summer vacationー金魚は冬の打ち上げ花火ー

エビガツナ

文字の大きさ
3 / 7
1日目:別れと出会い

ママ

しおりを挟む
「………あっ…あかね……あかね!」

ママのか細い声が聞こえてくる。
ママが糸の切れた操り人形のように地面に膝をついた。
ママの腕を掴んでいた2人の男が手を離せば、ママはもう重力に従って倒れるだけだった。

なぜママが血を流しているのだろう?

なぜ涙が止まらないんだろう?

「おっおい!大丈夫か!?」

金髪の男の声を初めて聴いた。

一体何に対しての大丈夫なのだろうか?

「……母親の方はもういい!どうせ、いずれ死ぬ!」

死ぬ?ママが死ぬ?

「娘の方をやれ!」

死ぬ?私も死ぬの?

死んだら、私はどこへ逝くのだろう。
ママはどこへ消えていくのだろう。
私の心は誰のものになるのだろう。

体から力が抜けて私も自分の足では立てなくなった。赤い血がないだけで、私も見た目は今のママと変わらない。

地面に座り込みそうになった瞬間、緑髪の男が私の腕を上へ引っ張り上げた。

「おい!何やってんだよ!!逃げるぞ!」

そう言うと、彼は私の掌を強く掴んで走り出した。その時、私は初めて自分の手が氷のように冷たくなっていることに気がついた。
彼の熱い掌が余計にそれを感じさせる。

「ノラ!後頼んだ!」

ノラと呼ばれた金髪の男は無言で頷くと近づいてきた男達の一人のみぞおちを思いっきり殴った。

「……っ!」

「いくぞ!」

私は緑色の男に連れられてただひたすらに走った。目まぐるしく変わっていく風景の中で、私はママの血を流して倒れていたあの姿だけを思っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

黒い青春

樫野 珠代
恋愛
過去に人を傷つけ、そのことをずっと引きずって生きる美月。 そんな彼女の前に傷つけた相手が現れた。彼は別人のように変わっていて・・・。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

処理中です...