辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

文字の大きさ
66 / 169
第7章:未来への学びと絆

第150話「魔道具の改良とさらなる探求」

しおりを挟む
その翌日、エルヴィンたちは学院の図書館に集まり、さらに研究を深めるための資料を探していた。図書館の高い天井から差し込む柔らかな光が、積み上げられた本の背表紙を照らしている。ここは学院の誇る巨大な知識の宝庫であり、魔道具や錬金術に関する貴重な資料が数多く揃っていた。

「この本はどうだ?『高精度魔力制御の基礎理論』ってタイトルだぜ。」
レオンが棚から大きな本を取り出してきた。埃を払いながら、その厚さに驚いている。

「レオン様、それはいいタイトルですが、基礎理論だけでは少し物足りませんわね。」
カトリーヌが微笑みながら指摘する。

「まあな。でも、初心に戻るのも大事だろ?」
レオンは肩をすくめながら本をエルヴィンに渡した。

エルヴィンは本を受け取ると、ページをめくりながら内容を確認する。
「うん、この本は参考になりそうだよ。特に、魔力制御に関する古い技術が載っているみたいだ。」

一方、リヴィアは別の棚からいくつかの本を手に取っていた。
「エルヴィン様、この本も役に立ちそうです……『魔力伝導素材の特性と応用』と書いてあります。」
リヴィアが控えめに差し出した本を、エルヴィンは興味深げに受け取った。

「ありがとう、リヴィア。これも使えそうだね。素材の特性を詳しく知るのは、今回の研究にとって重要だからね。」

その日の午後、実験室に戻ったエルヴィンたちは、図書館で見つけた情報を基にさらに研究を進めた。

「この本によると、魔力の制御精度を高めるためには、素材の結晶構造を細かく調整する必要があるみたいだね。」
エルヴィンが資料を広げながら話す。

「結晶構造?そんなもん、どうやって調整するんだ?」
レオンが不思議そうに眉をひそめた。

「結晶の表面に微細な魔法陣を刻むことで、魔力の流れを最適化するらしいわ。とても繊細な作業ですが、理論的には可能ですわね。」
カトリーヌが補足すると、リヴィアがそっと手を挙げた。

「それなら、私が試してみます。細かい作業は得意ですので……。」

「助かるよ、リヴィア。」
エルヴィンが微笑みながら感謝を伝えると、リヴィアは少し顔を赤らめながら頷いた。

「よし、それじゃあリヴィアに結晶の調整を任せて、僕たちは新しい回路の設計を進めよう。」
エルヴィンが指示を出し、作業が再び始まった。

その夜、リヴィアが調整した結晶を使い、改良版の装置を実験することになった。エルヴィンたちは装置を実験台にセットし、全員が緊張した面持ちで見守る。

「リヴィア、結晶の調整は完璧?」
エルヴィンが確認すると、リヴィアは小さく頷いた。
「はい……できる限り細かく調整しました。」

「よし、それじゃあスイッチを入れるよ。」
エルヴィンが慎重にスイッチを押すと、装置が静かに動き始めた。

魔力が回路を通り、調整された結晶を経由して分岐していく。光の筋が鮮やかに輝き、三方向に均等に分散された。その光景は、まるで魔法そのものが踊っているようだった。

「……完璧だ。」
エルヴィンが呟き、全員が安堵の表情を浮かべた。

「よし!これで問題なしだな!」
レオンが大きな声で喜ぶ。

「すごいです……リヴィア様の調整が効いているのでしょうね。」
カトリーヌが感心したように言うと、リヴィアは控えめに微笑んだ。

「いえ、皆さんのお力があってこそです……。」

その後、エルヴィンたちはさらに応用範囲を広げるための議論を始めた。

「これで基本システムは完成したけど、これをどう実用化するかが次の課題だね。」
エルヴィンがノートを開きながら言う。

「実用化って言っても、どういう方向性で進めるんだ?学院で使うだけじゃつまらないだろ?」
レオンが尋ねると、エルヴィンは少し考え込んだ。

「そうだね……学院内の便利さを高めることも重要だけど、それ以上に、王国全体に貢献できる形にしたい。」

「例えば、大規模な施設で魔力を効率よく配分できるシステムを作るとか?」
カトリーヌが提案すると、エルヴィンは目を輝かせて頷いた。

「それはいいアイデアだ!これを発展させれば、王国のインフラ整備にも役立つかもしれない。」

「なんだか話がどんどん大きくなっていくな。」
レオンが苦笑しながらも、やる気に満ちた表情を浮かべた。

「それでも、挑戦しがいがあると思うよ。」
エルヴィンが力強く言うと、全員がその言葉に励まされるように頷いた。

こうして、エルヴィンたちは新たな目標を掲げ、さらなる挑戦に向けて動き出した。学院での日常は忙しさを増していくが、仲間たちとともに過ごす時間は何よりも充実していた――。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

神様の人選ミスで死んじゃった!? 異世界で授けられた万能ボックスでいざスローライフ冒険!

さかき原枝都は
ファンタジー
光と影が交錯する世界で、希望と調和を求めて進む冒険者たちの物語 会社員として平凡な日々を送っていた七樹陽介は、神様のミスによって突然の死を迎える。そして異世界で新たな人生を送ることを提案された彼は、万能アイテムボックスという特別な力を手に冒険を始める。 平穏な村で新たな絆を築きながら、自分の居場所を見つける陽介。しかし、彼の前には隠された力や使命、そして未知なる冒険が待ち受ける! 「万能ボックス」の謎と仲間たちとの絆が交差するこの物語は、笑いあり、感動ありの異世界スローライフファンタジー。陽介が紡ぐ第二の人生、その行く先には何が待っているのか——?

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。