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一章
27.夢見は最悪でした
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「リリーローズ嬢、貴方との婚約を破棄させてもらう」
「そんなっ!!殿下、どうしてですの!?」
広い夜会会場の中に響きわたったのは、彼女の甲高い悲鳴じみた声だった。
それは、ステラート学園の卒業パーティーの日。
それすなわち、最後で最大のイベントである、悪役令嬢の断罪イベントの日であった。
「ルーナをあの手この手で虐めていただろう。証拠は既に揃っている」
悪役令嬢の婚約者である攻略対象その一は、悪役令嬢に冷たい眼差しを向けながら冷静に告げる。
そして、攻略対象その二の持っていた一枚の紙をその場に掲げてみせた。
「ここには、これまでリリーローズ嬢がルーナ嬢に対して行ってきていた数々の虐めの証拠が掲載されている。証拠はもう十分にあるのだ。それともまだ何か言い逃れをしようとするのか?」
「ち、違うのです!ユリウス殿下、どうか私の話を……!!」
証拠がある癖に。証拠があるからこそそれを覆すことなど出来ないと誰もが解っていることであるのに。
しかしそれでもまだ言い募ろうと、必死に言い訳をしようとする悪役令嬢は、見ているこちらからすれば随分と滑稽で、そして愚かなものだった。
青ざめながらその場へと崩れ落ちる悪役令嬢を、彼女の兄であり攻略対象である攻略対象その二は血の繋がった家族という情など一切捨てきってしまったかのような目で見下ろす。その瞳には、憤り、侮蔑、失望というような色を宿していた。
「リリーローズ、お前には失望したよ。お前は、スターライト家には相応しくない」
「お、にいさま……?」
攻略対象その二の言葉に悪役令嬢は呆然としていた。
一体、セシルお兄様は何を言っているのだろう。
私が、スターライト家に相応しくない?
どうして?スターライト家の令嬢としてこんなにも努力をして来たのに。それなのに、どうして相応しくないなんて言うの?
私は唯、ユリウス殿下に私を見て欲しかっただけなのに。
たくさん努力をした。死に物狂いで、それこそ血反吐が出るほどにたくさん。少しでもユリウス殿下の隣に相応しくいられるように。
それなのに、私は相応しくない?
ぽっと出のヒロインなんかに、今までの私の努力を無駄にされるの?ユリウス殿下を奪われてしまうの?
私は、こんなにもユリウス殿下を愛しているのに。殿下だけを、愛していたのに。なのに。
ねえ、どうして?どうしてなの?私の何がいけなかったの?私はただ、邪魔なヒロインをこの舞台から退場させてあげようとしただけなのに。この舞台の上には、私とユリウス殿下以外に上がることなんて、そんなこと決して許されるはずがないのに。なのに、どうして。どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうし……———
「————どうして!!」
バッと跳ね起きながら、気が付けば私はそう叫んでいた。
そして、叫んでから急速に頭の中が冷えていく。
「……ぁ」
「リリー、大丈夫か?」
私が呆然と、それと同時に絶望を感じたその時、右隣から私の身を案じるような、心配そうな声が聞こえてきた。
その声の方向へ視線を向ければ、そこには私を心配そうに見つめるお兄様の姿があった。
「随分と魘されていたみたいだけれど」
「大丈夫、です」
乱れたい気を整えながらなんでもないと首を振れば、お兄様はまだ怪訝そうに眉を寄せていた。
しかしそれ以上聞いても私が答えることは無いと悟ったらしく、「そっか」となんとも言えない表情で笑う。
「ところで、どうしてお兄様がここに?」
「リリーが倒れたって騒ぎになったからね。心配するのは当たり前だろう?」
「騒ぎ?」
はて、どうしたらそんな騒ぎになるのだろうかと首を傾げれば、内心を察したお兄様が簡潔に説明をしてくれた。
「覚えていない?君は魔力を測っている時に突然倒れたんだよ」
恐らく、魔力酔いを引き起こしたんだろうと続けるお兄様に、私はそういえばそうだったなと記憶を辿りながら頷く。
「そんなっ!!殿下、どうしてですの!?」
広い夜会会場の中に響きわたったのは、彼女の甲高い悲鳴じみた声だった。
それは、ステラート学園の卒業パーティーの日。
それすなわち、最後で最大のイベントである、悪役令嬢の断罪イベントの日であった。
「ルーナをあの手この手で虐めていただろう。証拠は既に揃っている」
悪役令嬢の婚約者である攻略対象その一は、悪役令嬢に冷たい眼差しを向けながら冷静に告げる。
そして、攻略対象その二の持っていた一枚の紙をその場に掲げてみせた。
「ここには、これまでリリーローズ嬢がルーナ嬢に対して行ってきていた数々の虐めの証拠が掲載されている。証拠はもう十分にあるのだ。それともまだ何か言い逃れをしようとするのか?」
「ち、違うのです!ユリウス殿下、どうか私の話を……!!」
証拠がある癖に。証拠があるからこそそれを覆すことなど出来ないと誰もが解っていることであるのに。
しかしそれでもまだ言い募ろうと、必死に言い訳をしようとする悪役令嬢は、見ているこちらからすれば随分と滑稽で、そして愚かなものだった。
青ざめながらその場へと崩れ落ちる悪役令嬢を、彼女の兄であり攻略対象である攻略対象その二は血の繋がった家族という情など一切捨てきってしまったかのような目で見下ろす。その瞳には、憤り、侮蔑、失望というような色を宿していた。
「リリーローズ、お前には失望したよ。お前は、スターライト家には相応しくない」
「お、にいさま……?」
攻略対象その二の言葉に悪役令嬢は呆然としていた。
一体、セシルお兄様は何を言っているのだろう。
私が、スターライト家に相応しくない?
どうして?スターライト家の令嬢としてこんなにも努力をして来たのに。それなのに、どうして相応しくないなんて言うの?
私は唯、ユリウス殿下に私を見て欲しかっただけなのに。
たくさん努力をした。死に物狂いで、それこそ血反吐が出るほどにたくさん。少しでもユリウス殿下の隣に相応しくいられるように。
それなのに、私は相応しくない?
ぽっと出のヒロインなんかに、今までの私の努力を無駄にされるの?ユリウス殿下を奪われてしまうの?
私は、こんなにもユリウス殿下を愛しているのに。殿下だけを、愛していたのに。なのに。
ねえ、どうして?どうしてなの?私の何がいけなかったの?私はただ、邪魔なヒロインをこの舞台から退場させてあげようとしただけなのに。この舞台の上には、私とユリウス殿下以外に上がることなんて、そんなこと決して許されるはずがないのに。なのに、どうして。どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうし……———
「————どうして!!」
バッと跳ね起きながら、気が付けば私はそう叫んでいた。
そして、叫んでから急速に頭の中が冷えていく。
「……ぁ」
「リリー、大丈夫か?」
私が呆然と、それと同時に絶望を感じたその時、右隣から私の身を案じるような、心配そうな声が聞こえてきた。
その声の方向へ視線を向ければ、そこには私を心配そうに見つめるお兄様の姿があった。
「随分と魘されていたみたいだけれど」
「大丈夫、です」
乱れたい気を整えながらなんでもないと首を振れば、お兄様はまだ怪訝そうに眉を寄せていた。
しかしそれ以上聞いても私が答えることは無いと悟ったらしく、「そっか」となんとも言えない表情で笑う。
「ところで、どうしてお兄様がここに?」
「リリーが倒れたって騒ぎになったからね。心配するのは当たり前だろう?」
「騒ぎ?」
はて、どうしたらそんな騒ぎになるのだろうかと首を傾げれば、内心を察したお兄様が簡潔に説明をしてくれた。
「覚えていない?君は魔力を測っている時に突然倒れたんだよ」
恐らく、魔力酔いを引き起こしたんだろうと続けるお兄様に、私はそういえばそうだったなと記憶を辿りながら頷く。
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