19 / 28
一章
18. 前途遼遠とは、このことを言うのです
しおりを挟む
あくる朝。
私が朝食を食べるために食堂へと向かっていると、前方にノアの姿を発見した。
鮮やかな赤髪ってやっぱりわかりやすいなぁ、と思いながら私はノアへと近付いていく。
「ノア、おはようございます」
「あ、……リリーローズさま」
私が声をかけると驚いたようにその場に立ち止まり、ノアは後ろを振り向いた。そして私の姿を確認すると、ほんの少しだけ目を見開いてから、小さく私の名前を呼んだ。
「ノア、私のことは〝様〟なんて付けなくていいんだよ?ノアは私の弟なんだから」
ね?と首を傾げてみせる。
けれども。
「……」
……ノア、無言は悲しいですよ。
うーん、どうしたらノアは恐縮しなくて済むんだろう?
本編始まる頃には普通に人懐っこいワンコ系男子になってるはずなんだけど、今のノアの姿を見てもその傾向は全く見られないよね……。
やっぱりゲームの世界とはいえども、違うところは違うものなのかな?
と、いつまでも自分の思考に浸ってたら朝食に遅れちゃう!ノアだって困惑したまま一歩も動いてないし!!
「ノア、食堂まで一緒に行ってもいい?」
私の言葉にノアはこくり、と頷いた。
ワンコ系男子とは程遠いかもだけれど、まあ、これはこれで可愛いかもしれない……
「じゃあ、行こっか」
私はそう言うと、ノアの手を取って再び歩き始めた。
うん?許可なんて求めてないよ?私が強引にしてる事だけど、何か問題でも?
「え、あ、あの……リリーローズさま、…?」
ふむ。ちょっと強引すぎたかな。
明らかに戸惑い、困惑するノアを見て私は眉を下げて悲しそうな表情を作る。
「ノアは私と手を繋ぐのいや?」
今にも泣き出しそうな表情をすると、ノアはすぐに焦ったように首を振った。
「い、嫌なんかじゃない、です!!」
ぎゅっと手に力を込められる。必死さが良く伝わって来るんだけどね?ノア、以外と力が強いんだよね。
ちょっと手が痛いです。
そんなことは口が裂けても言わないけれど。
「良かった」
ほっと息をついてから、私は満面の笑みを浮かべる。
そして再び足を踏み出した。
「あらあら、リリーちゃんはノアくんと来たのね」
「はい」
食堂に入ると、既に私とノア以外の全員が揃っていた。
二人で手を繋ぎながら食堂へと入った私たちを見て、お母様が嬉しそうに微笑んでいた。
「二人が仲良くしていてお母様とっても嬉しいわ!」
「そうだな。私も姉弟で仲良くしてくれているととても嬉しいよ」
お母様の言葉にお父様もうんうんと頷いている。
因みにお母様の誤解は、お父様が一生懸命説明をしたことで無事に解けました。
良かったね、お父様。そして本当に良かったよ、私!
これで両親の仲が破綻してお母様が死ぬことも、それによってノアがヤンデレ化してしまうのも多分防げる!
「ノアくん、席に座りましょう?」
私はノアの手を繋いだまま席まで移動した。ノアは私の隣の席だから、手を繋いだままでも何ら問題は無いのです!!
「……ありがとうございます、リリーローズさま」
ほんの少しだけノアがその顔に笑顔を浮かべてくれる。
か、可愛い!さっきも同じことを思ったけれど、やっぱり可愛い!!
可愛さが半端ないです……!!
下手したら女であるはずの私よりも可愛いです!
ああ、神様、私の目の前には天使がいますよ!!
それにしても、ノアとはやっぱり壁があるのを感じちゃうんだよね。
まあ、まだノアがうちに来てから三週間程しか経っていないのだから、慣れないことだらけだとは思うし、そもそも前のお家が最悪だったんだものね。
そりゃあ中々心を開くことなんて出来ないよね。
でも、どうせならノアとは仲良くしたいなぁ。
だって、お兄様と同じでノアは回避不可能な攻略対象者なんだもの。
さて、どうしたものでしょう。
お母様の誤解を解いた次は、ノアとどう仲良くなるかという問題に私は直面いたしましたよ。
私が朝食を食べるために食堂へと向かっていると、前方にノアの姿を発見した。
鮮やかな赤髪ってやっぱりわかりやすいなぁ、と思いながら私はノアへと近付いていく。
「ノア、おはようございます」
「あ、……リリーローズさま」
私が声をかけると驚いたようにその場に立ち止まり、ノアは後ろを振り向いた。そして私の姿を確認すると、ほんの少しだけ目を見開いてから、小さく私の名前を呼んだ。
「ノア、私のことは〝様〟なんて付けなくていいんだよ?ノアは私の弟なんだから」
ね?と首を傾げてみせる。
けれども。
「……」
……ノア、無言は悲しいですよ。
うーん、どうしたらノアは恐縮しなくて済むんだろう?
本編始まる頃には普通に人懐っこいワンコ系男子になってるはずなんだけど、今のノアの姿を見てもその傾向は全く見られないよね……。
やっぱりゲームの世界とはいえども、違うところは違うものなのかな?
と、いつまでも自分の思考に浸ってたら朝食に遅れちゃう!ノアだって困惑したまま一歩も動いてないし!!
「ノア、食堂まで一緒に行ってもいい?」
私の言葉にノアはこくり、と頷いた。
ワンコ系男子とは程遠いかもだけれど、まあ、これはこれで可愛いかもしれない……
「じゃあ、行こっか」
私はそう言うと、ノアの手を取って再び歩き始めた。
うん?許可なんて求めてないよ?私が強引にしてる事だけど、何か問題でも?
「え、あ、あの……リリーローズさま、…?」
ふむ。ちょっと強引すぎたかな。
明らかに戸惑い、困惑するノアを見て私は眉を下げて悲しそうな表情を作る。
「ノアは私と手を繋ぐのいや?」
今にも泣き出しそうな表情をすると、ノアはすぐに焦ったように首を振った。
「い、嫌なんかじゃない、です!!」
ぎゅっと手に力を込められる。必死さが良く伝わって来るんだけどね?ノア、以外と力が強いんだよね。
ちょっと手が痛いです。
そんなことは口が裂けても言わないけれど。
「良かった」
ほっと息をついてから、私は満面の笑みを浮かべる。
そして再び足を踏み出した。
「あらあら、リリーちゃんはノアくんと来たのね」
「はい」
食堂に入ると、既に私とノア以外の全員が揃っていた。
二人で手を繋ぎながら食堂へと入った私たちを見て、お母様が嬉しそうに微笑んでいた。
「二人が仲良くしていてお母様とっても嬉しいわ!」
「そうだな。私も姉弟で仲良くしてくれているととても嬉しいよ」
お母様の言葉にお父様もうんうんと頷いている。
因みにお母様の誤解は、お父様が一生懸命説明をしたことで無事に解けました。
良かったね、お父様。そして本当に良かったよ、私!
これで両親の仲が破綻してお母様が死ぬことも、それによってノアがヤンデレ化してしまうのも多分防げる!
「ノアくん、席に座りましょう?」
私はノアの手を繋いだまま席まで移動した。ノアは私の隣の席だから、手を繋いだままでも何ら問題は無いのです!!
「……ありがとうございます、リリーローズさま」
ほんの少しだけノアがその顔に笑顔を浮かべてくれる。
か、可愛い!さっきも同じことを思ったけれど、やっぱり可愛い!!
可愛さが半端ないです……!!
下手したら女であるはずの私よりも可愛いです!
ああ、神様、私の目の前には天使がいますよ!!
それにしても、ノアとはやっぱり壁があるのを感じちゃうんだよね。
まあ、まだノアがうちに来てから三週間程しか経っていないのだから、慣れないことだらけだとは思うし、そもそも前のお家が最悪だったんだものね。
そりゃあ中々心を開くことなんて出来ないよね。
でも、どうせならノアとは仲良くしたいなぁ。
だって、お兄様と同じでノアは回避不可能な攻略対象者なんだもの。
さて、どうしたものでしょう。
お母様の誤解を解いた次は、ノアとどう仲良くなるかという問題に私は直面いたしましたよ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
完結しました。
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
(第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる