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一章
7. アポなし訪問は御遠慮ください
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「……なんでそんなに唸ってるのさ」
「え、ミル!?」
もんもんと、ただひたすらに自問自答を繰り返していた私の耳になんの前触れもなく飛び込んできたのは、つい最近から聞きなれるようになった誰かさんの、呆れたような声だった。
急いで振り返った先には案の定、呆れを隠せない表情でこちらを見つめているミルがいた。
それにしても急に声をかけないでほしい。いや、そもそも急に押し掛けてくるのもやめて欲しい。
「突然押しかけてくるのはどうかと思うよ」
「ん、リリー以外にするつもりはないから安心して」
「いや、私以外じゃなくて私にもして欲しくないんだけれど……」
「でも何も言わなくても皆入れてくれるし。フォリア様なんか率先して招きいれてくれるけれど」
「お、お母様……」
想像つくわ。突然訪ねてきたミルに対して笑顔で「いらっしゃい!」って声をかけるお母様の姿が安易に浮かぶわ……。
思わず私が頬を引き攣らせていると、そんなことはお構いなしにミルが部屋の中へと足を踏み入れてくる。
「それで、なんでそんなに唸ってたの?」
「まださっきの話終わってないんだけど!」
「続けたところで結論は変わらないと思うけれど」
「……」
なんでもないように告げられた言葉に、しかし私は否定出来なかった。そりゃあ変わらないだろうね。何せミルはお母様のお友達の子供なのだし、私達が引き合わされて以来仲良くしていることを知っているのだから。多分私がなんの前触れも無しにミルの屋敷を訪ねても、セルイラ様は喜んで招き入れてくれると思うもの。
ミルの言葉が正論すぎて、私は溜息を付く他なかった。
「で、どうかしたの?」
「……大したことじゃないから気にしなくていいよ」
もう一度尋ねてきたミルに、私は曖昧に笑って首を振った。
流石にお披露目の日に義弟が出来て、その義弟に将来殺されそうになるからどうにかしないとならないんだけれど、そもそもどうにか出来るものなのだろうか考えていたの、なんていう突拍子の無い話を打ち明ける気にはなれない。
言ったら言ったでどうして未来が分かるのかって訊かれそうだし、そうなったら前世の記憶とかも説明するようになるし。
ミルならば真剣に私の話を聞いてくれるとは思うけれど、こんな馬鹿げた話を信じてくれるかと問われたら微妙だしなぁ……
しかし、ミルは更に食い下がってきた。
「大したことないかどうかは、聞いてみないと分からないと思うけど」
「……ミルって意外と頑固だよね」
「だって気になるじゃん。それに悩んでるなら、もしかしたら俺も力になれるかもしれないよ?」
素直だね、ミルは。まあまだ子供だもん、好奇心旺盛なのは良いことだよね。
でも、今この時はそんな好奇心はいらないぞ。
「……」
「……」
ミルが私を無言でじっと見つめてくる。
その視線に私は怯みそうになったけれど、何故だか逸らしたら負けな気がしたので私もそのままミルを見つめ返した。
それからどれくらい時間が経過したのだろうか。きっと実際にはほんの数分程度のことだったのだろうけれど、感覚的には長い時間そうしていたように思えた。
そして先に視線を逸らしたのは、———私でした。
はい、私です。そうです私は負けました!!
あまりにも真っ直ぐに見つめられた所為で、何か私が後ろめたいことを隠しているような微妙な気持ちにさせられたのだ。別に後ろめたいわけではないのにな。
私は膝の上に置かれた手へと視線を落としながら、躊躇いがちに口を開いた。
「……私が何を言っても馬鹿にしないっていうなら」
最低限でもこれだけはお願いしたい。もし馬鹿にするって言うならば絶対に言ってやらないんだから!!
そう思いながら告げた言葉に、ミルは真面目な表情で頷いた。
「馬鹿にしないよ。人の悩んでることを馬鹿にするなんていう素晴らしい趣味は、生憎なことに俺は持ち合わせてないんでね」
「そんな趣味素晴らしくないから。ミルがそんなのを持ち合わせてられたら、私にとっては最悪の一言に尽きるから」
むうっと唇を尖らせながら不満そうにする私を見たミルは、真面目そうだった顔を途端に崩したのだった。
「え、ミル!?」
もんもんと、ただひたすらに自問自答を繰り返していた私の耳になんの前触れもなく飛び込んできたのは、つい最近から聞きなれるようになった誰かさんの、呆れたような声だった。
急いで振り返った先には案の定、呆れを隠せない表情でこちらを見つめているミルがいた。
それにしても急に声をかけないでほしい。いや、そもそも急に押し掛けてくるのもやめて欲しい。
「突然押しかけてくるのはどうかと思うよ」
「ん、リリー以外にするつもりはないから安心して」
「いや、私以外じゃなくて私にもして欲しくないんだけれど……」
「でも何も言わなくても皆入れてくれるし。フォリア様なんか率先して招きいれてくれるけれど」
「お、お母様……」
想像つくわ。突然訪ねてきたミルに対して笑顔で「いらっしゃい!」って声をかけるお母様の姿が安易に浮かぶわ……。
思わず私が頬を引き攣らせていると、そんなことはお構いなしにミルが部屋の中へと足を踏み入れてくる。
「それで、なんでそんなに唸ってたの?」
「まださっきの話終わってないんだけど!」
「続けたところで結論は変わらないと思うけれど」
「……」
なんでもないように告げられた言葉に、しかし私は否定出来なかった。そりゃあ変わらないだろうね。何せミルはお母様のお友達の子供なのだし、私達が引き合わされて以来仲良くしていることを知っているのだから。多分私がなんの前触れも無しにミルの屋敷を訪ねても、セルイラ様は喜んで招き入れてくれると思うもの。
ミルの言葉が正論すぎて、私は溜息を付く他なかった。
「で、どうかしたの?」
「……大したことじゃないから気にしなくていいよ」
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流石にお披露目の日に義弟が出来て、その義弟に将来殺されそうになるからどうにかしないとならないんだけれど、そもそもどうにか出来るものなのだろうか考えていたの、なんていう突拍子の無い話を打ち明ける気にはなれない。
言ったら言ったでどうして未来が分かるのかって訊かれそうだし、そうなったら前世の記憶とかも説明するようになるし。
ミルならば真剣に私の話を聞いてくれるとは思うけれど、こんな馬鹿げた話を信じてくれるかと問われたら微妙だしなぁ……
しかし、ミルは更に食い下がってきた。
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「……ミルって意外と頑固だよね」
「だって気になるじゃん。それに悩んでるなら、もしかしたら俺も力になれるかもしれないよ?」
素直だね、ミルは。まあまだ子供だもん、好奇心旺盛なのは良いことだよね。
でも、今この時はそんな好奇心はいらないぞ。
「……」
「……」
ミルが私を無言でじっと見つめてくる。
その視線に私は怯みそうになったけれど、何故だか逸らしたら負けな気がしたので私もそのままミルを見つめ返した。
それからどれくらい時間が経過したのだろうか。きっと実際にはほんの数分程度のことだったのだろうけれど、感覚的には長い時間そうしていたように思えた。
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