転生したら悪役令嬢になっていましたが、婚約者が推しなので全力でフラグをへし折ろうかと思います!(改稿版)

七宮 ゆえ

文字の大きさ
12 / 28
一章

11.心穏やかに過ごせる時間はいつでも限られています

しおりを挟む
「それで、リリーはこれからどうするの?」
「うーん、ひとまず挨拶をしないとならない人はお父様と一緒にしたから他は特にやることないんだよね。後は、同じ歳くらいの女の子とか、友達になれそうな子を見つけておくといいよっていうお兄様からの助言があるくらいで、特にこれといってこの後どうするのか決まってないのよね」

 そう言いながら、私は会場となっているスターライト邸のサロンの中を見渡した。
 我が家ながら、サロンの広さに未だ驚きを感じております。圧倒します。体育館並みの広さは余裕でありそう。……いや、そもそも体育館なんかとは比べ物にならない程立派な部屋なのだけれど。なんで比べたんだろう、サロンに対して失礼だわ。
 余計な思考を遮断して、私は本来の目的のものを探す。そして、目的を見つけた私はそこを指さした。

「あ、ほらあそこ。色んなご令嬢が集まってるじゃない?だから、そういうところに行って気の合いそうな子を探すのもいいと思うよってお兄様が行ってたの」
「ああ、なるほど。それなら……」
「でも、ミルがいるから今日はいいかな」

 頷きかけたミルを私の言葉で遮る。私は行くだなんて一言も言ってないんだから頷かないでよ。話はちゃんと最後まで聞いて、ミル。

「なんで?行きたいんじゃないの?」

 ミルは心底不思議そうに首を傾げて私を見つめてくる。
 そんなミルに、私は肩を竦めながら口を開いた。

「別に行きたいって程じゃないし。そもそもあんなところに飛び込んでいったら、絶対にミルが大変なことになるでしょう?鬱陶しいだろうし疲れるだろうし」

 それに、ミルがいるなら私にはそれで十分だもの。
 そう私が告げると、ミルは何故か微妙そうな顔をする。
 ……何か変な事言ったっけ私。
 今度は私が首を傾げていると、ミルは微かに首を振ってから苦笑した。

「……いや、なんでもない。それよりもリリー、最後の言葉はあんまりほかの人に使わない方がいい、絶対に勘違いされるから」
「え?勘違い?そもそもミル以外に言うことはないと思うけれど」
「……これだから尚更たちが悪いんだよなぁ、リリーは」

 何故か一瞬固まったミルは、それから溜息をつきつつ何事かを呟いていた。

「ミル?」
「取り敢えず、そういうことも言わないで」
「そういうこと?」
「だから、さっきリリーが言ったようなことだよ!」

 珍しくミルが語尾を強める。けれどもさっき私何言った?特に変なことを言った覚えは本当に無いのだけれど。
 私は頭の上にいくつもの疑問符クエスチョンマークを浮かべる。

「だから、さっきの……っやっぱりもういい。今のリリーに言ったところで自覚が出来ないなら何も変わらないだろうし」

 言いかけた言葉を途中で飲み込んで、ミルは疲れた様子で再び溜息を付いた。
 大丈夫かな、ミル。脱力しかけてるみたいなんですけれど。
 でも、ミルの言動をみると疲れさせた原因は私みたい。
 その理由は今のところ全く不明なのだが、私が原因であることに変わりはなさそうなので、一応心の中で謝っておくことにする。
 ごめんなさいミル。何に対して謝ってるのか私はわからないけれど取り敢えずごめんよ。




 *   *   *


 その頃、サロンと隣接したとある一室にて。

「大丈夫だ。君はもう、スターライト家の、私の息子なんだ。だからもう、大丈夫だよ」
「……はい、ありがとうございます。……公爵、様」

 そこにはこの家の持ち主であるアルバート、つまりリリーローズの父親がいた。
 そしてもう一人。こちらはリリーローズと同じ歳くらいの少年だ。
 少年は、その緑色の瞳の奥に不安そうな色を讃えながら、震える声で言葉を紡ぐ。
 そんな少年の様子に、アルバートは僅かに苦笑しながらも少年を安心させるように、穏やかな笑みを浮かべて言った。

「私のことは公爵ではなくて父と呼んでくれて構わない。ここにはもう怖いことなんて何も無いんだから。あの家のように、君を虐げたりなんてことは絶対にこの私がさせないからな。だからもう、大丈夫だよ。君の姉となるリリーローズは、そして兄となるセシルはとても優しくて良い子達なんだ。きっと、仲良くできるよ」
「……は、い」

 不安そうな色はその表情から拭えないものの、それでも意志を持った瞳は凛と輝いていた。その様子にアルバートは笑みを浮かべる。そして、少年へと手を差し伸べた。その手に、少年は恐る恐るといった様子で自らの手を重ねる。
 アルバートはそんな少年に笑みを深める。

「よし、それじゃあ行こうか、

 ノア、と。そう呼ばれた少年は一抹の拭いきれない不安を感じながらもアルバートの言葉にしっかりと頷いた。

(……ぼくのあにうえになるセシル様は、とてもやさしい人だった。公爵様……ちちうえも。リリーローズ様は、どんな方なのでしょうか)

 そして少年は、期待と不安の混ざった表情を浮かべながらこれから会うこととなるリリーローズの姿を、そしてその心根を想像したのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく…… (第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

処理中です...