転生したら悪役令嬢になっていましたが、婚約者が推しなので全力でフラグをへし折ろうかと思います!(改稿版)

七宮 ゆえ

文字の大きさ
27 / 28
一章

26.一息つく暇がありませんでした

しおりを挟む
 さてさて、私は無事に七歳となりました。なので今日から本格的に魔法講座が始まります。
 だがしかし、私は隣を見て首を傾げずにはいられない。

「どうしてこうなった?」
「知らない。文句は両親にでもどうぞ」

 しかし隣からは素っ気なく返される。
 でも、今回このことを決めたのは家の両親とミルの両親なのだから知らないっていうのは当然といわれればそうなのだけれど。

「二人とも仲良いし一緒に出来たら楽しそうよねぇ」

 と言うお母様方のまったり雑談から始まったという謎の展開。
 そしてそれを快く頷きとんとん拍子に話を進めていったお父様方。
 本当に、両親達は何がしたいのだ?
 そして更に驚きの事実が。なんと、私達に魔法を教えることになったのは……—————

「———今日からお二人に魔法を教えることになりました、エリス・ユグルト・ハンデミストと申します。よろしくお願い致します」
「よろしくお願いします……エリス先生」
「よろしくお願いします」

 そう、講師になったのは攻略対象者であり後に没落貴族となるエルスだったのだ。
 うわぁ……。
 どうして、本当にどうしてこうなったの?
 ゲーム時ではステラート学園で初めて会う筈だったよね?スターライト家の魔法講師をしていたなんて情報はどこにもなかったよね?
 なにこれ一種の虐めかよ。余計なフラグが立ちそうな予感しかしないんだけれど。勿論悪い意味で。
 ややこしい展開になりつつあるこの状況の中で、ひたすら笑みを浮かべていられる私ったら相当成長したと思います。内心頬が引き攣っておりますが。
 やだなぁ。他の先生はいなかったのかよ。
 お父様に「優秀な先生をお願いしますね」なんて言ったけれどさぁ。確かにエリスは優秀な先生なんだけれどさぁ……。
 ……よりによって攻略対象者って、とことん私の運は付いていないね。うん、とっくに知っていたけれども。
 私が乾いた笑みを浮かべると、隣にいたミルが怪訝そうに此方に視線を向けた。
 後で事情はちゃんと説明しますので、と私は一応心の中で呟いておく。勿論ミルに聞こえてるわけ無いだろうけれど。
 とか思ってたけれどなんか納得したように頷かれた。あれ?もしかしてミルってばエスパーか何かなの?
 と、色々と話がずれてってるから軌道修正しなくては。

「取り敢えず今日はそれぞれの魔力量を調べていくことにしましょうか」

 穏やかにそう告げたエリスの手には、いつの間にか杖が握られていた。それは、なんの飾り気もない木の棒の様な杖だった。
 でもルーナが持っていた杖ってばもっと可愛らしいものだったよね?ていうかこんなに味気ない杖を持ってる人なんていなくなかった?
 私が気付かなかっただけで本当はもっといたのかな。とじっとエリスの手元にある杖を見続けていた所為か、エリスには全くもって見当違いな説明を返される。

「この杖は魔法を行使するために使うものですよ。勿論杖無しの詠唱だけでも魔法を行使することは出来ますが、そうするとコントロールがとても難しく、失敗する確率が高いんですよ」

 でも、ゲーム時の悪役令嬢リリーローズって杖なし無詠唱で魔法を行使していたのよね。勿論他のメインキャラ達も。つまり私は何気にチートだということですか、そうですか。

「それではまず初めにミルフォード様から始めましょうか」

 エリスは初めにその杖をミルに握らせた。そしてミルに体の中心を意識するように告げる。

「……わぁ!」

 やがてミルの周りには薄らと光の玉が現れ始めた。エリスが言うには、その光の玉の強さによって魔力量が解るらしい。つまり強い光になるにつれてその人の魔力量は大きいということだよね。
 因みに、攻撃系の魔法を黒魔法、癒しや結界などの魔法を白魔法と分けて呼んでいるのだそうです。知ってるけれど。

「まだ七歳でこれ程とは……流石公爵家のご子息様ですね」

 エリスが素直に感嘆する。けれども、そこにはほんの僅かに何か別のものが込められていた、気がする。
 ほんの僅かな違和感を感じた。けれど、それは一瞬のことで気のせいだったのかと私は首を密かに捻った。
 そして、次は私の番。
 エリスに言われた通りに体の中心を意識してみる。
 すると、突然。

「……え……」

 その声は、誰のものだったのか分からなかった。
 でも、なんだかずっと前から知っている声が聞こえた気がした。
 そしてなんだかふわふわしてきたような気がする。なんだろう、なんだかとっても気分がいい気がする、ような。
 優しい温もりを感じた。
 知ってる人のような気がする。匂いも、気配も、何もかもが知っている……懐かしい。
 あなたは、だれ?

 ……あれ?わたしはいま、なにをしているんだっけ?
 たしかまほう、をつかって、た?ああ、そうだ。魔力量をはかろうとして、それから……




 そして、そこで私の意識は途切れた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく…… (第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

処理中です...