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爆弾 煙草 死

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戦争は中身は変わることは無い。どんな戦争も、似通った理由で、戦争が起きる。しかし、やり方は大きく変わる。肉体、石、鉱石、そして、火薬。そう、爆弾だ。ただ火薬を爆発させてモノから、より火力を向上させたもの、小型化、核爆弾、などなど...。戦争はどう爆弾を使うのかというように変化していった。

世は第四次世界大戦。とある小国から放たれた核弾頭は大国に直撃。報復による報復。血を血で洗い、死を死で隠し、爆発をさらに大きい爆発でかき消す。そんな戦争で世界は爆煙と放射線で覆われていた。様々な生物が地表から姿を消し、人間ですら地下に生活圏を移した。物資も足りず、衛生なんて二の次、今日生きることで精一杯な一般市民と、数少ない富を独占した富裕層、そして地表や地下で戦争をやめることができない兵士たち。少しづつ閉鎖的な地下も爆発で要らないほど開放的になり、また人々の生活を消していった。そして世界は破滅へと、刻一刻と進み続けていた。

煙草の煙が口から閉ざされた空へ昇って行く。
「ふぅ......。これと酒だけが娯楽だな。女にももう飽きた」
「それ何~?」
「煙草だ。小僧にはまだ早ぇよ。」
「ふーん、そうなんだ」
「そんなもんだ」
この小僧は昨日から付いてきてる。まぁ孤児だろう。孤児は誰か生きて行く力のある者に寄生しなければ生きていくことは出来ない。それが今の世界だ。100年前くらい前までは、地上できれいな空気を吸い、爆発の恐怖に怯えることも無く暮らし、安定した幸せな生活を送っていたらしいが、それはまぁもう遠い昔のことだ。俺も体験したこともねぇ。
まぁそんな時代だ。孤児なんてバンバン生まれるし、なんならこの歳まで生きてこれてること自体珍しい。孤児院とかで生活しているならまだ分かるが、浮浪孤児でこの歳まで生きていくなんてほぼありえない。こいつは特に寄生するのがうまかったんだろうな。
「おい小僧、お前どうするつもりだ。俺に寄生したとこで、生きていける保証は一切ねぇぞ」
「んー、まぁいいの。僕はおじさんと行くだけだしー」
「ちっ、そうか。まぁ足だけは引っ張るなよ」
「大丈夫大丈夫」
はぁ、面倒な子守りをしなくちゃならないんだ。まぁ暇にならずにすむならまぁいいか。
「っし、小僧行くぞ。日雇いの仕事だ」
「はーい」
今日も閉ざされた空の下、爆発と近づく死の恐怖に怯えながら生きる。世界は爆弾に包まれて、俺らは死に包まれて、夢は煙になって消えていく。
そんな世界が今日も始まった。
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