一度目の人生は散々だったので、二度目の人生をやり直させて頂きます

七宮 ゆえ

文字の大きさ
26 / 42
一章

25.薔薇と毒牙3

しおりを挟む
 着替えを済ませてからミルフィは自室から出ると、エドワードの執務室へと向かった。
 扉をノックしてから部屋の中へと入ると、そこには既にエドワードがいた。

「エドワード様、おはようございます!」

 にっこりと微笑んでミルフィが挨拶をすると、エドワードも笑って挨拶を返してきた。

「ミリア、セシリアから話は聞いているかな?」
「あ、はい!さっき聞きました」

 ミルフィの返事を聞いたエドワードは、机の引き出しを開けてそこから一枚の封筒を取り出し、机の上に置いた。

「これを届けてもらいたいんだ。できれば今から行ってきてもらってもいいかな?」
「勿論です!」

 元気よく返事をしてミルフィが置かれた封筒を手に取ろうと腕を伸ばすと、その腕をエドワードに掴まれる。
 突然のことにミルフィはビクリと身体を揺らしたが、手を払いのけそうになるのはなんとか堪えた。
 エドワードの軽率過ぎる行為に嫌悪感を滲ませそうになるが、それを表に出すことなくいつも通り少しだけ頰を染めて首を傾げてみせた。

「エ、エドワード様?」
「セシリアにもご褒美をあげてるからそろそろミリアにもあげようかな?」

 唐突に語り始めるエドワードにミルフィは困惑し、エドワードの顔をまじまじと見てしまう。
 しかしそれに気付くことなくエドワードは話続ける。

「ミリアだってご褒美欲しいよね?」

 明確な言葉を口にせずにそう告げるエドワードに、ミルフィは嫌な予感がした。

「どういう、ことでしょうか?」

 背筋に嫌な汗が流れる感覚がした。
 しかしエドワードは一層笑みを深めるばかりで何も告げてこない。

「エドワード様……?」

 次第にミルフィの中に焦りと恐怖心が出てくる。
 どうしても嫌な予感しかしないのだ。
 引き攣りそうになる表情筋を、それでもなんとか保ちつつ、エドワードを観察する。
 すると、エドワードが椅子から立ち上がって一歩此方へと足を踏み出してきた。
 思わずミルフィは後ずさってしまう。

「あ、あの……?」

 無言で笑みを浮かべつつこちらへと足を踏み出してくるエドワードを見て、ミルフィは本気で焦り出した。

(何この状況!?何されるのか分からないのにどうしろっていうの!?)

 じりじりと距離を縮めようとしてくるエドワードに、無意識のうちにミルフィは後退して行った。
 しかし、少し進んだところで靴がコツン…と壁に当たってしまった。
 そこでミルフィはあっと思った。
 どうして後ろに下がってしまったのだろうか、と。
 これではもう逃げられないではないか。
 ミルフィが内心で焦る中、エドワードは楽しそうな笑みを浮かべつつゆっくりと、しかし確実に距離を縮めてきた。

「ねえ、ミリア」

 そして、目の前に立ったエドワードは、ミルフィを囲むように両腕を壁につけ、逃げられないようにしてから耳元で囁いた。
 それにミルフィはぞっとする。

「私からの寵愛が欲しくないかい?」

 甘く囁くその声は酷く熱を帯び、異様な程にねっとりとしたものだった。

(き、気持ち悪い!!)

 ミルフィは率直にその言葉しか出てこなかった。
 しかし、今のミルフィは〝ミリア〟なのだ。
 ミリアはエドワードに好意を寄せているという設定にしてある為、この場から切り抜けられる方法が無かった。

(こんなことならそんな設定にしなければ良かったわ!〝ミリア〟ならこの状況を酷く喜んだことでしょうからね!!)

 過去の自分がどれほど軽率だったかを思い知り、悔いた。そして行き場のない怒りを過去の自分へと押し付ける。
 しかし、そんなことをしたところで現実逃避にしかならず、当たり前だが現状が変わることは無かった。

「ミリア……」

 そうしている間にエドワードの顔がミルフィへとゆっくり近付いていてきていた。

「っ……」

 この場を切り抜ける策が見つからず更に身体が竦んでしまったミルフィは、その場から動くことが出来ずに意味のない声を漏らしてしまう。

(この場で拒絶してしまったら今までのことが全て泡になってしまう……!!)

 一瞬その腹を蹴ってしまおうかという考えが脳裏をよぎったが、そんなことをしたら全てが台無しになってしまうと直ぐに諦める。同等に“加護”を使うのも却下だ。そうするとミルフィはこの場を抜け出す方法がなくなった。
 絶体絶命かと思われた、その時。
 コンコン。と、扉のノック音が唐突に部屋の中に響いた。

「失礼します」

 そして部屋の主の断りもなく扉が開く。
 不機嫌そうな顔をしながらエドワードがミルフィから離れていった。

(た、助かった……)

 ミルフィは安堵してほっと胸を撫で下ろす。そのまま力が抜けてその場に崩れ落ちそうになるのをなんとか堪えて、そして部屋へと入ってきた人物へと視線を向けた。
 そしてミルフィは目を見開く。

(な、アルト!?)

 ———部屋に乱入してきたのは他でもないアルベルトだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

やさしい魔法と君のための物語。

雨色銀水
ファンタジー
これは森の魔法使いと子供の出会いから始まる、出会いと別れと再会の長い物語――。 ※第一部「君と過ごしたなもなき季節に」編あらすじ※ かつて罪を犯し、森に幽閉されていた魔法使いはある日、ひとりの子供を拾う。 ぼろぼろで小さな子供は、名前さえも持たず、ずっと長い間孤独に生きてきた。 孤独な魔法使いと幼い子供。二人は不器用ながらも少しずつ心の距離を縮めながら、絆を深めていく。 失ったものを埋めあうように、二人はいつしか家族のようなものになっていき――。 「ただ、抱きしめる。それだけのことができなかったんだ」 雪が溶けて、春が来たら。 また、出会えると信じている。 ※第二部「あなたに贈るシフソフィラ」編あらすじ※ 王国に仕える『魔法使い』は、ある日、宰相から一つの依頼を受ける。 魔法石の盗難事件――その事件の解決に向け、調査を始める魔法使いと騎士と弟子たち。 調査を続けていた魔法使いは、一つの結末にたどり着くのだが――。 「あなたが大好きですよ、誰よりもね」 結末の先に訪れる破滅と失われた絆。魔法使いはすべてを失い、物語はゼロに戻る。 ※第三部「魔法使いの掟とソフィラの願い」編あらすじ※ 魔法使いであった少年は罪を犯し、大切な人たちから離れて一つの村へとたどり着いていた。 そこで根を下ろし、時を過ごした少年は青年となり、ひとりの子供と出会う。 獣の耳としっぽを持つ、人ならざる姿の少女――幼い彼女を救うため、青年はかつての師と罪に向き合い、立ち向かっていく。 青年は自分の罪を乗り越え、先の未来をつかみ取れるのか――? 「生きる限り、忘れることなんかできない」 最後に訪れた再会は、奇跡のように涙を降らせる。 第四部「さよならを告げる風の彼方に」編 ヴィルヘルムと魔法使い、そしてかつての英雄『ギルベルト』に捧ぐ物語。 ※他サイトにも同時投稿しています。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

【完結】大変申し訳ありませんが、うちのお嬢様に貴方は不釣り合いのようです。

リラ
恋愛
 婚約破棄から始まる、有能執事の溺愛…いや、過保護?  お嬢様を絶対守るマンが本気を出したらすごいんです。  ミリアス帝国首都の一等地に屋敷を構える資産家のコルチエット伯爵家で執事として勤めているロバートは、あらゆる事を完璧にこなす有能な執事だ。  そんな彼が生涯を捧げてでも大切に守ろうと誓った伯爵家のご令嬢エミリー・コルチエットがある日、婚約者に一方的に婚約破棄を告げられる事件が起こる。  その事実を知ったロバートは……この執事を怒らせたら怖いぞ!  後に後悔しエミリーとの復縁を望む元婚約者や、彼女に恋心を抱く男達を前に、お嬢様の婿に相応しいか見極めるロバートだったが…?  果たして、ロバートに認められるようなエミリーお嬢様のお婿候補は現れるのだろうか!? 【物語補足情報】 世界観:貴族社会はあるものの、財を成した平民が貴族位を買い新興貴族(ブルジョア)として活躍している時代。 由緒正しい貴族の力は弱まりつつあり、借金を抱える高位貴族も増えていった。 コルチエット家:帝国一の大商会を持つ一族。元々平民だが、エミリーの祖父の代に伯爵位を買い貴族となった資産家。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...