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第一幕 壊れていく

1-5.失った純潔※

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「……いい子だね、トゥトゥナ」

 シュテインの歪んだ微笑みが、欲に塗れてそれでも艶めいている。シュテインがトゥトゥナの手首を掴み、静かに歩き出した。その手が手枷のようにトゥトゥナには感じた。

 しかし抵抗することもなく、火照った体をそのままに一室に連れこまれる。いくつものランプが部屋中を照らしていた。天蓋付きのベッドがある豪勢な部屋だ。

 体が熱く、立ったまま動けないトゥトゥナの頬を、シュテインが両手で挟みこむ。親指で唇をなぞられた。ぴく、と無意識にトゥトゥナの体が反応する。

「目を閉じなさい」

 言われるがまま瞼を降ろす。瞬間、唇を奪われた。ぬめぬめとした舌が口の端から端までを舐めていく。口を塞がれて、息のできない苦しさにトゥトゥナは呻く。

「鼻で息をするんだ。ゆっくり……口を開けて舌を出して」

 トゥトゥナははじめての口付けに、それでも何も思わなかった。ただ言われるがまま、されるがまま、言うとおりに舌を出す。シュテインの舌がトゥトゥナの舌に絡みつく。

 抱きしめられ、少しずつ服を脱がされた。体の熱さ、唇から伝わる奇妙な感覚。そしてシュテインの温もり。いつの間にか下着だけになっていたが、強く抱き留められているためか、寒さは感じなかった。

 ――こんなこと、しなくていいのに……。

 突き入れて体を揺さぶり、中に欲を出して終わる。それしか輪廻の中で体験してこなかったトゥトゥナは、惚けていく頭の隅で戸惑いを覚えた。

「ん……」

 露わになった乳房を揉まれ、声が漏れる。シュテインの手つきは巧みだった。ツンと主張する乳頭を指で摘まみながら、全体を丹念に揉み上げていく。唇はいつの間にか首筋に移り、鎖骨にかけてくまなく舐められた。

「トゥトゥナ……」

 頭を撫でるシュテインの声は異常に優しい。まるで恋人にするように、手の甲にキスをされた。そのまま近くのベッドへと横たえられる。

 足を持ち上げられ、残る下着を剥ぎ取られた。シュテインもまた、乱雑に寝間着を脱ぐ。揺らぐトゥトゥナの視界にシュテインの逞しい半身が映る。そこには落馬の際のものと思しき傷があった。

「傷……残ったんですね」

 シュテインは何も言わず微笑む。艶美に、唇を舐めながら。そうしてトゥトゥナの胸の双丘に顔を埋めた。

「あ、っ」

 胸の尖りを口に含まれ、カリッと歯を立てられた。シュテインの手は休むことなくトゥトゥナの腰を、太股をまさぐっている。

 乳頭を吸われ、体のあちこちを触られるたび、全身の熱が酷くなるのをトゥトゥナは感じた。今までに感じたことのない、経験したことがない感覚に、ただ首を振る。

「やぁ……」
「嘘が下手だと言ったよ。だってここは」
「ひっ」

 股間の和毛近くにあったシュテインの指が、いきなり敏感な雌芯を爪弾いた。くちゅ、と小さな音がする。

「ほら、もうこんなに濡れている」
「い、言わないで……」

 恥ずかしくて顔から火が出そうになり、トゥトゥナは唇を噛みしめた。

 男女の交わりのことなど、医者の知識として持ち合わせている程度だ。それに今までは濡らされることもなく、ただ純潔を散らされていただけ。痛みと苦しみしか知らない。

「こんなに濡らして……愛らしいね、トゥトゥナ」
「あっ、んあっ」

 なのに秘芽を指で優しく擦られ、押し潰されるように愛撫されれば、得も言われぬ官能が全身に走る。蜜路から愛液が溢れているのが自分でもわかった。

「膨れているのがわかるかい?」
「だめ、だめぇっ」

 くちゅくちゅとわざとらしい音を立て、シュテインの指は執拗に花芯を責め立てる。雷のように走る気持ちよさは過激で、挟まれて擦られるたびトゥトゥナは頤をのけ反らせた。

「いや、だめ、変……っ」
「達するなら達しなさい。もっと心地よくしてあげよう」
「あ、んん……っ!」

 花芽をきゅっと潰された刹那、全身がびくびく震える。足先から脳髄まで駆け抜けた快楽は激しく、気付かぬうちにトゥトゥナはシュテインの肩に爪を立てていた。

「可愛くいけたね。けれどまだほぐすから」
「や、です……これ以上……」

 はじめての絶頂に怯えるトゥトゥナに、しかしシュテインは艶美に笑うばかりだ。

「指を入れるよ」
「ん、ぅっ」

 濡れそぼった隘路に、ゆっくりとシュテインの指が入った。指は媚襞を探るように優しく中でうごめく。

「あ、だめっ……!」
「君の善いところは、ここか」

 最初の違和感はすぐに消えた。腹側の奥に指が触れた瞬間、今まで以上の快楽に腰が勝手に動く。トゥトゥナの制止も気にせず、シュテインの指は円を描くように『善いところ』を責め続ける。

「ふあ、ああっ……いやぁ! だめ、だめなのっ」
「いい声だ。もっと啼きなさい」

 悲鳴にも似た嬌声を上げるトゥトゥナに、シュテインは笑みを深めた。そしてそのまま、秘部へ口を近付ける。

「何、ひゃっ……!」

 トゥトゥナが気付いたときには遅い。蜜に塗れた淫核を舌で舐められ、指とは違った快感が再び全身を襲った。

「ん、んん、あ、あっ」

 そんな部分を舐めるなんて信じられず、それでもただ、激しい悦楽の坩堝にトゥトゥナは突き落とされた。体中を捻り、涙を流しながら身悶える。秘路に入った指も動かしたまま、肉芽に吸いつくシュテインは容赦がない。

「いやぁっ! また、だめ、ああっ……あああーっ!」

 形のよい胸を揺らし、情けなく二度目の絶頂を迎える。シーツを握り、惚けたまま落涙するトゥトゥナを見下ろして、シュテインは無常にもささやいた。

「中と外でいくなんて、やはり君はいやらしいのかもしれないね。誰に躾けられたのかな」
「知ら、ない……こんなの、私……」
「そうだね、男と交わっていたにしては狭すぎる。反応も初々しいし」

 絶頂の余韻に浸るトゥトゥナは、シュテインがサイドテーブルにある小瓶を取り出すのを涙目で見た。同時に下着の前をくつろがせ、赤黒い怒張を露わにするのも。

 ――あ、あんなのが私の中に入るなんて……。

 それは介護していたときに見た夫のものよりも大きく、まさに凶器のようだ。トゥトゥナは怯え、震える足を必死で閉じた。

 反り返り、女を穿つ準備ができた肉竿に、シュテインは小瓶から油みたいなものを注ぐ。

「これは潤滑油と媚薬、両方を兼ね揃えていてね。君も気に入るはずだよ」
「いや……」

 小さくささやき、トゥトゥナは逃れようと身をよじった。けれど気怠い体は言うことを聞かず、伸びたシュテインの手によって足を広げられてしまう。

「ひくついている。これが欲しいくせに。本当に君は嘘が下手だ、トゥトゥナ」

 シュテインが非道な表情を浮かべた。おとぎ話に出てくる悪魔が本当にいれば、今の彼だとトゥトゥナは思う。

「君を、もらう」
「ひ……っ」

 シュテインがのしかかってきた瞬間、同時に凶器――淫棒が躊躇なくトゥトゥナの蜜路を押し広げて中に滑り込んだ。

「……っ!」

 激痛にトゥトゥナは顔が歪むのがわかった。苦しくて、でも熱い。異物感に口を開け、必死に息を繰り返す。

 ――アロウスにも……一度も抱かれたことはなかったのに……。

 苦痛の中、夫の顔が脳裏を掠めた。アロウスとはどの経験でも体を重ねていない。輪廻で体験したのはスネーツからの陵辱だけだ。けれど、その記憶よりはまだ痛みは少ないように思う。

「やはり君は清らかな身だったね……それでもわかるかい? 僕を咥えて放そうとしない」
「あ、ああ……」

 シュテインはトゥトゥナの純潔を奪いながらも、そのまま動こうとはしなかった。代わりに両胸をこねくり回し、すっかり立った胸の尖りを指先でいじくる。

 脈打つような痺れが、次第に、奇妙な疼きへと変わっていくのをトゥトゥナは感じた。広げられた隘路全体が熱を帯びる。媚肉が勝手に、収縮を繰り返していた。

「そろそろ動くよ、トゥトゥナ」
「や、ん、ああっ」

 肉茎が引き抜かれ、直後奥までを貫く。肉がぶつかり合う打擲音は激しさを増し、体を揺さぶられたせいか、トゥトゥナの口から悲鳴が漏れた。

 痛いはずなのに、苦しいはずなのに、それらの苦悶が甘い痺れになっていく。

「あ……んっ、んっ、ひあ……」
「気持ちいいだろう? 処女をも狂わせる薬だからね」
「きも、ちよく……なんて……あっ、ああ……っ」

 ――熱い……体が、おかしくなる……。

 肉槍が媚肉を割って入るたび、指では届かない奥をぐりぐりと押されるつど、トゥトゥナの意識は淫悦に持っていかれる。圧迫感はあった。けれど、それ以上に強い快感が最奥を抉られるごとに身を襲うのだ。

「ひあ、んあ、ふあっ、ああぁっ!」

 自然とトゥトゥナは甘く、淫らな声音を出すようになっていた。それを耳にしてだろう、シュテインは満足げにトゥトゥナの細腰を掴んだ。

「ああ……トゥトゥナ。中が絡みついてくる。僕の形を覚えるように離れない」

 汗を垂らし、淫猥な言葉を吐きながらシュテインは腰を早める。貪るように体を開かれているというのに、トゥトゥナの体は知ったばかりの法悦を求めはじめていた。

 ――知らない……こんな、の、知らない……!

 恐ろしいほどの官能が心身を蹂躙した。硬い肉楔が子宮近くを掠め、擦るたびに全身が雷を打たれたかのようになる。意識が飛びそうで、トゥトゥナはシーツを掴んで叫んだ。

「怖い、あ、んああ、怖いのっ……ふあ、ひあんっ。あ、ふあぁぁぁ!」
「恐怖も痛みも、そして快感も、生きているという証しだよ」
「あ、ああっ。だめぇ、私……私ぃっ……」

 シュテインはよがり狂うトゥトゥナの足を持ち上げ、自らの肩に乗せた。秘路から漏れた破瓜の血と愛液でシーツが汚れる。それに構わず腰を回し、あるいは突き入れ、トゥトゥナの体を思う存分堪能していく。

「ひ、くあ、ああ! んあ、ああっ! ふあ、あああっ」

 トゥトゥナの口から漏れ出るのは、喚きという名の甘い悲鳴だ。シュテインは息を切らしながら笑う。突くたびに彼女が達しているのを、媚襞のうごめきで感じていたから。

 シュテインの肉茎は滾りに滾り、媚肉を満杯まで押し広げていた。蜜と血に塗れた分身を何度も何度も抽送すれば、結合部からぬちゃぬちゃと淫らな水音が部屋に響き渡る。

「だめ、だめ、私、もう……っ、ああ!」
「ふふ……いい顔をしているね。その顔が見たかった。そろそろ僕もいくよ、トゥトゥナ。中に出すから、全部を子宮で受け止めなさい」
「だ、め、それはっ。私……っ」

 トゥトゥナを我に返したのは、シュテインの非情な命令だった。子ができてしまう――その恐怖と不安が、シュテインの胸板を押す行動を取らせる。

「嘘つきだね。中は欲しがっている。こんなに、きゅうきゅうに締めつけているくせに……奥まで僕の色に染めてあげるよ、トゥトゥナ」
「いや、あ、ああ! ん、あああ……!」

 シュテインの呼気が荒くなる。腰の動きも速まる。信じられないほどの快感に、トゥトゥナが思わず腰を浮かせた刹那だった。

「く、ぅっ……!」
「あっ、んあああ――っ!」

 灼熱の欲がトゥトゥナの子宮を叩く。同時に背中を反らし、トゥトゥナはとんでもないほどの法悦に飲みこまれた。びく、びく、と体中が震える。

 シュテインは数度腰を動かし、子種を奥へと送るように、残滓すら中へ吐き出した。

「は……っ。凄いね……収斂して、まだ僕のを欲しがっているよ」
「あ、ああ……」

 自失したトゥトゥナは、シュテインと結ばれたまま身をひくつかせることしかできない。

 快楽に溺れた罪悪感、アロウスに対する申し訳なさ、自分への失望――そんなものがない交ぜになり、涙となって零れ落ちる。

 シュテインはすかさずそれを舐め取り、今度はトゥトゥナの足を左右に大きく広げた。

「まだだ。寝かせない。薬が切れるまで君を味わう」
「やめ……あ、んあ……っ!」

 萎えることの知らない肉竿が、ぐちゃぐちゃと淫筒を掻き回す。

 雌芯を指で潰されながら、目一杯に膨らんだ雄茎で媚襞を犯される感触。そこからもたらされるのは紛れもない悦楽だ。

 それこそトゥトゥナが喉を枯らして嬌声を上げ続け、許してと懇願しても、シュテインは止まらなかった。トゥトゥナが法悦の果てに辿り着き、喘ぐだけしかできなくなるまで、容赦なく子種という名の欲望を中に注いだ。
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