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一章
26.一息つく暇がありませんでした
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さてさて、私は無事に七歳となりました。なので今日から本格的に魔法講座が始まります。
だがしかし、私は隣を見て首を傾げずにはいられない。
「どうしてこうなった?」
「知らない。文句は両親にでもどうぞ」
しかし隣からは素っ気なく返される。
でも、今回このことを決めたのは家の両親とミルの両親なのだから知らないっていうのは当然といわれればそうなのだけれど。
「二人とも仲良いし一緒に出来たら楽しそうよねぇ」
と言うお母様方のまったり雑談から始まったという謎の展開。
そしてそれを快く頷きとんとん拍子に話を進めていったお父様方。
本当に、両親達は何がしたいのだ?
そして更に驚きの事実が。なんと、私達に魔法を教えることになったのは……—————
「———今日からお二人に魔法を教えることになりました、エリス・ユグルト・ハンデミストと申します。よろしくお願い致します」
「よろしくお願いします……エリス先生」
「よろしくお願いします」
そう、講師になったのは攻略対象者であり後に没落貴族となるエルスだったのだ。
うわぁ……。
どうして、本当にどうしてこうなったの?
ゲーム時ではステラート学園で初めて会う筈だったよね?スターライト家の魔法講師をしていたなんて情報はどこにもなかったよね?
なにこれ一種の虐めかよ。余計なフラグが立ちそうな予感しかしないんだけれど。勿論悪い意味で。
ややこしい展開になりつつあるこの状況の中で、ひたすら笑みを浮かべていられる私ったら相当成長したと思います。内心頬が引き攣っておりますが。
やだなぁ。他の先生はいなかったのかよ。
お父様に「優秀な先生をお願いしますね」なんて言ったけれどさぁ。確かにエリスは優秀な先生なんだけれどさぁ……。
……よりによって攻略対象者って、とことん私の運は付いていないね。うん、とっくに知っていたけれども。
私が乾いた笑みを浮かべると、隣にいたミルが怪訝そうに此方に視線を向けた。
後で事情はちゃんと説明しますので、と私は一応心の中で呟いておく。勿論ミルに聞こえてるわけ無いだろうけれど。
とか思ってたけれどなんか納得したように頷かれた。あれ?もしかしてミルってばエスパーか何かなの?
と、色々と話がずれてってるから軌道修正しなくては。
「取り敢えず今日はそれぞれの魔力量を調べていくことにしましょうか」
穏やかにそう告げたエリスの手には、いつの間にか杖が握られていた。それは、なんの飾り気もない木の棒の様な杖だった。
でもルーナが持っていた杖ってばもっと可愛らしいものだったよね?ていうかこんなに味気ない杖を持ってる人なんていなくなかった?
私が気付かなかっただけで本当はもっといたのかな。とじっとエリスの手元にある杖を見続けていた所為か、エリスには全くもって見当違いな説明を返される。
「この杖は魔法を行使するために使うものですよ。勿論杖無しの詠唱だけでも魔法を行使することは出来ますが、そうするとコントロールがとても難しく、失敗する確率が高いんですよ」
でも、ゲーム時の悪役令嬢って杖なし無詠唱で魔法を行使していたのよね。勿論他のメインキャラ達も。つまり私は何気にチートだということですか、そうですか。
「それではまず初めにミルフォード様から始めましょうか」
エリスは初めにその杖をミルに握らせた。そしてミルに体の中心を意識するように告げる。
「……わぁ!」
やがてミルの周りには薄らと光の玉が現れ始めた。エリスが言うには、その光の玉の強さによって魔力量が解るらしい。つまり強い光になるにつれてその人の魔力量は大きいということだよね。
因みに、攻撃系の魔法を黒魔法、癒しや結界などの魔法を白魔法と分けて呼んでいるのだそうです。知ってるけれど。
「まだ七歳でこれ程とは……流石公爵家のご子息様ですね」
エリスが素直に感嘆する。けれども、そこにはほんの僅かに何か別のものが込められていた、気がする。
ほんの僅かな違和感を感じた。けれど、それは一瞬のことで気のせいだったのかと私は首を密かに捻った。
そして、次は私の番。
エリスに言われた通りに体の中心を意識してみる。
すると、突然。
「……え……」
その声は、誰のものだったのか分からなかった。
でも、なんだかずっと前から知っている声が聞こえた気がした。
そしてなんだかふわふわしてきたような気がする。なんだろう、なんだかとっても気分がいい気がする、ような。
優しい温もりを感じた。
知ってる人のような気がする。匂いも、気配も、何もかもが知っている……懐かしい。
あなたは、だれ?
……あれ?わたしはいま、なにをしているんだっけ?
たしかまほう、をつかって、た?ああ、そうだ。魔力量をはかろうとして、それから……
そして、そこで私の意識は途切れた。
だがしかし、私は隣を見て首を傾げずにはいられない。
「どうしてこうなった?」
「知らない。文句は両親にでもどうぞ」
しかし隣からは素っ気なく返される。
でも、今回このことを決めたのは家の両親とミルの両親なのだから知らないっていうのは当然といわれればそうなのだけれど。
「二人とも仲良いし一緒に出来たら楽しそうよねぇ」
と言うお母様方のまったり雑談から始まったという謎の展開。
そしてそれを快く頷きとんとん拍子に話を進めていったお父様方。
本当に、両親達は何がしたいのだ?
そして更に驚きの事実が。なんと、私達に魔法を教えることになったのは……—————
「———今日からお二人に魔法を教えることになりました、エリス・ユグルト・ハンデミストと申します。よろしくお願い致します」
「よろしくお願いします……エリス先生」
「よろしくお願いします」
そう、講師になったのは攻略対象者であり後に没落貴族となるエルスだったのだ。
うわぁ……。
どうして、本当にどうしてこうなったの?
ゲーム時ではステラート学園で初めて会う筈だったよね?スターライト家の魔法講師をしていたなんて情報はどこにもなかったよね?
なにこれ一種の虐めかよ。余計なフラグが立ちそうな予感しかしないんだけれど。勿論悪い意味で。
ややこしい展開になりつつあるこの状況の中で、ひたすら笑みを浮かべていられる私ったら相当成長したと思います。内心頬が引き攣っておりますが。
やだなぁ。他の先生はいなかったのかよ。
お父様に「優秀な先生をお願いしますね」なんて言ったけれどさぁ。確かにエリスは優秀な先生なんだけれどさぁ……。
……よりによって攻略対象者って、とことん私の運は付いていないね。うん、とっくに知っていたけれども。
私が乾いた笑みを浮かべると、隣にいたミルが怪訝そうに此方に視線を向けた。
後で事情はちゃんと説明しますので、と私は一応心の中で呟いておく。勿論ミルに聞こえてるわけ無いだろうけれど。
とか思ってたけれどなんか納得したように頷かれた。あれ?もしかしてミルってばエスパーか何かなの?
と、色々と話がずれてってるから軌道修正しなくては。
「取り敢えず今日はそれぞれの魔力量を調べていくことにしましょうか」
穏やかにそう告げたエリスの手には、いつの間にか杖が握られていた。それは、なんの飾り気もない木の棒の様な杖だった。
でもルーナが持っていた杖ってばもっと可愛らしいものだったよね?ていうかこんなに味気ない杖を持ってる人なんていなくなかった?
私が気付かなかっただけで本当はもっといたのかな。とじっとエリスの手元にある杖を見続けていた所為か、エリスには全くもって見当違いな説明を返される。
「この杖は魔法を行使するために使うものですよ。勿論杖無しの詠唱だけでも魔法を行使することは出来ますが、そうするとコントロールがとても難しく、失敗する確率が高いんですよ」
でも、ゲーム時の悪役令嬢って杖なし無詠唱で魔法を行使していたのよね。勿論他のメインキャラ達も。つまり私は何気にチートだということですか、そうですか。
「それではまず初めにミルフォード様から始めましょうか」
エリスは初めにその杖をミルに握らせた。そしてミルに体の中心を意識するように告げる。
「……わぁ!」
やがてミルの周りには薄らと光の玉が現れ始めた。エリスが言うには、その光の玉の強さによって魔力量が解るらしい。つまり強い光になるにつれてその人の魔力量は大きいということだよね。
因みに、攻撃系の魔法を黒魔法、癒しや結界などの魔法を白魔法と分けて呼んでいるのだそうです。知ってるけれど。
「まだ七歳でこれ程とは……流石公爵家のご子息様ですね」
エリスが素直に感嘆する。けれども、そこにはほんの僅かに何か別のものが込められていた、気がする。
ほんの僅かな違和感を感じた。けれど、それは一瞬のことで気のせいだったのかと私は首を密かに捻った。
そして、次は私の番。
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すると、突然。
「……え……」
その声は、誰のものだったのか分からなかった。
でも、なんだかずっと前から知っている声が聞こえた気がした。
そしてなんだかふわふわしてきたような気がする。なんだろう、なんだかとっても気分がいい気がする、ような。
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知ってる人のような気がする。匂いも、気配も、何もかもが知っている……懐かしい。
あなたは、だれ?
……あれ?わたしはいま、なにをしているんだっけ?
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