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第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
集会
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「さてと、そろそろ行こうか」
一通りの近況報告が終わった頃にライゼはそう言った。「そうだね」「準備してくるよ」とセミルとユリカの二人は同意するが、俺には何のことか分からない。
「あ、そういえば言ってなかったか」
がちゃがちゃとテーブルを片付ける手を止めて、セミルは答える。
「これから集会に行きます」
(集会?)
「ムラのみんなが集まるよ。もしかしたら、悪霊さんの声が聞こえる人に会えるかもだし、行くよね?」
(もちろんだ)
これはちょうどいい。友達となる人に出逢えるかもしれん。このムラに住んでいる多くの連中には、すでに会話を試みて失敗しているが、全員というわけではないだろうし、行くしかない。
ちなみに、集会は定期的に行われるものではなく、機会があったら実施するものらしい。今回はライゼが来るからと言う理由で催されるようだ。旅人であるライゼの話を聞くついでに、各々がやりたいことを勝手にやるらしい。
「それじゃあ、行こうか」
ライゼは自分のジープに乗り込み、セミルとユリカはちょっとゴツい軽トラみたいな自動車に乗り込む。荷台にはセミルの部屋にあった絵が2枚と、マネキン人形が載っていた。絵は集会のついでにみんなに観てもらうそうだが、マネキン人形は何に使うんだ?
「ああ、ユリカの作った服を着せるのよ、アレ」
(え、ユリカ服作れるのか?)
「そだよう。私の服もそうだし、セミルの服も私が作ったもの」
集会の場所に移動する道中に聞いてみると、ユリカはそう答えてえへんと胸を張った。
(そいつはすごいな)
「私達だけじゃないわよ。ユリの服はいろんな人が身につけてるわ」
「前にマダムの家に行ったでしょ? あのときのお土産は私の服だしね」
(へー。そうだったのか)
そういえば、いやに大きなリュックを背負ってマダムの屋敷に行ったっけか。中に何人分もの衣服が入ってたら、大きくなるのも当然か。
「ふーん。知らなかったってことは、悪霊さん、律儀に私の部屋に入らなかったんだ?」
(いやまぁ、ハウスルールだしな)
「ユリの部屋はすごいよ。マネキン人形12体と、作業部屋に服がぎっしり詰まってて、足の踏み場もないくらい。あと、人形にはすべて名前がついてる」
(ちなみに、この人形の名前は?)
「ゼウス」
やけに、荘厳な名前であった。
自動車でゆっくり走って10分くらいの距離に、大きな建物があった。図書館か、小さな美術館くらいの大きさだ。マダムの屋敷よりやや大きいくらいだ。建物の周囲には思い思いの場所に自動車が停まっている。ムラのニンゲンのものだろう。車種は多様なものであるが、見た感じゴツいのが多いのは酷道を走るためと思われる。やばいくらいデコられていたり、走っている途中で分解してしまいそうな自動車もあり、持ち主がどんなヒトなのか気になった。
俺はセミルたちにくっついて、建物の中に入る。決してきれいとは言えないが、荒れているわけでもない。大広間には既に何人ものニンゲンが集まっていた。俺が知っている顔も多い。意思疎通できなかった連中だ。
挨拶もそこそこに、ライゼたちは広間の一角にあるテーブルに荷物を置く。セミルは壁の方に持ってきた絵を立てかけており、ユリカはゼウスくんに服を着せようとしていた。着せているか服から察するには、ゼウスくんは女性のようだ。失礼した、ゼウスさん。ライゼは知り合いの連中とハイタッチして、そのまま何かの話題で盛り上がっている。固有名詞が多くて内容はよくわからなかった。
それから30分くらいして、場には3~40人くらいのニンゲンが集まった。マダムやソーン、屋敷の連中も集まっている。集まった連中の顔をざっと確認したが、俺がまだ話したこと無いニンゲンは数人程度であった。魔法の呪文「おパンツ」を使っても誰も反応しなかったので、俺の友達になる素質があるやつは皆無のようだ。残念である。
「それでは、そろそろ今回の旅の話をしようと思う。聞きたい人は集まってくれ」
ライゼはそう宣言して、イスに座った。周囲には既にライゼと話していたニンゲンが集まっており、それを囲うようにしてわらわらと大広間のニンゲンが集まっていく。
(セミルは行かないのか?)
セミルはライゼ達を気にすることなく、絵の横に座り端末をいじっていた。
「うん。私はいいや。さっきざっと聞いたし、詳しく聞きたいわけでもないからねー。専門的過ぎて何言ってるのかよくわからないのよ」
(そうなのか)
「で、今ライゼの周りで聞いているのは、その専門家連中。悪霊さんも聞きたかったら行ってくれば?」
(そうか。では、行ってくるとしよう。物は試しだ)
俺はライゼ達のところへ移動する。おそらく、事前に公開していた情報があるのだろう。みんな端末で同じモノを観ながらライゼの話を聞いている。ライゼの近くにはホワイトボードもあった。時折出る質問にライゼは答えつつ、場は進行していく。
40分位して、ライゼの話は終わった。途中議論がヒートアップして、殴り合いに発展したが、なんとか終わってよかった。なお、怪我人は出ていない。前提がよくわからないからなんとも言えないが、大まかな内容は2つ。1つが結果の報告で、もう1つは仮説の検討だ。殴り合いになったのは後者の方だ。
前者は恐らく地下にあるだろう、物品が地面から湧き水のように出てくるインフラ調査のため、穴を掘り続けたことの結果報告。硬く平らなナニカに突き当たったので、爆弾で壊そうとするも失敗。人工物の疑いがあるという。次なる破壊手段に移行するとのこと。後者は「この世界がニンゲンにとって住みやすいのはなぜか」を探る議論であり、様々な仮説が出た。なお、殴り合いについては意見のこじれが人格の否定につながり、お互いに怒鳴り合って最終的には殴り合ったと、そんな感じだ。
周りの様子を伺う限り、この二人の殴り合いはいつものことのようなので、まあ大丈夫だろう。刃傷沙汰になったとしても、骨折すら2秒で復活するこの世界では大事でない。
セミルの元へ戻ると、何人かのニンゲンと話していた。が、ちょうど俺が戻ったときに去っていった。
(ただいまー)
「お、戻ったね。どうだった?」
(うん。興味深い話だったけど、知らないことが多くてよく分からなかった)
「そかそか」
(ユリカは?)
「持ってきた服がすぐにハケちゃったから、いま服飾仲間のところに行ってる」
(なるほど。これで集会は終わり?)
「いや、まだメインイベントが残ってる」
(メインイベント? ライゼの話ではないのか?)
「それもだけど、もう一つ重要なイベントがある」
まだ何かあったのか。それについて聞こうとしたところ、ガラリと大広間が開いて大柄の男が顔を出した。
「みんなー、準備できたぞー! そろそろ始めるぞー!」
一通りの近況報告が終わった頃にライゼはそう言った。「そうだね」「準備してくるよ」とセミルとユリカの二人は同意するが、俺には何のことか分からない。
「あ、そういえば言ってなかったか」
がちゃがちゃとテーブルを片付ける手を止めて、セミルは答える。
「これから集会に行きます」
(集会?)
「ムラのみんなが集まるよ。もしかしたら、悪霊さんの声が聞こえる人に会えるかもだし、行くよね?」
(もちろんだ)
これはちょうどいい。友達となる人に出逢えるかもしれん。このムラに住んでいる多くの連中には、すでに会話を試みて失敗しているが、全員というわけではないだろうし、行くしかない。
ちなみに、集会は定期的に行われるものではなく、機会があったら実施するものらしい。今回はライゼが来るからと言う理由で催されるようだ。旅人であるライゼの話を聞くついでに、各々がやりたいことを勝手にやるらしい。
「それじゃあ、行こうか」
ライゼは自分のジープに乗り込み、セミルとユリカはちょっとゴツい軽トラみたいな自動車に乗り込む。荷台にはセミルの部屋にあった絵が2枚と、マネキン人形が載っていた。絵は集会のついでにみんなに観てもらうそうだが、マネキン人形は何に使うんだ?
「ああ、ユリカの作った服を着せるのよ、アレ」
(え、ユリカ服作れるのか?)
「そだよう。私の服もそうだし、セミルの服も私が作ったもの」
集会の場所に移動する道中に聞いてみると、ユリカはそう答えてえへんと胸を張った。
(そいつはすごいな)
「私達だけじゃないわよ。ユリの服はいろんな人が身につけてるわ」
「前にマダムの家に行ったでしょ? あのときのお土産は私の服だしね」
(へー。そうだったのか)
そういえば、いやに大きなリュックを背負ってマダムの屋敷に行ったっけか。中に何人分もの衣服が入ってたら、大きくなるのも当然か。
「ふーん。知らなかったってことは、悪霊さん、律儀に私の部屋に入らなかったんだ?」
(いやまぁ、ハウスルールだしな)
「ユリの部屋はすごいよ。マネキン人形12体と、作業部屋に服がぎっしり詰まってて、足の踏み場もないくらい。あと、人形にはすべて名前がついてる」
(ちなみに、この人形の名前は?)
「ゼウス」
やけに、荘厳な名前であった。
自動車でゆっくり走って10分くらいの距離に、大きな建物があった。図書館か、小さな美術館くらいの大きさだ。マダムの屋敷よりやや大きいくらいだ。建物の周囲には思い思いの場所に自動車が停まっている。ムラのニンゲンのものだろう。車種は多様なものであるが、見た感じゴツいのが多いのは酷道を走るためと思われる。やばいくらいデコられていたり、走っている途中で分解してしまいそうな自動車もあり、持ち主がどんなヒトなのか気になった。
俺はセミルたちにくっついて、建物の中に入る。決してきれいとは言えないが、荒れているわけでもない。大広間には既に何人ものニンゲンが集まっていた。俺が知っている顔も多い。意思疎通できなかった連中だ。
挨拶もそこそこに、ライゼたちは広間の一角にあるテーブルに荷物を置く。セミルは壁の方に持ってきた絵を立てかけており、ユリカはゼウスくんに服を着せようとしていた。着せているか服から察するには、ゼウスくんは女性のようだ。失礼した、ゼウスさん。ライゼは知り合いの連中とハイタッチして、そのまま何かの話題で盛り上がっている。固有名詞が多くて内容はよくわからなかった。
それから30分くらいして、場には3~40人くらいのニンゲンが集まった。マダムやソーン、屋敷の連中も集まっている。集まった連中の顔をざっと確認したが、俺がまだ話したこと無いニンゲンは数人程度であった。魔法の呪文「おパンツ」を使っても誰も反応しなかったので、俺の友達になる素質があるやつは皆無のようだ。残念である。
「それでは、そろそろ今回の旅の話をしようと思う。聞きたい人は集まってくれ」
ライゼはそう宣言して、イスに座った。周囲には既にライゼと話していたニンゲンが集まっており、それを囲うようにしてわらわらと大広間のニンゲンが集まっていく。
(セミルは行かないのか?)
セミルはライゼ達を気にすることなく、絵の横に座り端末をいじっていた。
「うん。私はいいや。さっきざっと聞いたし、詳しく聞きたいわけでもないからねー。専門的過ぎて何言ってるのかよくわからないのよ」
(そうなのか)
「で、今ライゼの周りで聞いているのは、その専門家連中。悪霊さんも聞きたかったら行ってくれば?」
(そうか。では、行ってくるとしよう。物は試しだ)
俺はライゼ達のところへ移動する。おそらく、事前に公開していた情報があるのだろう。みんな端末で同じモノを観ながらライゼの話を聞いている。ライゼの近くにはホワイトボードもあった。時折出る質問にライゼは答えつつ、場は進行していく。
40分位して、ライゼの話は終わった。途中議論がヒートアップして、殴り合いに発展したが、なんとか終わってよかった。なお、怪我人は出ていない。前提がよくわからないからなんとも言えないが、大まかな内容は2つ。1つが結果の報告で、もう1つは仮説の検討だ。殴り合いになったのは後者の方だ。
前者は恐らく地下にあるだろう、物品が地面から湧き水のように出てくるインフラ調査のため、穴を掘り続けたことの結果報告。硬く平らなナニカに突き当たったので、爆弾で壊そうとするも失敗。人工物の疑いがあるという。次なる破壊手段に移行するとのこと。後者は「この世界がニンゲンにとって住みやすいのはなぜか」を探る議論であり、様々な仮説が出た。なお、殴り合いについては意見のこじれが人格の否定につながり、お互いに怒鳴り合って最終的には殴り合ったと、そんな感じだ。
周りの様子を伺う限り、この二人の殴り合いはいつものことのようなので、まあ大丈夫だろう。刃傷沙汰になったとしても、骨折すら2秒で復活するこの世界では大事でない。
セミルの元へ戻ると、何人かのニンゲンと話していた。が、ちょうど俺が戻ったときに去っていった。
(ただいまー)
「お、戻ったね。どうだった?」
(うん。興味深い話だったけど、知らないことが多くてよく分からなかった)
「そかそか」
(ユリカは?)
「持ってきた服がすぐにハケちゃったから、いま服飾仲間のところに行ってる」
(なるほど。これで集会は終わり?)
「いや、まだメインイベントが残ってる」
(メインイベント? ライゼの話ではないのか?)
「それもだけど、もう一つ重要なイベントがある」
まだ何かあったのか。それについて聞こうとしたところ、ガラリと大広間が開いて大柄の男が顔を出した。
「みんなー、準備できたぞー! そろそろ始めるぞー!」
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