にミルフィは首を傾げる。
 規則性のない数字の羅列はなにを意味するのかと訊かれても分かるはずがなかった。

「とりあえず、数字だけは覚えておきましょう」

 紙に用が無くなると、予めフェリクスに言われていたようにその紙を“加護”によって燃やし、そして捨てた。その数字に妙な既視感デジャヴを感じながら、ミルフィは寝る支度を整え、灯りを消した。
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