辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章：未来への学びと絆

第171話「学院発表会、開幕」

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学院の敷地全体が活気に満ちた空気に包まれる朝――。今日はカレドリア学院で開かれる学術研究発表会の日だ。学生たちが日頃の研究成果を発表し、講師や上級生、そして時には外部の研究者から評価を受ける重要な機会である。

エルヴィンたちの研究チームも、この日のために何週間も準備を重ねてきた。会場のひとつである学院中央棟のホールへと向かう道すがら、通りには各研究班の発表用パネルや魔道具の試作品が並べられ、多くの学生が足を止めて見入っている。

「ついにこの日が来たな！」
レオンが大きく伸びをしながら、どこか高揚した表情で言う。

「ええ、これまでの努力が試される時ですわ。」
カトリーヌはしっかりと胸元を押さえながら、優雅な微笑みを浮かべるが、内心は少し緊張しているようだ。

「緊張……しますけど、皆さんと一緒なら大丈夫です。」
リヴィアは静かに微笑みながら、丁寧に資料を確認している。彼女の手元の書類には、魔力回路の構造や実験データが細かくまとめられていた。

エルヴィンはそんな仲間たちを見回し、改めてチームの士気を確認するように言葉をかけた。

「みんな、最終確認をしておこう。発表の流れは頭に入ってる？」

「バッチリだぜ！」
レオンが自信満々に親指を立てる。

「私は原稿の要点をまとめ直しておきましたわ。」
カトリーヌが持っているノートには、発表の台本がしっかりと書き込まれている。

「データの整理も問題ありません。」
リヴィアが微調整したグラフを確認する。

「よし、それじゃあ予定通り進めよう。」
エルヴィンは頷き、皆と共に会場へと歩を進めた。

エルヴィンたちの順番が近づくにつれ、会場にはさらに多くの学生や講師が集まり始めていた。発表会場のホールは、大きな講堂を改装したもので、中央には登壇者用のステージ、その両脇には補助資料を映す魔道投影機が設置されている。

壇上に立ったエルヴィンたちの前には、講師陣をはじめ、学院の上級生や外部の見学者たちの視線が向けられていた。

「大丈夫、落ち着いていこう。」
エルヴィンは深呼吸し、一歩前に出ると、はっきりとした声で発表を開始した。

「私たちは今回、魔力の分岐制御技術の向上を目的に研究を行いました。」

会場が静まり返り、誰もが話に耳を傾ける。

カトリーヌが続ける。
「従来の魔力回路では、長時間稼働時に負荷が集中しやすく、安定性に課題がありました。このため、魔力の均一な分配と消費エネルギーの最適化を両立させる方法を模索しましたわ。」

リヴィアが実験データを示しながら説明を加える。
「そこで、私たちは新たな回路構造を設計し、試作装置を用いてその有効性を検証しました。魔道具の持続性を高め、特定の出力に偏らないよう工夫を施しました。」

「そして、実際に装置を動かしてみると……。」
エルヴィンが装置のスイッチを入れると、試作機が静かに作動し、魔力が均等に分岐。設計通り、各出力に適切なエネルギーが流れ、三つのランプが予定通り異なる色で点灯した。

「すごい……。」
会場のあちこちから驚きの声が漏れる。

「この技術を応用すれば、より効率的な魔道具開発が可能になると考えています。」
エルヴィンが締めくくると、講師たちが興味深げに頷きながらメモを取っていた。

発表が終わると、講師陣からの質問が飛んだ。

「この装置の応用範囲について詳しく説明してくれますか？」
老練な錬金術師アラン・ハルトマンが問いかける。

「はい。例えば、魔導ランプや暖房装置の魔力供給システムを最適化し、消費魔力を抑えつつ、より長時間の稼働を可能にできます。」
エルヴィンが自信を持って答えると、ハルトマンは満足げに頷いた。

「素晴らしい研究ですね。」
錬金学部の主任であるライエン・バルトンも感心したように言う。

さらに別の講師が質問を投げかける。
「長時間の運用を想定した場合、魔力回路の劣化はどのように対処するつもりですか？」

エルヴィンは一瞬考え、慎重に言葉を選びながら答えた。
「現時点では、魔力伝導率の高い合金を使用し、消耗を最小限に抑える設計を進めています。ただし、さらに安定性を高めるためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。その点も今後の課題として研究を進める予定です。」

講師陣はその返答に満足し、次々と新たな質問が飛び交う。エルヴィンたちはそれに的確に応じ、堂々とした態度で発表を終えた。

質疑応答が終わると、会場からは拍手が沸き起こった。エルヴィンたちは互いに視線を交わし、安堵の表情を浮かべる。

「やったな！」
レオンがガッツポーズを取る。

「皆さん、お疲れさまでしたわ。」
カトリーヌが優雅に微笑む。

「成功して……よかったです。」
リヴィアも静かに微笑んだ。

講師陣の評価も上々で、発表後には他の研究チームや上級生たちからも興味を持たれ、多くの質問や意見交換が行われた。エルヴィンたちの研究は、学院内でも一目置かれる成果となったのだ。
こうして、エルヴィンたちの研究発表は大成功を収め、彼らの魔道具開発の未来に向けた新たな挑戦が始まるのだった。

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