辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第163話「小さなモデルから始まる大きな夢」

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翌朝、エルヴィンたちは学院の魔道工学実験室で、都市全体の魔力供給システムを模した小型モデルの構築に取り掛かっていた。カトリーヌが事前に用意した学院の魔力供給図を広げながら、エルヴィンがチョークを手に黒板へ設計図を描き始める。

「まずは学院内の魔力供給システムを参考に、小規模なモデルを組み立てる。これが成功すれば、それを拡張していけるはずだ。」
エルヴィンが描いた設計図には、学院の実験棟を中心にした簡易的な魔力供給網が示されていた。

「問題は、魔力を効率よく供給しながら、安定して分岐させることだな。」
レオンが腕を組みながら設計図を眺める。

「そうですね。特に、各出力先で魔力の損失を最小限に抑えるための工夫が必要ですわ。」
カトリーヌがペンを手にメモを取りながら同意する。

「そのためには、分岐点の設計が肝心です。魔力を均等に分配できる回路と、安定化させる魔法陣の組み合わせを工夫すれば……。」
エルヴィンが黒板に書き加えると、リヴィアが控えめに口を開いた。

「エルヴィン様、この部分ですが……魔力伝導性の高い結晶を使えば、流れがもっと滑らかになるかもしれません。」
リヴィアは自分のノートをエルヴィンに差し出し、アイデアを説明する。

「なるほど。それなら、魔力損失もかなり減らせそうだね。ありがとう、リヴィア!」
エルヴィンが笑顔で答えると、リヴィアは少しだけ頬を赤らめながら頷いた。

モデルの設計が固まったところで、エルヴィンたちは必要な資材を集めるために学院の資材庫を訪れた。資材庫には、魔力結晶や金属部品、魔法陣の基盤となる特殊な板など、さまざまな道具が整然と並んでいる。

「これ、全部使っていいのか?すげえ量だな。」
レオンが目を輝かせながら資材を物色していると、カトリーヌが冷静にリストを確認していた。

「必要なものをしっかり選びましょう。無駄に持ち出しても作業が混乱するだけですわ。」
カトリーヌの言葉に、レオンは苦笑しながら大きな結晶を棚に戻す。

「ったく、いつも厳しいんだから。」
レオンがぼやきながらも、言われた通りに整理を始めた。

一方、リヴィアは小型の測定器を手に、結晶の品質を一つ一つ確認している。
「エルヴィン様、この結晶は魔力伝導性が高いですが、少し割れやすそうです……。」

「そっか。じゃあ、補強魔法を施して使うことにしよう。」
エルヴィンが受け取った結晶を慎重にチェックし、魔力回路の設計にどう組み込むかを考え始めた。

実験室に戻り、いよいよモデルの組み立てが始まった。エルヴィンが中心となって回路を設置し、リヴィアが魔力結晶の配置と調整を担当する。一方、レオンは細かい部品の組み立てを任され、カトリーヌは全体の進行を記録していた。

「エルヴィン、この部品の向き、これで合ってるか?」
レオンがパーツを手にしながら尋ねると、エルヴィンは黒板の設計図を確認しながら頷いた。

「うん、完璧だよ。そのまま固定してくれ。」

「へへっ、任せとけ!」
レオンが工具を器用に使い、部品を固定していく。

リヴィアは、魔力結晶の調整を終えると、エルヴィンに声をかけた。
「エルヴィン様、結晶の準備が整いました。配置の確認をお願いします。」

「ありがとう、リヴィア。すごく助かるよ。」
エルヴィンはリヴィアの調整した結晶を受け取り、配置を一つ一つ確認していく。

その日の夕方、モデルがようやく完成した。机の上には、小型ながら精巧に作られた魔力供給システムのモデルが輝いている。

「それじゃあ、動作テストを始めよう。」
エルヴィンがスイッチを入れると、魔力が回路を通り、結晶が光を放ち始めた。

「よし、まずは順調だな!」
レオンが笑顔でランプの光を見つめる。

しかし、しばらくすると、回路の一部で光が不規則に点滅し始めた。カトリーヌがそれに気づき、指摘する。
「ここ……魔力の流れが不安定ですわ。調整が必要かもしれません。」

「確かに。結晶の配置が少しずれてるみたいだね。」
エルヴィンが急いで調整を行い、不安定だった部分を修正する。

再びスイッチを入れると、ランプが均一に光り始めた。回路全体が安定した魔力の流れを維持していることが確認できる。

「やったな、成功だ!」
レオンが拳を突き上げると、リヴィアとカトリーヌもほっとした表情を浮かべた。

「これでモデルが完成しましたわね。でも、まだまだ改良の余地がありますわ。」
カトリーヌが記録をまとめながら言う。

「そうだね。これをもとに、次はもう少し規模を広げたシステムを作ってみよう。」
エルヴィンが意気込んで答えると、仲間たちも頷いた。

その夜、研究室を片付け終えた後、エルヴィンたちは窓の外に広がる星空を見上げていた。

「これが成功すれば、学院だけじゃなく、もっと多くの人たちの生活が便利になるかもしれない。」
エルヴィンが感慨深げに呟く。

「便利になるどころか、王国全体が変わるかもな。」
レオンが肩を叩きながら笑う。

「ええ、それだけの責任も伴いますわ。だからこそ、一つ一つ丁寧に進めていきましょう。」
カトリーヌが微笑みながら言う。

「私も……皆さんと一緒に頑張ります。」
リヴィアが控えめに微笑む。

エルヴィンはそんな仲間たちを見渡し、改めて決意を固めた。

「僕たちならきっとできる。次も頑張ろう!」

こうして、エルヴィンたちの挑戦は新たなステップへと進む――。
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