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一章
9.本を読む時には文字に気を付けましょう
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「むぅぅ…」
今日は朝からずっと図書室に居座っております。
何故かって?魔導書を読むために決まってるでしょう?
なんたってここは『恋きら』の世界!『恋きら』はファンタジー世界なんだもの、魔法がある前提で話が進んでいくものなのだ!
魔法って使えたらとっても楽しそうじゃない?
リリーローズだって使っていたんだから、私も勉強したら使えるようになるでしょう?
というわけで、私は今魔法の勉強中なのです!
と、言いつつ内容が難し過ぎてうんうんうなってる最中だけど……。
「……はぁ、疲れたぁ」
取り敢えず一冊読み終えた私は、本をパタン……と閉じながら溜め息をついた。
「難しい……。もう少し子供向けなのを読んだ方がよさそうかも……」
読み終えた本を本棚に戻しながら、次はどれを見ようかなぁ、と迷っていると、扉が開く音が微かに聞こえてきた。
誰だろう?
私は振り向いて入ってきた人を確認した。
「セシルお兄様?」
「リリー、こんなところにいたんだね」
そう言って私に近寄ってきたのはセシルお兄様だった。
言い方からして私を探してるようだけれど、どうかしたのかな?
私は不思議に思って首を傾げた。
「何かあったんですか?」
「いや、何もないよ?ただ朝からリリーの姿が見えなかったからどこにいるのか探していただけだから」
ああ、そういうことか。
「何を読んでいたんだい?」
セシルが私の腕の先にある本を視線で追って、そしてその本を自身の手に取った。
「魔導書を読んでいたのか。……それにしても、これをリリーが読むのは……」
「やっぱりまだ早いですよね。内容は覚えたんですけれど、いまいち理解が出来ないんです……」
だから次はもう少し分かりやすいものを探そうかと思って、と私は言葉を続けようとしたが、それはセシルお兄様によって遮られてしまう。
「……リリー、どういうこと?」
驚愕に目を見開いたセシルお兄様に何故だか私は問い詰められた。
え、何?私何か変なこと言ったっけ?
「えっと?お兄様?」
頭に疑問符が浮かんでは消える。
そしてセシルお兄様、顔が近いんですけど。
「今、この本が読めるって言ったよね?」
ええ、言いましたね。それが何か?
「……ちょっとここの冒頭部分を読んでみて」
そう言ってセシルお兄様がとあるページを開いて、そこの冒頭部分を指差した。
えーと、どれどれ……?
「『禁忌魔法について。禁忌魔法とは、その名の通り禁忌とされてきている魔法のことである。古代魔法では今現在解明のされていないものも多いが、一部のものは解明が進んでいる。その中で、人の精神を操れるものや、生死を理から外すもの、そういった魔法は最も危険視されており、古来からその魔法を使うことを強く禁止していた。』」
「そこまででいいよ」
セシルお兄様の言葉に私は読むのをやめて顔を上げた。
……なんで頭を抱えているの、セシルお兄様。
「あの、お兄様……?」
「ねぇリリー、どうやってこの文字を読めるようになったんだい?」
文字?
え、普通の文字だよね?
「いつもの文字と変わってないと思いますけど……?」
しかし、セシルお兄様は首を横に振って否定する。
「これは古代文字で書かれているものだよ。この文字は複雑過ぎるから、国家機密レベルの内容は国の上層部でしか読まないように、と古代文字で管理されているんだ。だから、それ以外の第三者がこの文字を教わることはないし、ましては読めるはずがないんだよ」
「え……」
「リリー、どうしてこの文字を読めるようになったの?誰かに教わったのかい?」
セシルお兄様、笑顔なんだけれど、有無を言わさないというその圧力がひしひしと伝わってくるよ……
というよりも国の上層部しか知らない文字をセシルお兄様も読めるってことだよね?その言葉と様子からするとさ。
あれ?そしたらなんでセシルお兄様も読めるの?いや、たしかに将来は国の上層に位置することになるだろうし、重臣間違いなしだろうけれどさ、まだ子供だよね?
自分のこと、絶対棚に上げてるよね?
「リリー?」
早く答えてくれる?という無言の圧力が凄いんですけど……
やだ、背中に嫌な汗が伝ってくるのを感じるよ。
「ええっと……その……」
何か良い言い訳ないかと必死になって思考を巡らせるけど、そんな案が浮かぶはずがなく。
わーん、どうしようー!!
そもそも、本当に同じ文字にしか見えないし。文字を目で追えば日本語読んでるのと同じような感じになるんだもん!習ってる文字だって同じような感じになるし!!
……あれ?これって意識してなかったけれど、もしかしなくてもこれは言語チートなの?
「あの、ですね。……その……」
駄目だぁ……。何も思い浮かばないよ!
流石に説明するために前世どうこうなんて話が出来るわけないじゃん!!第一セシルお兄様にいったところで冗談に取られるだろうし最悪の場合一笑に付されそうだし。
無理だ。セシルお兄様が納得出来るような説明なんて私には出来っこないっ!!
「……分かった。リリーが言いたくないのならそれでいいよ」
私がずっと口籠っていると、とうとうセシルお兄様の方が折れてくれた。良かった……
私はほっと胸を撫で下ろした。
「でも、古代文字が読めることを、誰かに話したりしないでね?勿論、父上達にもだよ?」
セシルお兄様の言葉に私は素直にコクコクと頷く。
勿論ですとも。これ以上大変なことになんてなりたくないし!
そんな私の様子を見て、ようやくセシルお兄様は元の穏やかな表情に戻った。
「リリー、魔法について調べたいのなら、こっちを読んだらいいよ」
「あ、ありがとうございます、お兄様」
セシルお兄様から渡されたのは、少し薄めの本だった。
こっちのは子供用のなのかな?
何はともあれ、ありがたく頂戴しようと思う。
「勉強するのもいいけれど、リリーはまだ五歳なんだからそんなに根を詰めなくてもいいと思うよ」
苦笑気味にそう告げるセシルお兄様に、私はまず最初にこの国の一般的な文字がどれだかきちんと把握出来るようにしておかなくてはと曖昧に笑いながら心の底でひっそりとそう思ったのであった。
今日は朝からずっと図書室に居座っております。
何故かって?魔導書を読むために決まってるでしょう?
なんたってここは『恋きら』の世界!『恋きら』はファンタジー世界なんだもの、魔法がある前提で話が進んでいくものなのだ!
魔法って使えたらとっても楽しそうじゃない?
リリーローズだって使っていたんだから、私も勉強したら使えるようになるでしょう?
というわけで、私は今魔法の勉強中なのです!
と、言いつつ内容が難し過ぎてうんうんうなってる最中だけど……。
「……はぁ、疲れたぁ」
取り敢えず一冊読み終えた私は、本をパタン……と閉じながら溜め息をついた。
「難しい……。もう少し子供向けなのを読んだ方がよさそうかも……」
読み終えた本を本棚に戻しながら、次はどれを見ようかなぁ、と迷っていると、扉が開く音が微かに聞こえてきた。
誰だろう?
私は振り向いて入ってきた人を確認した。
「セシルお兄様?」
「リリー、こんなところにいたんだね」
そう言って私に近寄ってきたのはセシルお兄様だった。
言い方からして私を探してるようだけれど、どうかしたのかな?
私は不思議に思って首を傾げた。
「何かあったんですか?」
「いや、何もないよ?ただ朝からリリーの姿が見えなかったからどこにいるのか探していただけだから」
ああ、そういうことか。
「何を読んでいたんだい?」
セシルが私の腕の先にある本を視線で追って、そしてその本を自身の手に取った。
「魔導書を読んでいたのか。……それにしても、これをリリーが読むのは……」
「やっぱりまだ早いですよね。内容は覚えたんですけれど、いまいち理解が出来ないんです……」
だから次はもう少し分かりやすいものを探そうかと思って、と私は言葉を続けようとしたが、それはセシルお兄様によって遮られてしまう。
「……リリー、どういうこと?」
驚愕に目を見開いたセシルお兄様に何故だか私は問い詰められた。
え、何?私何か変なこと言ったっけ?
「えっと?お兄様?」
頭に疑問符が浮かんでは消える。
そしてセシルお兄様、顔が近いんですけど。
「今、この本が読めるって言ったよね?」
ええ、言いましたね。それが何か?
「……ちょっとここの冒頭部分を読んでみて」
そう言ってセシルお兄様がとあるページを開いて、そこの冒頭部分を指差した。
えーと、どれどれ……?
「『禁忌魔法について。禁忌魔法とは、その名の通り禁忌とされてきている魔法のことである。古代魔法では今現在解明のされていないものも多いが、一部のものは解明が進んでいる。その中で、人の精神を操れるものや、生死を理から外すもの、そういった魔法は最も危険視されており、古来からその魔法を使うことを強く禁止していた。』」
「そこまででいいよ」
セシルお兄様の言葉に私は読むのをやめて顔を上げた。
……なんで頭を抱えているの、セシルお兄様。
「あの、お兄様……?」
「ねぇリリー、どうやってこの文字を読めるようになったんだい?」
文字?
え、普通の文字だよね?
「いつもの文字と変わってないと思いますけど……?」
しかし、セシルお兄様は首を横に振って否定する。
「これは古代文字で書かれているものだよ。この文字は複雑過ぎるから、国家機密レベルの内容は国の上層部でしか読まないように、と古代文字で管理されているんだ。だから、それ以外の第三者がこの文字を教わることはないし、ましては読めるはずがないんだよ」
「え……」
「リリー、どうしてこの文字を読めるようになったの?誰かに教わったのかい?」
セシルお兄様、笑顔なんだけれど、有無を言わさないというその圧力がひしひしと伝わってくるよ……
というよりも国の上層部しか知らない文字をセシルお兄様も読めるってことだよね?その言葉と様子からするとさ。
あれ?そしたらなんでセシルお兄様も読めるの?いや、たしかに将来は国の上層に位置することになるだろうし、重臣間違いなしだろうけれどさ、まだ子供だよね?
自分のこと、絶対棚に上げてるよね?
「リリー?」
早く答えてくれる?という無言の圧力が凄いんですけど……
やだ、背中に嫌な汗が伝ってくるのを感じるよ。
「ええっと……その……」
何か良い言い訳ないかと必死になって思考を巡らせるけど、そんな案が浮かぶはずがなく。
わーん、どうしようー!!
そもそも、本当に同じ文字にしか見えないし。文字を目で追えば日本語読んでるのと同じような感じになるんだもん!習ってる文字だって同じような感じになるし!!
……あれ?これって意識してなかったけれど、もしかしなくてもこれは言語チートなの?
「あの、ですね。……その……」
駄目だぁ……。何も思い浮かばないよ!
流石に説明するために前世どうこうなんて話が出来るわけないじゃん!!第一セシルお兄様にいったところで冗談に取られるだろうし最悪の場合一笑に付されそうだし。
無理だ。セシルお兄様が納得出来るような説明なんて私には出来っこないっ!!
「……分かった。リリーが言いたくないのならそれでいいよ」
私がずっと口籠っていると、とうとうセシルお兄様の方が折れてくれた。良かった……
私はほっと胸を撫で下ろした。
「でも、古代文字が読めることを、誰かに話したりしないでね?勿論、父上達にもだよ?」
セシルお兄様の言葉に私は素直にコクコクと頷く。
勿論ですとも。これ以上大変なことになんてなりたくないし!
そんな私の様子を見て、ようやくセシルお兄様は元の穏やかな表情に戻った。
「リリー、魔法について調べたいのなら、こっちを読んだらいいよ」
「あ、ありがとうございます、お兄様」
セシルお兄様から渡されたのは、少し薄めの本だった。
こっちのは子供用のなのかな?
何はともあれ、ありがたく頂戴しようと思う。
「勉強するのもいいけれど、リリーはまだ五歳なんだからそんなに根を詰めなくてもいいと思うよ」
苦笑気味にそう告げるセシルお兄様に、私はまず最初にこの国の一般的な文字がどれだかきちんと把握出来るようにしておかなくてはと曖昧に笑いながら心の底でひっそりとそう思ったのであった。
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