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第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜
モルモット
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翌朝。少しスッキリしたクリスくんに秘策のことを尋ねてみた。
(……で、これが秘策か?)
「そうです」
そう言って彼が取り出したのは手のひらサイズの動物のぬいぐるみだ。デフォルメされた猫に見える。
「これを彼女の部屋に置いておきます。このぬいぐるみに話しかけるなら、少しは違和感も消せるでしょう」
なるほどね。レイジーちゃんが見えない何かに話しかける違和感をこのぬいぐるみで消すのか。
(でも、これだと複雑な会話はできないね。問答を繰り返すとさすがに変に思われちゃうし)
「そういったことは小声で話せばいいと思いますよ。それならマイクでも拾えないですし、このぬいぐるみを悪霊さんの居場所の目印にすれば、彼女もどこに話しかければ分かりますし」
なるほどね。それなら大丈夫かな。俺の声は録音できないみたいだし。
「このことは悪霊さんからレイジーに伝えてください」
(分かった)
打ち合わせを終えて、俺達はレイジーちゃんの部屋へと向かう。
「わあ! かわいい、ね」
レイジーちゃんは彼から渡されたぬいぐるみを見て笑顔を浮かべる。
「レイジーにプレゼント」
「ありがとー、クリス」
手先で人形を弄りながら彼女は言う。気に入ったらしい。
「それを渡しに来ただけだから僕はもう行くね。また夕方に来るから」
「はーい」
そう言って彼は去っていった。その間に彼女に説明しろということだな。おれはぬいぐるみの後ろに移動して彼女に声をかける。
(レイジーちゃん、ちょっといいかな?)
「!」
彼女は人形を掴んで目を見張る。
「……レイジーちゃん?」
「ぬいぐるみ、喋った!」
(あ、ごめん。俺だよ。悪霊さんだ。ちょっと黙ったまま聞いて欲しいんだけど、いいかな?)
こくんと頷く彼女。
(あ、リアクションも取らずに聞いて欲しいんだ)
俺はそう前置きして、ぬいぐるみを渡した意図を説明する。
(ーーというわけで、俺がここに居るときはそのぬいぐるみの傍にいるようにするから。分かったら小声で返事してくれるか?)
「うん、分かった」
ぬいぐるみを耳元に寄せて彼女は言う。よし、大丈夫そうだな。
(よし。これで心置きなくおしゃべりができるな。それで、レイジーちゃんに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?)
「いい、よ」
こうして俺は彼女と仲を深めるのであった。
彼女と直接コミュニケーションを取ったので、彼女のプロフィールを追加。
グレージー。物心ついたときからここで暮らしている。モルモット。本格的な実験は現在は行われていないが、定期的に検査が行われている。昔の実験でかなり痛い思いをしたため、白衣を着た人が嫌い。というか怖い。優しく世話をしてくれるため、クリスくんは好き。なぜクリスくんが彼女の面倒を見ているのか彼女自身も知らない。ただ、以前まで世話をしていた生命環境部の人間は彼女に対して酷く怯えていたらしい。その理由も彼女は知らないという。
(定期検診ってどんなことをしているの?)
「これ」
そう言って彼女は俺に手のひらを見せた。
(え?)
今まで気づかなかったが、彼女の五指のうち、一本が変だ。第一関節から先が欠損している。前に会ったときはそんなことになってなかったはずだ。まさか、その定期検診とやらで取られたのか?
(え、ちょ、これ痛くないの!? 大丈夫!?)
心配して叫ぶと彼女は耳を抑えて顰め面をした。あ、ごめん。至近距離で大声を出してしまった。
(ごめん。でも、大丈夫? 痛くない?)
「もう、痛くない」
そう言って彼女は切断面をちょんちょんと触る。普通の皮膚の色をしてるので、確かに痛くはなさそうだ。けど「もう」ってことは検診後は痛かったんだな。
(検診って、そんな酷いことするのか?)
「毎回」
毎回って、そんな頻繁にしていたらあっという間に指がなくなってしまう。あれ、でも他の指はちゃんと先まであるな。
「大丈夫。取られるのは、いつもこの指」
(いつもってーー)
「明日には生えてくるから。私、そういう身体、だから」
彼女はそう言って、悲しく笑った。ヒメちゃんの顔で。泣きそうな顔で。
(そっか……)
情けないけど、俺にはそう言うことしかできなかった。
それからどんなことを話したかはよく覚えていない。適当に慰めの言葉を吐いて、そのまま当たり障りのない会話をクリスくんが来るまで続けたと思う。
彼は新しい本を携えていた。以前の本よりも少し難しそうな本だ。小学校低学年レベルのものかな。彼女の言語能力が成長著しいため、それに合わせたものを持ってきたらしい。
いつものように彼は彼女に読み聞かせする。彼の彼女への態度は優しい。少なくとも、彼の先輩のように突き放すような態度は見られない。
ミッションのこと抜きで、彼女のことをどう思っているのか、彼に訊いてみたいと思った。
(……で、これが秘策か?)
「そうです」
そう言って彼が取り出したのは手のひらサイズの動物のぬいぐるみだ。デフォルメされた猫に見える。
「これを彼女の部屋に置いておきます。このぬいぐるみに話しかけるなら、少しは違和感も消せるでしょう」
なるほどね。レイジーちゃんが見えない何かに話しかける違和感をこのぬいぐるみで消すのか。
(でも、これだと複雑な会話はできないね。問答を繰り返すとさすがに変に思われちゃうし)
「そういったことは小声で話せばいいと思いますよ。それならマイクでも拾えないですし、このぬいぐるみを悪霊さんの居場所の目印にすれば、彼女もどこに話しかければ分かりますし」
なるほどね。それなら大丈夫かな。俺の声は録音できないみたいだし。
「このことは悪霊さんからレイジーに伝えてください」
(分かった)
打ち合わせを終えて、俺達はレイジーちゃんの部屋へと向かう。
「わあ! かわいい、ね」
レイジーちゃんは彼から渡されたぬいぐるみを見て笑顔を浮かべる。
「レイジーにプレゼント」
「ありがとー、クリス」
手先で人形を弄りながら彼女は言う。気に入ったらしい。
「それを渡しに来ただけだから僕はもう行くね。また夕方に来るから」
「はーい」
そう言って彼は去っていった。その間に彼女に説明しろということだな。おれはぬいぐるみの後ろに移動して彼女に声をかける。
(レイジーちゃん、ちょっといいかな?)
「!」
彼女は人形を掴んで目を見張る。
「……レイジーちゃん?」
「ぬいぐるみ、喋った!」
(あ、ごめん。俺だよ。悪霊さんだ。ちょっと黙ったまま聞いて欲しいんだけど、いいかな?)
こくんと頷く彼女。
(あ、リアクションも取らずに聞いて欲しいんだ)
俺はそう前置きして、ぬいぐるみを渡した意図を説明する。
(ーーというわけで、俺がここに居るときはそのぬいぐるみの傍にいるようにするから。分かったら小声で返事してくれるか?)
「うん、分かった」
ぬいぐるみを耳元に寄せて彼女は言う。よし、大丈夫そうだな。
(よし。これで心置きなくおしゃべりができるな。それで、レイジーちゃんに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?)
「いい、よ」
こうして俺は彼女と仲を深めるのであった。
彼女と直接コミュニケーションを取ったので、彼女のプロフィールを追加。
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(定期検診ってどんなことをしているの?)
「これ」
そう言って彼女は俺に手のひらを見せた。
(え?)
今まで気づかなかったが、彼女の五指のうち、一本が変だ。第一関節から先が欠損している。前に会ったときはそんなことになってなかったはずだ。まさか、その定期検診とやらで取られたのか?
(え、ちょ、これ痛くないの!? 大丈夫!?)
心配して叫ぶと彼女は耳を抑えて顰め面をした。あ、ごめん。至近距離で大声を出してしまった。
(ごめん。でも、大丈夫? 痛くない?)
「もう、痛くない」
そう言って彼女は切断面をちょんちょんと触る。普通の皮膚の色をしてるので、確かに痛くはなさそうだ。けど「もう」ってことは検診後は痛かったんだな。
(検診って、そんな酷いことするのか?)
「毎回」
毎回って、そんな頻繁にしていたらあっという間に指がなくなってしまう。あれ、でも他の指はちゃんと先まであるな。
「大丈夫。取られるのは、いつもこの指」
(いつもってーー)
「明日には生えてくるから。私、そういう身体、だから」
彼女はそう言って、悲しく笑った。ヒメちゃんの顔で。泣きそうな顔で。
(そっか……)
情けないけど、俺にはそう言うことしかできなかった。
それからどんなことを話したかはよく覚えていない。適当に慰めの言葉を吐いて、そのまま当たり障りのない会話をクリスくんが来るまで続けたと思う。
彼は新しい本を携えていた。以前の本よりも少し難しそうな本だ。小学校低学年レベルのものかな。彼女の言語能力が成長著しいため、それに合わせたものを持ってきたらしい。
いつものように彼は彼女に読み聞かせする。彼の彼女への態度は優しい。少なくとも、彼の先輩のように突き放すような態度は見られない。
ミッションのこと抜きで、彼女のことをどう思っているのか、彼に訊いてみたいと思った。
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