辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第167話「試行錯誤の果てに」

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学院の実験棟には、いつも通りエルヴィンたちの研究チームの活気ある声が響いていた。設計図が机の上に広がり、その周りでチームのメンバーがそれぞれの役割を全力で果たしている。

「リヴィア、次の結晶の準備はできた?」
 エルヴィンがノートにペンを走らせながら問いかけると、リヴィアが小さなトレイを持ちながら頷いた。

「はい、エルヴィン様。この結晶は、前回よりも魔力伝導率が高いはずです。ただ、使用時の安定性に注意が必要かもしれません……。」

「分かった。セットする前にもう一度確認しよう。」
 エルヴィンはリヴィアから結晶を受け取り、小型の測定器を使って慎重に状態を確認した。

一方、レオンは部品の組み立てに没頭していたが、手元の金属パーツに不満そうな表情を浮かべている。

「くそっ、またこいつがうまくハマらねぇ!なんでこんな細かい作業ばっかりなんだよ!」 
レオンが苛立った声を上げると、カトリーヌがすかさず手を伸ばした。

「レオン様、貸してくださいませ。それ、力任せに押し込むものではありませんわよ。」
 彼女は部品を受け取ると、繊細な手つきで微調整を加え、ぴったりと組み立ててみせた。

「ほら、この通りですわ。」 
カトリーヌが微笑みながら部品を渡すと、レオンは照れくさそうに頭を掻いた。

「助かったよ、カトリーヌ。でも、そう言うならもうちょっと分かりやすい設計にしてくれっての!」

「設計の段階での工夫も大事だけど、現場での対応力も大切なんだよ。」 
エルヴィンが笑いながらレオンをフォローする。

そんな彼らのやりとりに、リヴィアが控えめに笑みを浮かべながら言った。 
「皆さんのチームワーク、本当に素晴らしいです。見ていると、安心感があります……。」

「ありがとな、リヴィア。でも、まだ成功したわけじゃないからな!」 
レオンが拳を握りしめながら言う。

その日の午後、エルヴィンたちは改良を加えた新たな試作装置を動かす準備を進めていた。装置は前回のモデルよりもコンパクトで、魔力効率をさらに向上させる設計になっている。

「よし、全員準備はいい?」 
エルヴィンが周囲を見渡すと、リヴィアが結晶の最終調整を終え、カトリーヌが記録用のノートを手に構えていた。

「いつでも行けますわ。」 
カトリーヌが微笑みながら答える。

「準備完了だ!あとはスイッチを押すだけだぜ。」 
レオンが親指を立てて応じた。

エルヴィンは装置の中心に魔力結晶を慎重にセットし、スイッチに手を伸ばした。

「……いくよ。」

スイッチを押すと、装置が静かに振動を始め、内部の魔力回路が輝き始めた。魔力が装置を循環し、結晶を通じて複数の方向に分岐していく。

「安定してる……。」 
エルヴィンが呟いた瞬間、装置の出力ランプが点灯し、それぞれが異なる色で輝き始めた。

「やったか!?」 
レオンが期待に満ちた声を上げるが――。

突然、装置の出力が一瞬だけ大きく跳ね上がり、内部から小さな煙が上がった。

「まだダメか……。」 
エルヴィンが眉を寄せながら装置の様子を確認する。

「原因はどこでしょう?魔力結晶の問題ではないように思いますが……。」 
リヴィアが控えめに口を開く。

「多分、この分岐のタイミングがずれてるんだ。もっと精密に魔力を制御できる仕組みが必要だね。」 
エルヴィンは冷静に原因を分析し始めた。

「となると、また設計を見直す必要がありますわね。」 
カトリーヌがノートに詳細を書き込みながら言う。

「はぁ、またやり直しかよ。でも、ここまで来たんだ。あと一歩だろ?」 
レオンが拳を握りしめてエルヴィンを見た。

エルヴィンは仲間たちを見渡し、笑顔を浮かべながら頷いた。

「うん、これで次の改良案が見えてきたよ。諦めずに進もう。」

夕方になり、空が赤く染まり始めた頃、実験棟ではエルヴィンたちが引き続き作業を進めていた。

「エルヴィン様、今日はそろそろ切り上げませんか?」 
リヴィアが心配そうに言う。

「そうだな……今日の成果を整理して、明日に備えよう。」 
エルヴィンは疲れた表情を見せながらも、次の改良案に手を伸ばしていた。

「ほら、エルヴィンも休めっての。天才もたまにはリフレッシュしねぇと、頭が回らなくなるぞ。」 
レオンが笑いながら肩を叩く。

「わかってるよ。でも、あと少しだけ……。」

「皆さん、お茶でもいかがですか?少し休憩しましょう。」 
カトリーヌがティーポットを持ってきて、カップを並べ始めた。

「おお、ありがてぇ!さすがカトリーヌだな。」 
レオンが嬉しそうにカップを受け取る。

エルヴィンもその場に座り込み、ティーカップを手に取った。

「よし、少し休んだら、また明日から頑張ろう。」 
彼の言葉に、全員が笑顔で頷き、実験棟の夜は静かに更けていった。
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