異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する

眠眠

文字の大きさ
10 / 172
第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜

これからとモモモ

しおりを挟む
「それで、悪霊さんはこれからどうするの?」

 端末に興奮する俺に向かって、ユリカは尋ねる。まだ、ちょっと声に棘が残っている。

「ん……、ふむふむ、精神崩壊するのが嫌だから、しばらくここにいようかと思った。けど、ふたりの邪魔をするのは悪いから、マダムのところに厄介になろうかと思ってる、と……。うーん、別にここに居てもいいんじゃない?」

 ユリカの顔が、怒 → 喜 → 哀 と変わる。

「えー、なんで呼び止めるのさ! せっかく出てくって言ってるのにぃ~~~」
「悪霊さんの世界の話が面白そうだから、暇つぶしにもうちょっと話を聞きたいんだけど、ダメ? 悪霊さん端末操作できないから、話を聞きにわざわざマダムのところに行くのも面倒だし、普段はパンツパンツ言ってるけど、ユリカには悪霊さんの声が聞こえないから、不快になることもないんじゃない?」
「でもセミには聞こえるし、またさっきみたいになるのはヤダよー」
 
 ユリカは、ブーブー文句を言う。こうなると思ったから、マダム屋敷行きを提案したんだが、ユリカはそんなに俺が元いた世界に興味があったのか。しばらく考えて、ユリカは口を開く。

「……うーん、じゃあルールを決めようか。ハウスルール。さっきも言ったけど、悪霊さんは緊急時以外に大声で何かを叫ぶの禁止ね。私を無理やり起こしたりするのも、イラッとするからだめ」
(了解した)
「あと、家には自由に出入りしていいから。ただし、ユリカの部屋には勝手に入らないこと」
(分かった。セミルの部屋にはいいのか?)
「特に見られて困るものもないし、悪霊さんも何もしないでいるのは退屈でしょう? 自由に入ってきてもいいわよ」
(俺が入ったときに、着替えてたりとかしたら、その、……イヤじゃないのか?)
「何が?」
(見られたりとか……)
「別にー。悪霊さんがその気になったら見られ放題だから、気にしてもしょうがないからねー。あ、今までも実は結構覗いたりして、ニヤニヤしてたりするんでしょ?」
(いやまあ、その気になれば確かに見放題なんだが、何のリアクションもないから見てもしょうないんだよねーって、何言わすんじゃい!)
 
 それに見たのはセミルのではないし、あのときのあれは不可抗力であった。この世界に俺が来た理由を調査するため、あちこち見て回ってたときに、裸で出歩いているお姉さんとすれ違ったのだ。あまりに堂々としていたから、もうそれが普通だと思ってしまい、ニヤけるどこらか無表情ですれ違ったけどな。あとから四回くらい振り返って、声もかけたが。ことごとく無視されて心折れた。

「あと、プレイ中は声掛け禁止ね」
(マッサージ中な。了解した)
「こんな感じでいい? ユリカ」
「うーん、プレイ中に見られるの、ヤじゃない?」
(マッサージ中な。確かに、人によっては見られるのも嫌だよな。うん、そのときは見ないようにするから安心してくれ)
「うーん、そうね……」

 そう呟いて、セミルはユリカの側に寄った。耳に顔を寄せ、小声で二言三言囁く。

「それなら、いいかなぁ……」

 戻ってくる頃には、ユリカは恍惚の表情を浮かべて、さっきとは真逆のことを口にした。おいおい、何て言ったんだ?

「じゃあ、そういうことで。これから、よろしくね」
(……うん、よろしく)
「……あ、悪霊さん。ちょっとくらいなら見てもいいからね」
(マッサージをな)
「そっちのほうが、気持ちよさそうだし……」
「マッサージがな」


 それから一週間くらい二人と暮らしていた。暮らしていて気づいたのは、やべぇこの世界半端ねぇ、ということであった。以下、俺の驚きをダイジェストでお伝えする。

(そういえば、仕事には行かないのか?)
「仕事? なにそれ、美味しいの?」
(お金がないと、不便だろ?)
「端末ポチー」
(すげぇ、食料も日用品も何もかもが地面から出てくる。魔法みたい)
「あ、骨折れた」
(お医者さんを呼べー!)
「骨折程度なら、2秒で完治」
(天敵とかいないのか? モンスターとか)
「いない」
(病気とか)
「知らん」
(災害とかあったら、まずいでしょ)
「地震 → 無い
 雷 → 自分に落ちても、数秒で完治
 火事 → 緑の大地にはあまり燃え広がらない
 洪水 → 流されても生きてる」
(人を痛めつける悪いやつとか……)
「そういうの好きなやつ同士がコロシアムで殺し合ってる。今度見に行こうか」
(遠い?)
「遠いけど、自動車あるから大丈夫」


 理想郷はここにあった。素晴らしい、この世界なら働かなくても生きていける。働かなくてもいい世界である。他の転生先を見てみないと判断はできないが、少なくとも二度と行きたくないような世界ではない。

「何ていうか、話を聞いている限りは君の元いた世界は随分と生きづらそうだね~。そんなにニンゲンに優しくない世界があったとはね……。びっくりだ」
(俺のほうがびっくりだわ。何このニンゲンを駄目にする世界。スイッチひとつで食料とかどんどん出てくるんだけど)
「なんでも、すごい昔にそういうインフラを造ったんだって。自動でメンテまでしてくれるからか、半永久的に動くんだってさ。よく知らないけど」
(え、じゃあそれが止まったらみんな死んじゃうの?)
「さぁ? でも、基本的に何も食べなくても死なないし……」
(じゃあむしろ何でインフラ造ったんだよ……)
「そういうのを含めて、調べてる人はいるけど、まだよく分かってないみたいね」
 
 そう言って、セミルは端末を振る。恐らく、調べてる人が知り合いに居るのだろう。

(ふーん。あ、ゴミとかはどうするんだ)
「家の外に捨てておけばいいわ。なんでも呑み込んでくれるから」
(え、何が?)
「えーと、正式名称はなんだったかかな。……思い出せないや。見たほうが早いか」

 セミルは外へ出て家の裏側に周り、少し丘を下る。

「このこ」

 そう言ってセミルが示した先には、少しピンクがかった緑色の苔の塊があった。大きさはマクラかザブトンくらいだ。

(何これ?)
「私達はモモモって、呼んでる」

 セミルは持っていた食料品から包み紙を剥ぎ取り、モモモと呼ばれた物体にポイと放った。

 瞬間、ガバリと物体は割れて包み紙を呑み込んだ

(うぉ、何だコレ? 初めて見た)
「そこらじゅうに居るわよ? ああ、基本的に動かないし、地面と区別つかないから悪霊さんには分からなかったのか」
(危険は無いのか?)
「無いわよ。それに人懐っこいの。このこは私達になついてるから、名前をつけて呼んであげてるんだー」
 
 そう言って、セミルは名前を呼びつつモモモを撫でる。一瞬、またガバリと開いて腕を呑み込むんじゃないかと思ったが、そんなことはないようで、モモモはおとなしく撫でられていた。毛のように本体に絡みついていたのか、不思議と苔は剥がれること無く、セミルの手は汚れなかった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生幼女の国家級チート図書館~本を読むだけで技術が進化する世界で、私だけ未来知識持ちでした~

ハリネズミの肉球
ファンタジー
目が覚めたら、私は5歳の幼女だった。 しかもそこは―― 「本を読むだけで技術が進化する」不思議な異世界。 この世界では、図書館はただの建物じゃない。 本を理解すればするほど、魔道具も、農業も、建築も“現実にアップデート”される。 だけど。 私が転生した先は、王都から見捨てられた辺境の廃図書館。 蔵書は散逸、予算ゼロ、利用者ゼロ。 ……でもね。 私は思い出してしまった。 前世で研究者だった私の、“未来の知識”を。 蒸気機関、衛生管理、合金技術、都市設計、教育制度。 この世界の誰も知らない未来の答えを、私は知っている。 だったら―― この廃図書館、国家級に育ててみせる。 本を読むだけで技術が進化する世界で、 私だけが“次の時代”を知っている。 やがて王国は気づく。 文明を一段階進めたのは――5歳の幼女だったと。 これは、最弱の立場から始まる、知識による国家再設計の物語。 ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~

namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。 父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。 だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった! 触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。 「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ! 「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ! 借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。 圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。 己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。 さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。 「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」 プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。 最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜

黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。 ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。 彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。 賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。 地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す! 森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。 美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。 さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる! 剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。 窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...