【R18】二重の執愛〜花枯らしの歌姫と呪われた王〜【完結】

双真満月

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第三幕:守る意志

3-5:献身の末※

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 その日、議会は一日早く、無事に終わったらしい。夜、自室に来たアーベに聞かされ、シュトリカは複雑な思いだった。まじなは一体誰なのだろう、そればかり考えてしまう。

「何を惚けている、シュトリカ」
「あ、やぁ……」

 しかし、後ろから覆い被さってくるアーベにささやかれ、乳房を強く揉まれてしまえば、思考が蕩け、まともな判断もできはしない。寝間着の裾はすでに腰まで捲れ上がり、何もつけていない臀部を晒している始末だ。

 それでも自らの痴態を確認することはできなかった。布で、目の部分を覆われてしまっている。天蓋の柱に掴まり、ただ、アーベから時折与えられる快感に身悶えた。

「数日もお前を抱いていない。いい加減、限界だ……ほら、もっと尻を突き出せ」
「だ、だめ……です……お体に、障りますから……、んっ」
「どうせ疲れるのはあいつだ。これからも約束を果たしてほしいんだろう?」
「ふあ……っ……」

 戯れるように、体中、至るところをくすぐるように触られる。耳朶を舌で嬲られ、首筋にもまた、音を立てて所有の痣をつけていくアーベに、抵抗することはできなかった。

 目隠しをしているため、次にどこを触れられるかわからない。

 それが恐怖と、どこか期待のような感情をもたらす。アーベはそんな内心を汲み取ったのだろう。焦らすように腹部や内股をさするように撫でるばかりで、肝心な、悦楽を強く感じる部分には手を当ててこない。

「あ、ああ……ん、ぅっ」

 勝手に腰がくねる。体は知ってしまった快楽を求めようと、浅ましく動く。

「……いやらしい子だね、シュトリカ。そんなに大事な場所を触ってほしいのかい?」

 耳元で、エンファニオの声がした。物言いもエンファニオそのもので、思わず肩が跳ね上がる。くぐもった笑い声はアーベのものなのだが。

「今日は私が抱いてあげるからね。ああ、こんなに乳房の先を尖らせて……可愛いよ」
「ああん……っ!」

 突然、きゅっと胸の尖りを摘ままれ、強烈な淫悦に震えた。そのまま乱暴に乳首をこね回されて、口から嬌声が漏れる。痛みもあるが、それより快感の方が上回った。

「乱暴にされるのが好きなんだ。次はどこを触ってほしいのかな? 足が開いているよ」

 エンファニオに抱かれている――そう考え、感じてしまえば自然と腰が浮き上がった。まるで自分から秘路を見せつけるように。胎の内側からは、蜜が溢れてくるのがわかる。アーベなのに、と心のどこかで思いながらも、胸の蕾から来る快楽に何も考えられない。

「いい子だね、シュトリカ。いやらしくて可愛い。今、触ってあげるから」
「んぁ、ああっ!」

 アーベの指が恥骨下、くさむらを掻き分けて秘核を爪弾いた。激しい感覚が背筋を駆け上る。そのまま二本の指で挟まれ、擦り上げられていけば、淫らな水音が部屋に響いた。

「こんなに濡らして……本当に私の指で触れられるのが好きなんだね。奥もちゃんとほぐしてあげるから、もっと足を開くんだ」
「は、い……」

 悦楽に、もう何も考えられなかった。恥じらいすらかなぐり捨て、足を限界まで開いた。雌壺の奥へと指が差しこまれ、蜜を掻き出すように善い部分を重点的に嬲られる。そのたび、閉じた瞼の奥で光が点滅を繰り返した。

「そこ、あ、だめ、っ……そこぉっ……」
「三本も咥えているのがわかるかい? 少しきついけれど、すっかり慣れたみたいだね」
「来ちゃう……っ! わた、しっ……来る、来るのぉっ」

 背筋に稲妻が走る、そう感じ頭を振った瞬間、無惨にも指が蜜口から抜き放たれた。ひくひくと媚肉がわななくのが自分でもわかる。ずり落ちないよう、天蓋の柱に掴まるのが精一杯だ。

 足りない――もっと強い快楽が欲しい――頭の中は卑しい思考で満たされ、息も荒くなる。絶頂できなかった思いは欲深く男を求め、目隠しをされたまま、怖々と振り返った。

 エンファニオを求めているのか、アーベを欲しているのか、もうわからない。あるのは絶頂に達したいという気持ち、それだけだ。

「物欲しそうにしているね。入れてほしいんだろう。たっぷり私を感じるといい」
「あっ、ああ――っ!」

 一気に熱い塊が蜜壺へと挿入され、ただ、仰け反る。先の方で感じる部分を穿たれれば、頭の中にいくつもの閃光が走り、甘い悲鳴を上げる他ない。

 打擲ちょうちゃく音と寝台が軋む音、その合間に自分の声が大きく響く。視界を覆われていることで、余計に聴覚が、胸や尻からの愛撫への感覚が敏感となり、過激な淫悦に翻弄される。奥を突かれながら花芯をも刺激され、何度も一人、達した。

「だめぇ、だめ、来てる……っから、ぁっ……もう、わたし……!」
「締めつけが凄いよ。中にほしいと言っている。出してほしいのだろう、シュトリカ」
「それ、はぁ……中、は……ん、んん、っ」
「逃げられないよ、私からはね。逃がすつもりなんて毛頭ないけれど。ああ、シュトリカ。中に、出すよ。たくさん注いであげるから、私の子を産んでくれ」
「だめ、です……やめてぇっ」

 口から嘘ばかりの悲鳴が漏れる。胎内でエンファニオが放つ灼熱の奔流を感じたい――もっともっと気持ちよくなりたい。そう考えてしまう都度、媚肉がぎゅうぎゅうに屹立を締めつけ、射精をうながすように子宮へといざなう。

「ああ、ん、あぁあ……っ!」

 言葉の通り、逃がすまいと肌の上から肉竿が入った箇所、子宮付近を押さえつけられた途端、望んでいた熱い飛沫が胎内で弾けるのを感じた。全身を震わせ、絶頂の余韻で陶然としつつも、頭の片隅にまた、虚しさがよぎる。

 エンファニオに抱かれることを夢想し、流されてしまった。なんて馬鹿なんだろう――ただ、アーベとの約束を守るためにこの身を捧げたというのに。エンファニオに迷惑をかけたくなんてないのに。

 後悔する中、体から雄茎がゆっくりと抜かれていき、耳元でアーベが笑う声を拾う。

「いつもより乱れていたな、シュトリカ。そんなにもあいつに抱かれたかったか」
「……そんなこと、ないです……目のこれ、外して下さい……」

 素直にもすぐに、アーベは目隠しをとってくれた。その布きれで名残を始末してくれようとするものだから、慌てて足を閉じる。

「安心しろ、今日はもう、抱かない。溜まった分は出し切ったからな……お前の中に」

 気恥ずかしくてつい、そっぽを向く自分に構わず、アーベは丁寧に処理をしてくれる。乱れた寝間着を直してもくれる手つきは優しく、どこかエンファニオを想起させた。

 同じく、自らの処理を終えたアーベを見ると、どこかふてくされたような顔をしている。シュトリカは疑問に思って気怠い体を動かし、寝台に座り直してから首を傾げた。

「あ、あの……何か……?」
「抱かれる直前まで、俺以外のことを考えていたのには不愉快だ。お前、何をそんなに気にしていたんだ?」
「それは、その……つまらないことです……」
「俺になら話せることもあるんじゃないのか。言ってみろ、あいつには秘密にしてやる」

 横柄な態度であぐらをかくアーベの声は、意外に優しい。どうしよう、と悩む。エンファニオはディーンを信頼しきっている。だが、アーベはどうだろう。もしかしたら、エンファニオとは違う思想を抱いているかもしれない。

「……ディーンさんのことを、アーベ様はどう思ってますか?」
「うるさい小姑だな。仕事はできるが、お前のことといい、色々とやかましい」
「じゃ、じゃあ、コルとサミーのことは?」
「コルは生意気なガキだ。サミーはまあ、あまり接点はないから知らんが、お前をここまでの淑女に仕立て上げた。褒めてやるには充分な侍女だな……そいつらがどうした」
「あ、その……昨日のことなんですけど……」

 ばっさり切り捨てていくアーベの言葉にいくらか惚けながら、胸のつかえを吐き出すようにたどたどしく言葉を紡いでいく。

 昨夜、ディーンと誰かが話していたこと。呪い師のこと。今回の呪いは比較的軽いものだったことも含め、自分が疑問に思っている全てを。

「ほう、あのディーンがな。なるほど、お前はディーンが怪しいと見たか」
「み、見るというより……話を聞いちゃいましたから、余計に……。相手が誰だかわからないから、どうしても気になってしまって」
「いや、この館に誰かを招いて話したその次の日、この身に呪いがかかった。お前の言う通り、ディーンが怪しいと感じるのは筋が通っている。問題はそれにも関わらず、あいつが未だディーンを信頼しきっている事実だ」
「わ、わたしが見たことを言わなかったからです。エンファニオ様は悪くないです……」

 チッ、と舌打ちし、不機嫌な様子でアーベは頬杖をつく。だがすぐに、ふてぶてしい笑顔を作り片手で髪を撫でてきた。

「お前がそれを言えなかったのは、あいつがディーンを信頼しきっているからだろう? 俺に言えたのは、違う視点から答えがほしかったから。違うか?」
「……そうです……」

 シュトリカはうなずくことしかできない。図星を突かれた。アーベがにやりと、だがどこか納得したように笑みを深める。

「お前は俺を認めているんだな」
「え?」
「いや。そうなると、貴族どもを帰したのはまずかった。やはりあいつは間抜けだ」
「そ、そんなこと……ディーンさんが一度、全員の身元を洗い直すと言ってましたし……」
「怪しいやつにやらせてどうする。本格的に動かないとまずい事態だ。俺も命は惜しい。お前を残して死ぬわけにはいかないからな」

 髪から手を離し、真剣に何かを思案しはじめるアーベの横顔をじっと見つめた。アーベに話したのは正しかったかもしれない。少し重荷がなくなり、安堵すれば喉の渇きを覚えた。昨夜のこともあり、ちゃんと水差しにはたっぷりと水を入れてある。

「お水、入れますね……」

 寝台から下りて、二つのコップに水を入れる。アーベは無言で、目をつぶって考え事をしているようだった。真面目に自分の言葉を汲み取ってくれた、そのことが少し、嬉しい。相手は呪いの化身なのに、なぜこんな感情を抱いてしまうのだろう。

「ここに置いておきます」

 不思議な感覚に心を惑わされつつ、思案の邪魔をしないよう、サイドテーブルにコップを置いた。アーベは寝台に座ったまま動かない。

 申し訳なさを感じつつも、先に水を飲んだ、その瞬間だった。

 苦みと共に強烈な熱さが喉を襲う。毒だ――理解した刹那、手が震え、コップが落ちた。いけない、そう思ってサイドテーブルにあるコップも手で払いのけた。

「シュトリカ?」

 コップが割れる音、アーベの疑念に満ちた顔、それらが全て遠くなってゆく。

「飲……だ、……め」
「シュトリカっ!」

 喉が針に刺されたように痛み、それは次第に首元へ広がる。アーベの焦った声音を最後に、完全に意識が闇の底へと落ちていった。
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