summer vacationー金魚は冬の打ち上げ花火ー

エビガツナ

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1日目:別れと出会い

another story-やべえ奴-

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正直こいつはやべえと思った。

普通、女なら怖くて固まって動けなくなるか、叫び通すかそんなもんだろう。状況もよく分からないまま、おそらく見たこともなかった拳銃で果敢に立ち向かったりしない。

「…なー、さっき何でお前撃ったんだ?俺らに任しとけば良かったのに。……まー、今更だけど。」

そう言うと、こいつはまた泣き始めた。

困ったな。この状況じゃ何言えばいいか分かんねえ。

「…そっか。」

結局相づちをうつことしか出来なかった。

歳はどれ位だろう?まだ成人はしていない、と思う。

俺はこの子のことをほとんど知らない。

この任務を命じたユリさんは、俺達にもあまり詳しいことは教えてくれなかった。

それに、この子も俺らのことやこの状況も何も知らないはずなのに1つも尋ねてこない。

調子が狂うな。

そう思って、彼女の方を黒目だけを動かしてこっそりと見た。

彼女は震えていた。雨に濡れた寒気とか、泣いているからとか、そういうのを全部すっ飛ばして震えていた。

彼女に降りかかる雨水が無数の針に見える。

「とりあえずさ、俺らの秘密基地に行こう。…それからこれからのことは考えよう。」

なぜか、この子を守りたくなった。初めて何も知らない誰かを可哀相だと思った。

「……私、…私ここで死ぬ!……だから…、…もう……っ」

本当にこいつはやべえやつかも、って思った。

最後まで泣いて、死んでも涙を流すのか。

初めて目を合わせて見た彼女の顔は、涙でぐちゃぐちゃで、今まで会った誰よりも女だった。

まじでやばい。

俺はゆっくりとしゃがんで彼女を真っ正面から見た。雨の匂いに混じって、ほのかに甘い香りがする。

「世の中俺らみたいに悪いことやって、生きてる奴らなんて山ほどいるんだぜ。今すぐ死ぬことない。」

まるで、小さな子供をあやすみたいに自分でも驚くほど優しくなれた。

「ゆっくり休みな。」

そして、自然とキスをした。彼女の震えをここに置いて行きたかった。

彼女は意識が朦朧としているのか、特に驚きも躊躇いも見せなかった。それはキス、と言うには軽すぎて、でも口づけというほど愛は詰まっていない。

眠りにつく寸前で彼女は一瞬目を開けた。俺はその仕草がかわいいと思った。ただ純粋に。


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