辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第7章：未来への学びと絆

第196話「王都全域へ！ 許可申請と新たな挑戦」

王都アルヴェインの商業区と貴族街の境に位置する広場では、エルヴィンたちの魔力供給システムの実証実験が進められていた。

商業区の賑やかな市場や工房、貴族街の静かで整った邸宅街――。
それぞれのエリアには異なる特性があり、昼と夜で必要な魔力供給のバランスも変わってくる。

エルヴィンたちは、その違いに対応するため、エリアごとに適した供給パターンを設計していた。

「商業区は、日中の活動が活発で魔力の消費量が多いから、昼は供給量を増やして、魔道炉や冷却装置の負担を軽減する。」
エルヴィンは実験用の制御盤を操作しながら説明する。

「でも、夜になると商店は閉まり、人通りも減る。だから、夜間は最低限の魔力だけを供給して、街灯や警備用の魔道具を維持する形にするわ。」
カトリーヌが補足するように言った。

「なるほどな。逆に貴族街や住宅街は、昼間よりも夜の方が魔力を使うってわけか。」
レオンが頷きながらメモを取る。

「そうね。昼間は家を空けている人が多いから、最低限の魔力で十分。でも、夜になれば室内の照明や暖房、風呂などの魔道具が一斉に稼働するから、その時間帯に合わせて魔力を多めに供給するのが理想的よ。」
カトリーヌが理路整然とまとめた。

「農業区域も考えないといけませんね。」
リヴィアが手元の書類を確認する。

「日中は、魔道農具が土を耕したり、作物に魔力を送るために稼働するので、安定した魔力供給が必須です。逆に夜は活動が減るため、魔力を節約しつつ、土壌の再生に使う程度の供給に調整するのが良いかと。」

「なるほど、エリアごとに使い方が違うなら、それに合わせて供給方法も変えなきゃならないってことか。」
レオンが腕を組みながら納得する。

「でも……」
エルヴィンは少し考え込んだ。

「この調整を王都全域で実施するには、各エリアの管理者や代表者から正式な許可をもらう必要がある。勝手に魔力供給を変えたら、予期せぬ影響が出る可能性があるからね。」

「それなら、まずは王宮に正式な申請を出すのが先決ね。」
カトリーヌが提案する。

「商業区、住宅街、農業区域……それぞれの管理者とも話をする必要がありますね。」
リヴィアも慎重な意見を述べた。

「よし、それじゃあ王宮に向かおう！」
エルヴィンは決意を固めた。

翌日、エルヴィンたちは王宮を訪れ、魔力供給システムの正式な導入許可を申請した。

彼らを迎えたのは、王国の魔道技術担当大臣であるヴェルトナー伯。

「さて、エルヴィン殿。話を聞かせてもらおう。」
ヴェルトナー伯は、エルヴィンたちの申請書に目を通しながら、静かに言った。

エルヴィンは姿勢を正し、今回の申請内容を説明する。

「現在、商業区と貴族街の境にある広場での魔力供給実験は成功しています。
そこで、次のステップとして、王都の各エリアごとに最適な供給パターンを作成し、実証試験を行いたいと考えています。」

ヴェルトナー伯は頷きながら、慎重に言葉を選んだ。

「なるほど。確かに、エリアごとに魔力の使用状況は異なる。
供給パターンを調整することで、より効率的な運用が可能になるのは明白ですね。」

「しかし、王都の魔力供給に関与するとなると、慎重な管理が求められます。
魔力供給のバランスが崩れれば、一部の地区で魔力圧の低下や供給過多が発生する可能性もある。」

「その点については、事前に影響範囲の調査を行い、段階的に供給を調整することで対応する予定です。」

エルヴィンは資料を提示しながら説明した。

「ふむ……確かに、君たちの計画は理にかなっていますね。」
ヴェルトナー伯は少し考え込んだ後、微笑みながら言った。

「エルヴィン殿、君たちの慎重な姿勢とこれまでの実績を考慮し、王宮としてもこの研究を支援する価値があると判断しました。」

そう言うと、ヴェルトナー伯は申請書に王宮の承認印を押した。

「正式に許可を出します。王都の各エリアでの試験運用を進めてください。
ただし、問題が発生した場合は、すぐに報告するように。」

「……ありがとうございます！」
エルヴィンは深く頭を下げた。

王宮からの正式な許可を得たことで、王都の各エリアでの実験が可能になった。

「やったな！ これで本格的に王都全域での試験ができる！」
レオンが拳を握る。

「ええ。でも、慎重に進めなくてはなりませんわ。」
カトリーヌが真剣な表情で念を押す。

「まずは住民の意見を聞きながら、各エリアの特性に合わせた供給計画を微調整する必要がありますね。」
リヴィアもメモを取りながら続ける。

エルヴィンは改めて気を引き締め、仲間たちを見渡した。

「ここからが本番だ。王都全域にこの技術を広げるために、まずは各エリアでの試験運用を始めよう！」

エルヴィンたちは、新たな挑戦に向けて動き出した――。