異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する

眠眠

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第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜

友達いっぱい

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 この世界は海とひとつの大きな大陸から成っている。この大陸にはグルっと円を描くように16のムラが散らばり、中心に4つのムラがある。およそ半分のヒトがそのムラに住み、残りの半分は大陸の好きな場所に住んでいる。人里離れた奥地に定住する者も居れば、特定の場所に居を構えず世界を自由に旅する者も居る。いつの間にか変人が集まり、ある種の宗教団体のようにムラを形成することもある。

 そんな世界を俺達4人+悪霊は周っている。6時に位置するマダムのムラから世界旅行は始まり、反時計回りに進むことおよそ2ヶ月。1時に位置する科学のムラを出発してからさらに5つのムラを通過した俺達は、10時に位置するムラから大陸の中心へと向かっていた。

 車の中ではその5つの話で盛り上がっていた。この5つのムラは1つを除きどれも個性的であった。

「いやあ、工作のムラは凄かったな、悪霊氏。あのムラ全体にビッシリと詰まっていた歯車の数々は実に見事。あれこそ芸術の最高峰と言えよう」

(確かに、あれは凄かったな。億をも超える歯車とそれを支える回転軸。一体どれだけの歳月をかけて作り上げたのか分からないと、友達になったシギが言ってたっけ。歯車を回すとムラ全体があらゆる方向に回転するっていうのも面白かったな。動力が人力しかないのも、シュールでありロマンを感じた)

「確かに歯車には圧巻された。ただひとつ、難点を言えばテーブルを回すと家が縦に回転するのは良くなかったな。ちゃぶ台返しになるのだ。お茶はこぼすし、迂闊に食事もできないし」

「私は、家屋のムラが面白かったなー。たくさんの家がこうガッってくっついてて、なんかカッコ良かった! 道を歩いてたらいつの間にか屋根になってたし! 私、屋根の上を走ったのって初めて!」

(変形して巨大ロボットになりそうな家だったよな)

「前に見たときよりさらに建物が増築してたし、え、何でこれで崩壊しないのってくらいバランスが神がかってたよね。ジジさんの知り合いのハウスブリーダーがみんなでひとりずつ交代して増築してるって言ってたよね。何でも家を崩壊させた奴は罰ゲームなんだってさ。数年くらい強制人柱だって」

「それは面し……ゴホン、嫌ですねー。私は料理のムラが楽しかったですね。到るところから美味しそうな匂いが誘ってくるんですよ。料理人の方々もこれを食ってけあれを食ってけって熱気が凄かったです。料理もものすごく美味しかったですし、食べすぎて太っちゃいましたよー」

「誰が最高の料理を作れるか、常に競い合っていたな。どれもこれも大変美味であったが、やはり『殺し屋』と呼ばれるテツジンの料理が一歩抜きん出ているという感じか。あの至高の味に並ぶものが果たして今後出てくるのか……」

(始まりのムラのシゲハルは良いやつだったよな。ムラの案内をしてくれた上に、その歴史まで丁寧に説明してくれてさ。かつてはバラバラに寂しく暮らしていたみんなが、ときにいがみ合っていたヒトビトが、徐々に相手を思いやり、互いに寄り添ってできた世界で初めてのムラだってことがよくわかった。ただ、家の柱の傷を見せつけて「へへっ、これ俺の恋人がまだ小さかったころに俺が付けたんですよ! ナイフでこう身長測ってね。あ、こっちがあいつに付けてもらった俺の身長の傷っす!」とどうでもいい話に脱線するところはイラッとしたな。)

「ああ、そうだったな。悪霊さんと意思疎通できていたし、良いやつなんだけどときどき非常にイラッとしたな」

「一昨日まで居た『普通のムラ』は、普通だったね」
「そうだな。普通だった」
「あっ、でもそのムラにもあっくんと話しできたヒト居たよね。名前なんだっけ。ノ……ノル」
(えっと、確か……ノーマルくんだな)
「そうだ。ノーマルくんだ。うっかりしてたー」

 とヒメちゃんは無邪気に言う。心底、悪気はなかったという顔だ。無理もない。ノーマルくん、俺と話せるヒトの中で一番普通なんだもん。記憶に残りづらい顔立ちだし。貴重な友達なのに、俺もなかなか思い出すことができなかった。一昨日までそこに居たはずなのに。

 5つのムラを周り、各ムラひとりずつ、合計5人も友達が増えていた。

 工作のムラ、シギ。
 料理のムラ、コノミ。
 家屋のムラ、テトラ。
 始まりのムラ、シゲハル。
 普通のムラ、ノーマル。

 友達いっぱいである。出逢った翌日にはみんな友達認定されていたので、ディエス、ジジと合わせてこれで14人だ。20人まであと6人。そろそろゴールが見えてきた。

 そういえば、20人集まったらすぐに次の世界に移動するのだろうか。少しくらいお別れを言う時間があるといいけれど。まあ、あの死神さんのことだし、可愛いって言い続ければなんとかなるかな。そういえば、膝枕ビンタ事件以降、死神さんに会ってない。久しぶりに会いたいけれど、今は車内だし他人も多いから出てこないか。

「それじゃあ、次は塔のムラに行くよー。大陸の中央にある3つのムラに行くからねー」
「はーい」
「うむ」
「了解です……」

 運転しながらセミルが声を掛ける。ゲームに興じている三人はそっちに集中しているようで、上の空の返事を返す。
 ん? 大陸中央にあるムラは4つじゃなかったか?

(なあ、セミル……)

 そのことをセミルに確認しようとすると、セミルがジェスチャーで「耳を貸せ」と伝えてきた。なんだ? 他のみんなに聞かれたくない話か?

「マッドとノーコちゃんは既に伝えてあるんだけど、中央にあるムラのひとつには寄らないから。私は行きたいんだけどねー」

 ぼそぼそ声でセミルが話す

(理由は?)
「ヒメちゃんの教育に良くないから」

 良くないからって、あの子もう平気で他人を撃つ子に育っちゃったぞ?

「そうじゃなくて。ほら、あっくんも止めてたでしょ? 流石に私もそれは自重してるから」
(止めてたって何の……。あ。)
「気づいた?」
(気づいた。そうか。レギュレーション違反か。そういうことなら了解だ。つまり、そういう・・・・ムラがあるんだな)
「うん」
(ならやめとこ)

 なるほどね。ムラぐるみのマッサージランドがあるんだな。ヒメちゃんにはまだ100年くらい早いな。個人的には非常に興味があるけど、ここは我慢だ。転生先候補としては、非常に興味のある材料だ。

 しばらく車を走らせると、遠くから天を貫く建物が見えた。

(あれが塔か?)
「そうだね。あの近くにあるのが塔のムラ。ムラは他に二箇所あるんだ」
(へー。その二箇所はなんてムラなんだ?)
「塔のムラツースリー
(……ごめん、何て?)
「塔のムラ2と3」

 聞き間違いじゃなかった。

(え、何。じゃあ行くムラ3つ、全部塔のムラなの。塔のムラ1,2,3なの? なんでそんな名前になったし!)
「塔のムラ2,3からも塔が見えるから。早いもの順で2,3になったんだって」

 だとしても、もう少し捻ろうよ。安直が過ぎるよ。2と3のムラの住人はそれでいいのかよ。

「特に気にして無いらしいよ。むしろ分かりやすくて高評価らしい」
(まじでか……)
「まあ、住んでるヒトは変人ばかりだからね。あの塔も随分前に調査は終わっちゃったけど、遺物らしいし」

 ああ、科学のムラの連中と似た奴らが住んでるのね。それは変人の割合が高いだろうな。ディエスみたいなのばっかりだったら嫌だな。

 俺はため息をついて塔を見る。相変わらずの曇天に潜むように塔は不気味に直立していた。
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