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一章
8. もしもの話
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さて、どう説明しようかな。流石に前世どうこうの話はしたくないし……もしも設定でいけばいい?
ゲーム時の時なんだから、実際に私にとってはもしもであることには変わりないんだし、嘘をついてるわけじゃないからね。
「ミル、もしもね?もしも自分に義理の弟が出来たとして、その弟が徐々にヤンデレになっていったらの話ね?」
「はいはい、もしもの話ね。義理の弟が出来るっていうもしもの話ね。というか、何でヤンデレ限定?」
「そういう設定の話なの!突っ込まないで聞いてて!!」
びしっと指さしながら告げた私に、ミルは笑いながら「はいはい」と頷いた。
うぅ、子供扱いされてる……精神年齢私の方が高いはずなのに、おかしいでしょう……
「それで、そのヤンデレな弟がもしも出来たら何があるの?」
落ち込み気味になる私に気が付いたのか、ミルがその先を促してくる。その言葉に私は心を切り替えてから、慎重に言葉を選んで続きの言葉を紡いだ。
「もしかしたらヤンデレになるかもしれないって言うことなんだけれど、まあそこは置いておいて。……もしも私の義理の弟をお父様が連れてきたら、もしかしたらお母様がお父様の不貞の子かもって疑ってしまうかもしれないじゃない?それで、そのことが原因で家族の仲が拗れることになってしまうかもしれなくなったら、どうやってお母様の疑惑を解いて家族仲が壊れるのを防げば良いと思う?」
「随分と壮大なもしも話だったな。うーん、そうだなぁ……」
そういうとミルは顎に手を当てて、真剣に考え込んだ。
「……その少年って何処から来たの?」
「それは分からないわ。でも、どこからか引き取られてきたっていうことは確実なの」
「その引き取られる前の場所と、どうして引き取ってきたのかっていう説明はしてないの?」
「してない」
いきなり連れてきて「今日から新しい家族になるんだよ」っていう言葉しか聞いてないなー。多分お父様、誰にもきちんと事情を説明してなかったと思う。
ゲーム時の記憶を掘り起こしながら私がきっぱりと首を振ると、ミルは「それじゃあ簡単なことじゃん」と当たり前のように告げてきた。
「引き取った理由を一から丁寧に説明してもらえば納得出来るんじゃないの?」
「……あ」
ミルの言葉に私は間抜けな声をあげてしまう。
たしかにその通りだ。詳しい話を聞けなかったからお母様が勘違いするようになるんだから、だったら説明してもらえれば良いだけの話じゃないか。
なんでこんなにも簡単で単純なことに気が付かなかったんだろう、と私は自分自身に呆れる。
ただ漠然とどうにかしなくちゃ!と焦っていたせいで一番簡単で確実な方法を見落としていたのだ。
自分の考えの甘さ加減に笑ってしまう。
「考えればすぐ分かることなのに、なんで複雑に考えようとしてたんだろう」
「まあ、誰だって簡単なことを見落とすなんてよくあることだよ」
ミルはそう呟いた私を慰めるかのようにそう言った。
その言葉に私はこくりと頷いつつ、これで最初のフラグは折ること出来るかなとちょっぴり安堵した。
まあ、ゲームの補正が効いてしまう可能性だってもしかしたらあるかもしれないから、完全に安心出来るなんてことは言い難いのだけれど。
「ありがとう、ミル。おかげで解決策を見つけることが出来そうだよ!」
「それなら良かったね」
笑みを浮かべながらミルに感謝する私に、ミルは少しだけ目を細めてから優しく笑った。
……うーん、ミルってば本当に五歳児なの?もしかしてミルも前世の記憶があったりとかするのかな。妙に大人っぽいというか、とても年下とは思えないのだけれど。でもセシルお兄様もとても六歳とは思えないし、この世界ではそれが普通なのだろうか。
なんてことを考えていると、ミルに声をかけられた。
「ところで、リリーのお披露目はいつやるの?」
「え?ああ、それなら来月の十五日だったと思うよ。今日の朝にお父様がそう言ってたから。ミルは……」
「俺ならもう三ヶ月前に終わってるけど」
「え、そうだったの!?つまりミルってもう六歳だったの!?」
「そうだよ。リリー、もしかしてまだ五歳かと思ってた?」
思ってました。さっきまでずっと五歳だと連呼してました。
でも、そっかぁ。私より四ヶ月も早く産まれていたのかぁ。だから小さい子みたいに見えなかったのかな?いや、それは全く関係ないか。
「ミルはお披露目の時緊張した?」
「特にしなかったよ。相変わらず周りは俺に媚を売ってきて正直面倒だったけれど」
「あー、ははは……嫡男だもんね、ミル。おこぼれに預かりたいって人が多そうだもんね」
大変だね、高位貴族の子供って。
なんて人事みたいに考えていると、ミルが呆れたように溜息を付いた。
「リリーだってその高位貴族の一人なんだけど?きっとリリーの場合は公爵家と繋がりを持ちたいからって理由で色んな人から婚約者候補として紹介されることになると思うよ」
「……わぁ」
「すっごく嫌そうな顔」
あからさまに顔を顰める私を見て、ミルが面白そうに笑う。
「当日は多分俺も行くことになるだろうし、そうなったら話し相手くらいならなってあげるよ。話していれば少しは遠慮してくれる人もいるだろうし」
「全員ってわけじゃないんだ……でも、少しでも遠慮してくれる人がいるのはありがたいなぁ。うん、そうしたらミルを見つけ次第突撃してあげる」
「突撃してきたら一気に令嬢としての対面崩れそうだけれどいいの?猫被らないの?」
「……被りますけど」
被っている猫がとれたらそれこそ大惨事だ。一応これでも公爵家の娘。対面はとっても大事である。
それに、もしも私が令嬢らしからぬことをしでかしたら、それだけで両親に迷惑をかけてしまいかねないから。貴族社会は足の引っ張り合いなんて日常茶飯事なんだから。完全な味方であるとは言えない家は警戒しておくことに越したことはない。
だから私は、ノアのことを考えておくこともだけれど、当日は最後まで令嬢らしくお淑やかにいこうと心に誓ったのだった。
ゲーム時の時なんだから、実際に私にとってはもしもであることには変わりないんだし、嘘をついてるわけじゃないからね。
「ミル、もしもね?もしも自分に義理の弟が出来たとして、その弟が徐々にヤンデレになっていったらの話ね?」
「はいはい、もしもの話ね。義理の弟が出来るっていうもしもの話ね。というか、何でヤンデレ限定?」
「そういう設定の話なの!突っ込まないで聞いてて!!」
びしっと指さしながら告げた私に、ミルは笑いながら「はいはい」と頷いた。
うぅ、子供扱いされてる……精神年齢私の方が高いはずなのに、おかしいでしょう……
「それで、そのヤンデレな弟がもしも出来たら何があるの?」
落ち込み気味になる私に気が付いたのか、ミルがその先を促してくる。その言葉に私は心を切り替えてから、慎重に言葉を選んで続きの言葉を紡いだ。
「もしかしたらヤンデレになるかもしれないって言うことなんだけれど、まあそこは置いておいて。……もしも私の義理の弟をお父様が連れてきたら、もしかしたらお母様がお父様の不貞の子かもって疑ってしまうかもしれないじゃない?それで、そのことが原因で家族の仲が拗れることになってしまうかもしれなくなったら、どうやってお母様の疑惑を解いて家族仲が壊れるのを防げば良いと思う?」
「随分と壮大なもしも話だったな。うーん、そうだなぁ……」
そういうとミルは顎に手を当てて、真剣に考え込んだ。
「……その少年って何処から来たの?」
「それは分からないわ。でも、どこからか引き取られてきたっていうことは確実なの」
「その引き取られる前の場所と、どうして引き取ってきたのかっていう説明はしてないの?」
「してない」
いきなり連れてきて「今日から新しい家族になるんだよ」っていう言葉しか聞いてないなー。多分お父様、誰にもきちんと事情を説明してなかったと思う。
ゲーム時の記憶を掘り起こしながら私がきっぱりと首を振ると、ミルは「それじゃあ簡単なことじゃん」と当たり前のように告げてきた。
「引き取った理由を一から丁寧に説明してもらえば納得出来るんじゃないの?」
「……あ」
ミルの言葉に私は間抜けな声をあげてしまう。
たしかにその通りだ。詳しい話を聞けなかったからお母様が勘違いするようになるんだから、だったら説明してもらえれば良いだけの話じゃないか。
なんでこんなにも簡単で単純なことに気が付かなかったんだろう、と私は自分自身に呆れる。
ただ漠然とどうにかしなくちゃ!と焦っていたせいで一番簡単で確実な方法を見落としていたのだ。
自分の考えの甘さ加減に笑ってしまう。
「考えればすぐ分かることなのに、なんで複雑に考えようとしてたんだろう」
「まあ、誰だって簡単なことを見落とすなんてよくあることだよ」
ミルはそう呟いた私を慰めるかのようにそう言った。
その言葉に私はこくりと頷いつつ、これで最初のフラグは折ること出来るかなとちょっぴり安堵した。
まあ、ゲームの補正が効いてしまう可能性だってもしかしたらあるかもしれないから、完全に安心出来るなんてことは言い難いのだけれど。
「ありがとう、ミル。おかげで解決策を見つけることが出来そうだよ!」
「それなら良かったね」
笑みを浮かべながらミルに感謝する私に、ミルは少しだけ目を細めてから優しく笑った。
……うーん、ミルってば本当に五歳児なの?もしかしてミルも前世の記憶があったりとかするのかな。妙に大人っぽいというか、とても年下とは思えないのだけれど。でもセシルお兄様もとても六歳とは思えないし、この世界ではそれが普通なのだろうか。
なんてことを考えていると、ミルに声をかけられた。
「ところで、リリーのお披露目はいつやるの?」
「え?ああ、それなら来月の十五日だったと思うよ。今日の朝にお父様がそう言ってたから。ミルは……」
「俺ならもう三ヶ月前に終わってるけど」
「え、そうだったの!?つまりミルってもう六歳だったの!?」
「そうだよ。リリー、もしかしてまだ五歳かと思ってた?」
思ってました。さっきまでずっと五歳だと連呼してました。
でも、そっかぁ。私より四ヶ月も早く産まれていたのかぁ。だから小さい子みたいに見えなかったのかな?いや、それは全く関係ないか。
「ミルはお披露目の時緊張した?」
「特にしなかったよ。相変わらず周りは俺に媚を売ってきて正直面倒だったけれど」
「あー、ははは……嫡男だもんね、ミル。おこぼれに預かりたいって人が多そうだもんね」
大変だね、高位貴族の子供って。
なんて人事みたいに考えていると、ミルが呆れたように溜息を付いた。
「リリーだってその高位貴族の一人なんだけど?きっとリリーの場合は公爵家と繋がりを持ちたいからって理由で色んな人から婚約者候補として紹介されることになると思うよ」
「……わぁ」
「すっごく嫌そうな顔」
あからさまに顔を顰める私を見て、ミルが面白そうに笑う。
「当日は多分俺も行くことになるだろうし、そうなったら話し相手くらいならなってあげるよ。話していれば少しは遠慮してくれる人もいるだろうし」
「全員ってわけじゃないんだ……でも、少しでも遠慮してくれる人がいるのはありがたいなぁ。うん、そうしたらミルを見つけ次第突撃してあげる」
「突撃してきたら一気に令嬢としての対面崩れそうだけれどいいの?猫被らないの?」
「……被りますけど」
被っている猫がとれたらそれこそ大惨事だ。一応これでも公爵家の娘。対面はとっても大事である。
それに、もしも私が令嬢らしからぬことをしでかしたら、それだけで両親に迷惑をかけてしまいかねないから。貴族社会は足の引っ張り合いなんて日常茶飯事なんだから。完全な味方であるとは言えない家は警戒しておくことに越したことはない。
だから私は、ノアのことを考えておくこともだけれど、当日は最後まで令嬢らしくお淑やかにいこうと心に誓ったのだった。
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