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第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜
クリス vs ベータ2
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手榴弾の煙が晴れていく。それと同時にクリスくんを覆っていた羽が開いた。
「思ったより、この羽は頑丈ですね。一枚でも十分でした……おっと?」
余裕を見せるクリスくんに金属製の網が絡みつく。
「手榴弾で倒せるとは思ってねーよ」
いつの間にかクリスくんの背後に回ったベータさん。彼の手には特殊な形状の銃が握られている。銃の先端からはワイヤーが飛び出てクリスくんに被さる網に繋がっていた。ネットガンかな? いや、それだけならワイヤーは必要ない。
「! レイジー! 斬って!」
「これはまだ試して無かったな。さて何Vまで耐えられるかな?」
ベータさんがトリガーを引く。ビクッと、クリスくんの身体が痙攣した。
「ごほっ。……なんだありゃ。テーザー銃か?」
(アスカ。無事だったか)
咳き込みながらアスカが言う。
「ユキトが盾になってくれたから余裕だよ。アルバート、怪我はないか?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
アスカは自分の前で蹲っているユキトを顎でしゃくり、アルの心配をする。ユキトの扱いはそれでいいのか。
「いいんだよ。アルバートは俺たちと違って怪我してもすぐに快復しないんだから」
「悪霊さん。お気遣い痛み入ります。ですが、大丈夫です。……ふぅ。ほら、ね」
ユキトは鉄片が幾つも突き刺さった腕を見せる。見ている俺のほうが痛そうな怪我だったが、盛り上がる肉に徐々に鉄片は押し出されていき、やがてすべての傷が塞がり消えた。
(え、何これ!? すごいねユキト。レイジーちゃんみたいじゃん)
「俺たちはユグドのパートナーだからな。メンバーは全員《イヴの欠片》並の回復力を持ってる」
(《イヴの欠片》……?)
「ユグドやレイジーみたいにテラに来たガイア連中の呼び名だ。そんなことより、あれ、やべえんじゃねえのか? 焦げ臭いニオイがしてるぜ?」
(え?)
「クリス!」
アスカの視線の先には未だ網に絡まったままのクリスくんが居た。俺は匂いは感じないけど、焦げ臭いってことは電流を流してるのか? アルも焦った顔してるし、クリスくんピンチか!
そう思った瞬間、金属同士が擦れる悲鳴にも似た音が響き、クリスくんを覆う網はハラリと床に落ちた。彼はベータさんとは反対方向に跳躍し距離を取る。ベティさん並のジャンプ力だ。
「この銃高かったんだがな……」
「知りませんよ! 今のは結構痛かったです。僕が普通の人間だったら死んでますよ?」
「大型モンスター捕獲用だからな。リミッターも外してある。どの程度人外になったか確かめるのがこの模擬戦の目的じゃないのか?」
「僕は慣れない身体のリハビリってアスカに聞いたんですけどね」
「どっちでもいいさ。さて、電流は有効……と。他に何が効くんだい? ほら、おじさんに教えてごらんよ」
「言うわけ無いでしょうが。馬鹿ですか」
「別に言わなくてもいいよ。身体に直接聞くからさ」
ベータさんは新たな銃を取り出してクリスくんに発砲する。
「同じ手は……ッ!?」
再び羽で弾こうとしたクリスくんの顔が歪む。羽に当たった弾が弾けたのだ。
「同じじゃないよ、炸裂弾だ。……でも、これはあんまり効果無さそうだな。おっと弾切れだ」
ベータさんは銃弾を惜しむことなく連射するが、クリスくんは2枚の羽ですべて防いで見せた。ホールドオープンした銃を放り捨てるや否や、彼はすたこらさっさと逃走する。
「待て!」
「待てと言われて待つ奴は居ねえよ。それよか、迂闊に追ってきていいのかい?」
「……? ッ! な、なんでこんなところにマキビシが……」
クリスくんは追い脚を止める。よく見ると、クリスくんとベータさんの間にマキビシが撒かれていた。色が床に紛れていて非常に見づらい。
「はっはっは、面白いことするな」
「忍者ですか……」
アスカは笑い、ユキトはため息をつく。
「こんなものレイジーの羽で払ってしまえばーー」
「それから、そんなところで迂闊に止まっていいのかい?」
ピッと。彼は手に持ったリモコンのスイッチを押す。すると、クリスくんを囲うように台座に置かれた3挺の機関銃がせり上がり、自動で彼に照準を向けた。
「ーーは?」
「ほれ、ポチっとな」
工事現場のドリルのような音が響く。白煙とともに断続的に奏でられる3挺分の銃声が空間を満たしていく。
「絶対に顔をだすなよ、アルバート。ユキト、アルバートに跳弾が当たったらお前のせいだからな」
「わ、分かった」
「そんな無茶な! アルバート、絶対に当たるなよ! 絶対だからな!」
すぐ隣に居るはずのアスカの声もやっと聞き取れるほどだ。あと、なんかフラグが立った気がする。
クリスくんは6枚の羽で懸命に押し寄せる銃弾を防いでいる。
「……ただの銃弾の嵐ならなんとか」
「だから、忠告してやっただろうが。迂闊に止まっていいのか、とな」
ベータさんはクリスくんの見せつけるように2つ目のリモコンを取り出し、親指を下に向けそのままスイッチを押す。クリスくんの周囲の地面が十数箇所、落とし穴でもあるかのように小さく開く。ポンとそこから何かが上へと飛び出した。
「跳躍地雷ーー」
「……さて、羽の内からの攻撃は有効かな?」
十数の火柱とともに爆煙が生じる。強面の表情を一切変えず、ベータは冷静に戦果を確認していた。
「思ったより、この羽は頑丈ですね。一枚でも十分でした……おっと?」
余裕を見せるクリスくんに金属製の網が絡みつく。
「手榴弾で倒せるとは思ってねーよ」
いつの間にかクリスくんの背後に回ったベータさん。彼の手には特殊な形状の銃が握られている。銃の先端からはワイヤーが飛び出てクリスくんに被さる網に繋がっていた。ネットガンかな? いや、それだけならワイヤーは必要ない。
「! レイジー! 斬って!」
「これはまだ試して無かったな。さて何Vまで耐えられるかな?」
ベータさんがトリガーを引く。ビクッと、クリスくんの身体が痙攣した。
「ごほっ。……なんだありゃ。テーザー銃か?」
(アスカ。無事だったか)
咳き込みながらアスカが言う。
「ユキトが盾になってくれたから余裕だよ。アルバート、怪我はないか?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
アスカは自分の前で蹲っているユキトを顎でしゃくり、アルの心配をする。ユキトの扱いはそれでいいのか。
「いいんだよ。アルバートは俺たちと違って怪我してもすぐに快復しないんだから」
「悪霊さん。お気遣い痛み入ります。ですが、大丈夫です。……ふぅ。ほら、ね」
ユキトは鉄片が幾つも突き刺さった腕を見せる。見ている俺のほうが痛そうな怪我だったが、盛り上がる肉に徐々に鉄片は押し出されていき、やがてすべての傷が塞がり消えた。
(え、何これ!? すごいねユキト。レイジーちゃんみたいじゃん)
「俺たちはユグドのパートナーだからな。メンバーは全員《イヴの欠片》並の回復力を持ってる」
(《イヴの欠片》……?)
「ユグドやレイジーみたいにテラに来たガイア連中の呼び名だ。そんなことより、あれ、やべえんじゃねえのか? 焦げ臭いニオイがしてるぜ?」
(え?)
「クリス!」
アスカの視線の先には未だ網に絡まったままのクリスくんが居た。俺は匂いは感じないけど、焦げ臭いってことは電流を流してるのか? アルも焦った顔してるし、クリスくんピンチか!
そう思った瞬間、金属同士が擦れる悲鳴にも似た音が響き、クリスくんを覆う網はハラリと床に落ちた。彼はベータさんとは反対方向に跳躍し距離を取る。ベティさん並のジャンプ力だ。
「この銃高かったんだがな……」
「知りませんよ! 今のは結構痛かったです。僕が普通の人間だったら死んでますよ?」
「大型モンスター捕獲用だからな。リミッターも外してある。どの程度人外になったか確かめるのがこの模擬戦の目的じゃないのか?」
「僕は慣れない身体のリハビリってアスカに聞いたんですけどね」
「どっちでもいいさ。さて、電流は有効……と。他に何が効くんだい? ほら、おじさんに教えてごらんよ」
「言うわけ無いでしょうが。馬鹿ですか」
「別に言わなくてもいいよ。身体に直接聞くからさ」
ベータさんは新たな銃を取り出してクリスくんに発砲する。
「同じ手は……ッ!?」
再び羽で弾こうとしたクリスくんの顔が歪む。羽に当たった弾が弾けたのだ。
「同じじゃないよ、炸裂弾だ。……でも、これはあんまり効果無さそうだな。おっと弾切れだ」
ベータさんは銃弾を惜しむことなく連射するが、クリスくんは2枚の羽ですべて防いで見せた。ホールドオープンした銃を放り捨てるや否や、彼はすたこらさっさと逃走する。
「待て!」
「待てと言われて待つ奴は居ねえよ。それよか、迂闊に追ってきていいのかい?」
「……? ッ! な、なんでこんなところにマキビシが……」
クリスくんは追い脚を止める。よく見ると、クリスくんとベータさんの間にマキビシが撒かれていた。色が床に紛れていて非常に見づらい。
「はっはっは、面白いことするな」
「忍者ですか……」
アスカは笑い、ユキトはため息をつく。
「こんなものレイジーの羽で払ってしまえばーー」
「それから、そんなところで迂闊に止まっていいのかい?」
ピッと。彼は手に持ったリモコンのスイッチを押す。すると、クリスくんを囲うように台座に置かれた3挺の機関銃がせり上がり、自動で彼に照準を向けた。
「ーーは?」
「ほれ、ポチっとな」
工事現場のドリルのような音が響く。白煙とともに断続的に奏でられる3挺分の銃声が空間を満たしていく。
「絶対に顔をだすなよ、アルバート。ユキト、アルバートに跳弾が当たったらお前のせいだからな」
「わ、分かった」
「そんな無茶な! アルバート、絶対に当たるなよ! 絶対だからな!」
すぐ隣に居るはずのアスカの声もやっと聞き取れるほどだ。あと、なんかフラグが立った気がする。
クリスくんは6枚の羽で懸命に押し寄せる銃弾を防いでいる。
「……ただの銃弾の嵐ならなんとか」
「だから、忠告してやっただろうが。迂闊に止まっていいのか、とな」
ベータさんはクリスくんの見せつけるように2つ目のリモコンを取り出し、親指を下に向けそのままスイッチを押す。クリスくんの周囲の地面が十数箇所、落とし穴でもあるかのように小さく開く。ポンとそこから何かが上へと飛び出した。
「跳躍地雷ーー」
「……さて、羽の内からの攻撃は有効かな?」
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