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1日目:別れと出会い
旅の始まり
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今日ですらママは不機嫌だ。
朝が早いせいか、それともさっき私が荷物を落としてしまったからか。
とにかくこれから1年ぶりの旅行とは思えないほどママは不機嫌だった。
正直、この2人アイルナ旅行には気が進まなかった。
だけど、ママの意見は絶対だ。
今回もママが聞いてきたのは部活と塾の予定くらい。
この旅行のために買って貰った洋服も、一緒に買いに行ったときに全部ママが選んだものだった。
私の中にはいつもママがいる。
ヒステリックなあの人に逆らっても無駄なことは17年の経験で身にしみている。
早く大人になりたかった。
早く大人になってあの人から解放されたかった。
子供というのは、とても行きづらい生き物だ。
自分に費やされたお金の話、そのために親がどれだけ頑張っているか、そんな事は十分分かっているから、それを出されれば何も言えない。
最近こんなことばかり考えているな、と茜はまた母親に聞こえない位のため息をついた。
「茜!もう、早くしてよ。ほんと、バカなんだから!
12時からお昼を食べて、12時45分にここを出発、1時15分にフォーレッドの滝を見て、1時35分までお土産を見て……、そして19時からディナー、20時半には出るわよ、明日も早いんだから。いいわね?」
「ちょっ、ちょっと、そんなにキツキツのスケジュールじゃ楽しめないんじゃ…。」
「何言ってるの?あんたが楽しめるように頑張って夜遅くまでたてたのよ!あんたはいつも何にもしないじゃない!もう、17歳になったのにほんと情けない。」
…それはママが過保護で何もさせてくれないから。そう心の中で思っても茜がその思いを口にすることはない。
「ほら、バスが来るからそっちの荷物持って!」
バスの窓からの景色でここが日本じゃないと実感する。
空港から一歩出れば空気すら外国だ。
このバスは私達が3日間泊まるホテルに向かっている。
いつもより高い所から見る人の群れは何だかすごく楽しそうで、
斜め前の方を見たらバスに乗っている他の国の人たちもみんな、笑っていてとても楽しそうだった。
楽しいときに笑うのは世界共通で、私達だけがその輪の中にいない。
正確には私だけが入っていないのかもしれない。
どこへ行っても、ママが隣にいる限り、やっぱりここは日本だった。
ママはさっきからガイドブックを見ていて、時折私に話しかける。
「ねえ、ここのご飯は安い割に評価が凄く良くてね、本当はここで食べたかったんだけど予約が取れなくて。」
「そうなんだ、確かに美味しそう!…これはなんて読むんだろう?ファーラエドー?」
「ハハハ、あんたは本当にばかねー、フォーレッドって読むのよ。社会に出たら、そんなばかは通用しないからね。会社では効率の良さが…」
(あー、また始まった。)
茜にとって自分を守る方法はばかを演じることだった。相手が笑えるように、母親が笑えるように。
憂鬱な旅の一日目はこうやって過ぎていこうとしていた。
そう、過ぎていくはずだった。
朝が早いせいか、それともさっき私が荷物を落としてしまったからか。
とにかくこれから1年ぶりの旅行とは思えないほどママは不機嫌だった。
正直、この2人アイルナ旅行には気が進まなかった。
だけど、ママの意見は絶対だ。
今回もママが聞いてきたのは部活と塾の予定くらい。
この旅行のために買って貰った洋服も、一緒に買いに行ったときに全部ママが選んだものだった。
私の中にはいつもママがいる。
ヒステリックなあの人に逆らっても無駄なことは17年の経験で身にしみている。
早く大人になりたかった。
早く大人になってあの人から解放されたかった。
子供というのは、とても行きづらい生き物だ。
自分に費やされたお金の話、そのために親がどれだけ頑張っているか、そんな事は十分分かっているから、それを出されれば何も言えない。
最近こんなことばかり考えているな、と茜はまた母親に聞こえない位のため息をついた。
「茜!もう、早くしてよ。ほんと、バカなんだから!
12時からお昼を食べて、12時45分にここを出発、1時15分にフォーレッドの滝を見て、1時35分までお土産を見て……、そして19時からディナー、20時半には出るわよ、明日も早いんだから。いいわね?」
「ちょっ、ちょっと、そんなにキツキツのスケジュールじゃ楽しめないんじゃ…。」
「何言ってるの?あんたが楽しめるように頑張って夜遅くまでたてたのよ!あんたはいつも何にもしないじゃない!もう、17歳になったのにほんと情けない。」
…それはママが過保護で何もさせてくれないから。そう心の中で思っても茜がその思いを口にすることはない。
「ほら、バスが来るからそっちの荷物持って!」
バスの窓からの景色でここが日本じゃないと実感する。
空港から一歩出れば空気すら外国だ。
このバスは私達が3日間泊まるホテルに向かっている。
いつもより高い所から見る人の群れは何だかすごく楽しそうで、
斜め前の方を見たらバスに乗っている他の国の人たちもみんな、笑っていてとても楽しそうだった。
楽しいときに笑うのは世界共通で、私達だけがその輪の中にいない。
正確には私だけが入っていないのかもしれない。
どこへ行っても、ママが隣にいる限り、やっぱりここは日本だった。
ママはさっきからガイドブックを見ていて、時折私に話しかける。
「ねえ、ここのご飯は安い割に評価が凄く良くてね、本当はここで食べたかったんだけど予約が取れなくて。」
「そうなんだ、確かに美味しそう!…これはなんて読むんだろう?ファーラエドー?」
「ハハハ、あんたは本当にばかねー、フォーレッドって読むのよ。社会に出たら、そんなばかは通用しないからね。会社では効率の良さが…」
(あー、また始まった。)
茜にとって自分を守る方法はばかを演じることだった。相手が笑えるように、母親が笑えるように。
憂鬱な旅の一日目はこうやって過ぎていこうとしていた。
そう、過ぎていくはずだった。
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