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一章
12. どうか円満に終えられますように
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「は、初めまして、……リリーローズ様」
恐る恐るといった様子で挨拶をしてくれたのは、お父様の背後にぴったりとくっついた男の子。
お父様の後ろに隠れているとはいえ、顔を半分程こちらへと覗かせているので鮮やかな赤色の髪と綺麗な翡翠色の瞳は良く見えたし、その顔立ちはあどけないながらも十分に整っていることが目に見えて伺えた。
「リリー、この子は……ノアは今日から君の弟になるんだよ」
お父様が男の子——ノアの頭に手をぽんっと乗せながら説明する。
ええ、ええ。そうでしょうね。説明なんてされなくたってその子を見た瞬間に私はわかりましたよ!
赤い髪に緑色の目。そして名前がノア。
幼少期の顔立ちは知らないとはいえ、明らかに『恋きら』に出てくる攻略対象の一人でヤンデレ担当のノアではないですか!!
それにそもそもこの日に義弟が出来ることはゲーム時の設定からも知っていたわけでして。
ああ、ついに最初の死亡フラグ様と遭遇することになりました……。
セシルお兄様同様、避けて通ることは出来ない攻略対象者なのでフラグをへし折るための準備は一応考えておいてありますけれどね。
そんなことを考えながら、しかし私は表情におくびにも出さずにノアに向かって微笑んだ。
「そうなんですね。よろしくね、ノア!」
そして私はノアの方へ手を差し出した。
仲良くしようねー。私はゲーム時のようにノアをいじめる気は毛頭ないんですよー。
そして私の未来のためにも、ヤンデレ化は控えようね?
「あ、えっと………」
ノアは、私が差し出した手と自分の手を交互に見つめる。その手はどうすれば良いのか分からずに微かに震えていた。
こうなったら強硬手段よね?
迷っているらしいノアの手を掴むと、そのまま私は思いっきりぶんぶんと手を振った。
「リリー、振り回し過ぎだから」
「ミルもやる?」
「やらないよ」
ミルが呆れたような表情をしながら、そっと私とノアの繋いでいる手の上に自らの手を重ねて、その動きを止める。
それからミルは、ノアへと視線を向けると安心させるかのように笑って言った。
「ミルフォードっていうんだ。俺もノアと会うことは多いかもしれないし、よろしくね」
「あ……よろしくおねがいします……」
「そしてリリーは姉らしさの欠片もないとは思うけれど、よろしくね」
「待ってミル!それは余計な一言っていうのよ!!」
先程と変わらない笑みで、今度は私へと話の矛先を変えてきたミル。
失礼な!私だってちゃんとお姉さんらしく出来るわよ!
むうっとしながらミルへと視線を向ける私に、お父様が笑う。
「相変わらずリリーとミル君は仲が良いな」
嬉しそうに笑っているけれどお父様、娘が今微妙に貶されたとは思わないの?
思わずジト目でお父様見る。けれどもそんな私に気が付かない振りをして、お父様はノアへ視線を移した。
「ミル君はリリーの幼馴染でね。この通りとても仲が良いんだよ」
いやお父様、そんな説明ノアにしなくていいから。ほら、明らかになんて答えたらいいのか分からなくて、ノアが困惑してるから。
と、そこでふと私はお母様がいないことに気が付いた。
あれれ?さっきまでお父様とお母様一緒にいたよね?どこに消えたのお母様。
「お父様、お母様はどちらに?」
「うん?ああ、フォリアなら少し体調が優れないと言って先程自室に戻ったよ」
「え!」
お父様の言葉に思わず私は声を上げてしまう。
「お母様、体調が悪いんですか?」
「そうみたいだ。私が付き添っていたかったんだがそうなると主催者がいなくなってしまうからね……」
恐る恐る尋ねた私に、お父様は眉を下げながらそう答えた。
「……私、心配なのでお母様の様子を見てきます」
そう言うやいなや、私はそのままお母様のいるという控え室へと向かった。
だって、体調悪くしたのってもしかしたらノアが来たからじゃない?って凄く不安なんだもの。
勘違いしたとか有り得そうなんだもん。だって多分まだ説明してないでしょう、お父様。
ゲーム時で説明していなかったのなら私が理由を尋ねるまで話さなそうだし。……というか、そもそも訊いても答えてくれるか分からないけれど。
取り敢えず今真っ先に行うことはお母様への確認と、もしもノアのことをお父様の不貞の子だと疑っているようなら、何がなんでもお父様に全ての事情を説明してもらわなくちゃ!!
恐る恐るといった様子で挨拶をしてくれたのは、お父様の背後にぴったりとくっついた男の子。
お父様の後ろに隠れているとはいえ、顔を半分程こちらへと覗かせているので鮮やかな赤色の髪と綺麗な翡翠色の瞳は良く見えたし、その顔立ちはあどけないながらも十分に整っていることが目に見えて伺えた。
「リリー、この子は……ノアは今日から君の弟になるんだよ」
お父様が男の子——ノアの頭に手をぽんっと乗せながら説明する。
ええ、ええ。そうでしょうね。説明なんてされなくたってその子を見た瞬間に私はわかりましたよ!
赤い髪に緑色の目。そして名前がノア。
幼少期の顔立ちは知らないとはいえ、明らかに『恋きら』に出てくる攻略対象の一人でヤンデレ担当のノアではないですか!!
それにそもそもこの日に義弟が出来ることはゲーム時の設定からも知っていたわけでして。
ああ、ついに最初の死亡フラグ様と遭遇することになりました……。
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そんなことを考えながら、しかし私は表情におくびにも出さずにノアに向かって微笑んだ。
「そうなんですね。よろしくね、ノア!」
そして私はノアの方へ手を差し出した。
仲良くしようねー。私はゲーム時のようにノアをいじめる気は毛頭ないんですよー。
そして私の未来のためにも、ヤンデレ化は控えようね?
「あ、えっと………」
ノアは、私が差し出した手と自分の手を交互に見つめる。その手はどうすれば良いのか分からずに微かに震えていた。
こうなったら強硬手段よね?
迷っているらしいノアの手を掴むと、そのまま私は思いっきりぶんぶんと手を振った。
「リリー、振り回し過ぎだから」
「ミルもやる?」
「やらないよ」
ミルが呆れたような表情をしながら、そっと私とノアの繋いでいる手の上に自らの手を重ねて、その動きを止める。
それからミルは、ノアへと視線を向けると安心させるかのように笑って言った。
「ミルフォードっていうんだ。俺もノアと会うことは多いかもしれないし、よろしくね」
「あ……よろしくおねがいします……」
「そしてリリーは姉らしさの欠片もないとは思うけれど、よろしくね」
「待ってミル!それは余計な一言っていうのよ!!」
先程と変わらない笑みで、今度は私へと話の矛先を変えてきたミル。
失礼な!私だってちゃんとお姉さんらしく出来るわよ!
むうっとしながらミルへと視線を向ける私に、お父様が笑う。
「相変わらずリリーとミル君は仲が良いな」
嬉しそうに笑っているけれどお父様、娘が今微妙に貶されたとは思わないの?
思わずジト目でお父様見る。けれどもそんな私に気が付かない振りをして、お父様はノアへ視線を移した。
「ミル君はリリーの幼馴染でね。この通りとても仲が良いんだよ」
いやお父様、そんな説明ノアにしなくていいから。ほら、明らかになんて答えたらいいのか分からなくて、ノアが困惑してるから。
と、そこでふと私はお母様がいないことに気が付いた。
あれれ?さっきまでお父様とお母様一緒にいたよね?どこに消えたのお母様。
「お父様、お母様はどちらに?」
「うん?ああ、フォリアなら少し体調が優れないと言って先程自室に戻ったよ」
「え!」
お父様の言葉に思わず私は声を上げてしまう。
「お母様、体調が悪いんですか?」
「そうみたいだ。私が付き添っていたかったんだがそうなると主催者がいなくなってしまうからね……」
恐る恐る尋ねた私に、お父様は眉を下げながらそう答えた。
「……私、心配なのでお母様の様子を見てきます」
そう言うやいなや、私はそのままお母様のいるという控え室へと向かった。
だって、体調悪くしたのってもしかしたらノアが来たからじゃない?って凄く不安なんだもの。
勘違いしたとか有り得そうなんだもん。だって多分まだ説明してないでしょう、お父様。
ゲーム時で説明していなかったのなら私が理由を尋ねるまで話さなそうだし。……というか、そもそも訊いても答えてくれるか分からないけれど。
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